目次
コンピテンシーの意味と歴史
「コンピテンシー」という言葉は、ビジネスでよく使われています。どのような意味があるのか、言葉の歴史も併せて確認しましょう。
高い成果を生み出す人に共通する行動特性
コンピテンシーは英語で「competency」と書き、適性や能力の高さを意味します。カタカナ語では、高い成果を生み出す人たちに共通する考え方や行動特性を指す言葉です。
知識や技術が高いとしても、必ず成果を挙げられるわけではありません。高い成果を上げ続ける人とそれ以外の人にどのような差があるのか、コンピテンシーを調べることによって傾向が分かるでしょう。
コンピテンシーを分析し評価や人事に役立てる試みは「コンピテンシーモデル」と呼ばれ、日本の企業でも導入されています。
1970年代のアメリカで生まれた概念
コンピテンシーの研究は、1970年代のアメリカで始まったといわれています。主に、デイビッド・マクレランドによる研究が知られており、研究によって成果を挙げる人に共通する特性が分かってきたのです。
もともとコンピテンシーは心理学の分野でも使われている言葉ですが、現在はビジネス用語としても広まっています。
アメリカで発生したコンピテンシーという概念は、ほどなく日本にも伝わりました。1990年ごろにはコンピテンシーを導入する企業が増え、現在も成果主義に合う評価がしやすいとして活用されています。
コンピテンシーが使われている場面

コンピテンシーは、さまざまな場面で活用されています。高い成果を生み出す人たちが持つ共通の行動特性がどのような場面で使われているのか、主な活用事例を見ていきましょう。
従業員の評価
コンピテンシーは、従業員の評価基準としても使われています。評価基準を明確にするため、具体的な項目と評価レベルを設定する仕組みです。
コンピテンシーを人事評価に活用する仕組みは、コンピテンシー評価と呼ばれます。特に、成果主義を導入する企業でよく見られる評価基準です。
例えば、「協調性」や「統率力」などの項目を設定し、各項目の評価レベルを1~5で評価します。必要な項目は職種や企業が求める人物像によって変更できるため、汎用性が高いでしょう。
従業員の評価にコンピテンシーを使うことは、指標が明確になり目指すべき姿が分かりやすいというメリットもあります。
採用時の判断基準
新しい人材を採用する際、その人が採用後に活躍してくれるかは重要なポイントです。その判断基準の1つとして、コンピテンシーが使われています。
採用面接の際に、自社で高い成果を出している人に共通する行動特性を応募者が持っているかをチェックする仕組みです。
採用担当者が応募者に対して、行動特性が見極められるような質問をします。結果、自社で活躍できるかどうかが判断しやすくなることが特徴です。
ただし、自社で設定したモデルの指標を満たした応募者が、本当に将来活躍するかは分かりません。あくまでも複数の判断基準の1つとして、参考にする程度が望ましいでしょう。
成果を出す人材を育成する仕組みとしての活用
社内での人材育成にも、行動特性によるモデルや評価が活用されています。例えば、研修や先輩からの指導にコンピテンシーを活用することで、将来像や努力すべき方向性が見えてくるでしょう。
自分の特性を把握し、会社が設定している理想像に近づくよう努力すれば、活躍できる可能性が高くなります。
もちろん、成果を出す人と同じ行動特性があれば必ず成果が出るとは言い切れませんが、一種の指標としては活用できるでしょう。
出典:コンピテンシー | ビジネス用語集 | エリートネットワーク
:コンピテンシー基礎研修~成果につながる行動特性の理解と実践(半日間):インソース
コンピテンシー評価が必要とされる背景

なぜ高い成果を生み出す人たちに共通する特性を生かした仕組みは、多くの企業で人事評価などに活用されているのでしょうか? 昨今、コンピテンシーが注目されている背景も併せて解説します。
成果主義に合う評価体制が求められている
日本はこれまで、年功序列の評価制度が中心でした。しかし、近年は成果主義を導入する企業が増えています。
特に、営業や販売は、成果が数値で判断できるため、誰の成績が良いのかはすぐに分かるでしょう。しかし、努力や本人の意識は、成績を見るだけでは分かりません。
コンピテンシー評価を取り入れることで、成績以外の部分も適切に評価できます。一定の指標を作り、指標を達成しているかが基準となるため、成果が短期間で現れないとしても納得感のある評価体制が取れるでしょう。
労働者の定着や育成が重要視されている
日本では少子高齢化が進んでいることもあり、人手不足が懸念されています。労働者を確保し、定着してもらうためには、採用時点でミスマッチを減らさなければなりません。どのような人材が自社に定着しているかを知ることで、ミスマッチの軽減につながるはずです。
定着率が高い人材に共通する行動特性が理解できれば、採用面接で長く働いてくれそうな人材を見極める上でも役に立ちます。
コンピテンシー評価のメリット・デメリット

モデルや評価レベルを設定した人事評価には、メリットとデメリットがあります。それぞれの特徴を理解して、導入を決断することが重要です。主なメリットとデメリットを確認しましょう。
【メリット】評価指標が明確で公平な評価が可能
コンピテンシー評価は、職務で高い成果を上げる行動特性をモデル化し、それに基づいて従業員を評価する仕組みです。
評価する側、される側を問わず、何が達成できていれば評価されるのか、基準が分かりやすいことがメリットといえます。
公平な評価につながり、なぜそのような評価になったのかも説明しやすいでしょう。評価する側の負担が減るだけでなく、評価される側も結果に納得できます。
【デメリット】モデル構築と運用の難易度が高い
コンピテンシーを活用するには、「高い成果を出す人に共通する特性」を見つけてモデル化する作業が必要です。
しかし、全ての人が高い成果を出す人と全く同じ行動ができるわけではありません。達成困難なレベルでモデルを設定すると、評価対象となる人材が限られてしまい、実用性に欠ける可能性もあります。
さらに、自社の状況に合わせて、モデルの設定は定期的な更新や見直しが必要になります。モデル設定の難しさや維持の手間は、デメリットといえそうです。
コンピテンシーの類語・言い換え例

コンピテンシーには、似たような意味の言葉があります。状況によっては、言い換えた方が伝わりやすいケースもあるでしょう。主な類語と言い換え例を紹介します。
スキル
個人が持つ専門的な技術・知識・能力などを指す場合は「スキル」という言葉が使えます。
例えば、「あの人はスキルが高い」「一定のパソコンスキルが求められる」というような使い方です。
コンピテンシーは行動特性を含むため、具体的な資格や能力とはややニュアンスが異なります。仕事に対する知識や、熟練した技術もスキルといえるでしょう。
ケイパビリティ
ケイパビリティは、主に組織全体の持続的競争優位を生み出す能力や経営資源の活用力を指す言葉です。英語では「capability」と書き、才能や可能性を意味します。
ビジネス用語として使う場合、組織全体に対する意味を込めるため、他社にはない自社の強みや魅力をケイパビリティと呼ぶことが多いでしょう。
「わが社のケイパビリティを生かして、顧客満足度を高める」のような使い方が一般的です。コンピテンシーも高い成果を生み出す人たち全体の特性を意味するため、特定の個人に対して使わないところは似ているといえます。
「コンピテンシー」の意味や歴史を知ろう
コンピテンシーとは、能力の高さなどを意味する英語で、ビジネス用語としては「高い成果を生み出す人たちに共通する特性」を表します。
コンピテンシーは人事評価や採用時の判断基準としても活用され、特に成果主義と相性の良い評価基準です。近年では労働者の定着率を上げるためのモデル設定として使われることもあり、さまざまな場面で役立っています。似た用語としてスキルやケイパビリティなどの言葉もあり、場面によって使い分ける必要があります。
これからの時代を担うお子さんとともに親子で言葉の背景を知り、どんな姿勢や取り組みが必要かを考えていきたいものですね。
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構成・文/HugKum編集部