「VUCA」とは? VUCAの時代にあわせた入試の変化、家庭での取り組みを解説【最新教育トレンドを知る】

VUCAとは予測困難な状況のことです。また技術がスピーディーに進歩し、社会状況が目まぐるしく変わる今を「VUCAの時代」とも言います。ここでは、VUCAの意味を押さえた上で、VUCAの時代に求められる力や、必要な力を養うためにできることを見ていきましょう。

VUCAとは何かを分かりやすく解説

変化のスピードが早く予測困難な状況をVUCAと言います。「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字から成る言葉です。それぞれの意味を紹介します。

Volatility(変動性)

「Volatility(変動性)」は「不安定さ」「変わりやすさ」といった意味を持つ単語です。急激に変わりやすい状況を表しており、これまでにないスピードで物事が変化している状況を示します。

例えば新型コロナウイルス感染症の影響によるライフスタイルの変化や、AIの急激な発達によるビジネスシーンでの変化などです。

Uncertainty(不確実性)

「Uncertainty(不確実性)」は「確信のないこと」「不確かさ」などの意味を持っており、いつ何が起こるか分からず確信が持てないことを表す単語です。

インターネットが一般的なものになり、私たちはいつでも自由に膨大な情報にアクセスできるようになりました。ただし状況によっては、正しい情報がどれなのか分からないこともあります。

不確かな状況であっても、仮説を立てて進んでいかなければ、成果につながりにくいでしょう。

Complexity(複雑性)

「Complexity(複雑性)」は「複雑さ」「複雑なもの」といった意味のある単語で、理解が難しい状況を表しています。物事はそれを構成する要素が多いほど複雑になりやすいものです。

さまざまな要素が絡み合い単純に答えを導き出せない状況の中から、一つの答えを導き出せれば、他との差別化につながります。複雑で分かりにくいことを分解して解き明かしていける力が必要です。

Ambiguity(曖昧性)

「Ambiguity(曖昧性)」は「不明確さ」「両義性」といった意味のある単語で、一つの物事に複数の意味がある状態を表します。「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」が重なることで生じる状態です。

一つの状態に置かれているとき、取れる選択肢が一つとは限りません。複数の選択肢があるときに、どのような選択をするかが重要となります。

VUCAの時代に求められる力

VUCAの時代には、状況の素早い変化や複雑さにより、物事への確信が持てない中で、進むべき方向を選択していかなければいけません。

このような時代に必要なのは「情報収集する力」「素早く判断する力」「臨機応変に対応する力」「正確に意思疎通できるコミュニケーション力」「課題を解決する力」です。それぞれの力について見ていきましょう。

情報収集する力

物事を正確に把握するには、情報収集が欠かせません。単に多くの情報を集めるだけでなく、正しく有用な情報を集めるための取捨選択も必要です。インターネットが広く普及している中、どの情報が正しいものなのかを見極める力も求められます。

併せて最新のテクノロジーに関する情報収集も欠かせません。今学ぶべきことや進むべき方向を判断するために、テクノロジーへの理解が必要なためです。

素早く判断する力

素早く判断し意思決定できることもVUCAの時代には重要な力といえます。変化が早く、いつ何が起こるか分からないVUCAの時代には、ただ一つの確かな正解がないためです。

絶えず変化する状況に合わせて動くためには、今ここでの最善は何かを判断し、その都度意思決定していく必要があります。

臨機応変に対応する力

絶えず変化するVUCAの時代には、昨日の常識が今日の非常識になっている可能性もあります。またある国や企業・学校・家庭などで成功した取り組みが、自分の所属する場所でも同じように成功するとは限りません。

セオリーやノウハウではなく、目の前の状況を理解して、その場に合わせて思考し行動することが求められます。

正確に意思疎通できるコミュニケーション力

VUCAの時代には課題が複雑なものになりやすいでしょう。複雑なものを相手に分かりやすく伝えるにはコミュニケーション力が欠かせません。

加えて、国や人種などの違いを超えて活躍する人が今後ますます増えていくと考えられていることも、コミュニケーション力が必要とされる理由です。異なる価値観や文化を持つ人同士が、お互いの違いを受け入れていくためにも、コミュニケーション力が求められます。

課題を解決する力

素早く変化していき、いつ何が起こるか分からないVUCAの時代には、過去の事例が参考にならない恐れがあります。これまでうまくいっていた方法が使えないときに必要なのは、自ら課題を解決する力です。

目の前にある複雑な物事を分解し、どうすれば解決していくのかを、これまでの常識にとらわれることなく考えることが求められます。

VUCAと教育の関わり

VUCAの時代には、状況が目まぐるしく変わっていきます。このような状況の中、学校教育で教えることも状況に合わせて取捨選択していかなければいけません。VUCAの時代に対応できるよう、文部科学省では学習指導要領を改訂しています。ここでは時代に合わせて改訂された、学習指導要領の内容をチェックしましょう。

VUCAと学習指導要領

学習指導要領とは、文部科学省が定めている学校教育の教育課程(カリキュラム)の基準です。全国どこの学校へ通っている子どもであっても、一定水準以上の教育を受けられるように定められています。

2017・2018・2019年に改定された学習指導要領で定められているのは、子どもたちの「生きる力」を育むことを目的としたカリキュラムです。

知識と技能に加えて、学んだことを生かす力や、未知のことに対応する思考力・判断力などを、主体的・対話的に学習に取り組むアクティブ・ラーニングにより身に付けることを目指します。

この学習指導要領の内容は、VUCAの時代に必要とされている力と通じる内容です。素早い変化や何が正解か分からない状況などに対応できる力を子どもが身に付けられるよう、学校教育が変化してきています。

参考:文部科学省|平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介

VUCAの時代に合わせた入試の変化

VUCAの時代に適応できる人材の育成に向けて、大学入試も変化し始めました。代表的な変化として、「情報」科目の追加と、思考力や判断力を重視した出題形式について、解説します。

「情報」科目の追加

2025年以降の大学入学共通テストには「情報」の科目が追加されます。VUCAの時代には、たくさんの情報の中から正しい情報を取捨選択する力が必要です。資料を読み込んで正しく情報を得られるよう、情報や統計が重視されています。

また全教科を通して、資料を読み込む問題が増えているのも特徴です。状況に応じて自ら考え選択しなければいけないVUCAの時代に合わせて、単に知識を暗記するだけでは対応できない形式に変化してきています。

思考力や判断力を重視

学んだ知識を問うのではなく、知識を実際に使えるかを問われる形式に変わってきているのも特徴です。覚えた知識を使って思考したり判断したりする、より実践的な問題が出題されています。

併せて考えたことを相手に過不足なく伝える表現力を問われる問題も増えており、VUCAの時代に求められる力が身に付いているかを測る試験内容に変わってきているといえるでしょう。

VUCAの時代に家庭でできること

VUCAの時代に必要な力は、これまでと異なります。子どもが思考力・判断力・表現力などを身に付けるには、家庭での取り組みも重要です。

今すぐに取り組めることとして「自ら選ぶ機会をつくる」「質問を考えるきっかけにする」「対等なやりとりができる雰囲気をつくる」について解説します。

自ら選ぶ機会をつくる

子どもの自ら考えて判断する力を伸ばすには、子ども自身が選ぶ機会をつくるとよいでしょう。

まずは「おやつは何を食べる?」「どの服を着ていく?」など、日常の簡単なことから、子どもが自分で選ぶようにします。小学生であれば「宿題はいつやるの?」と問いかけるのも有効です。

ただしこのとき、子どもが決めたことでマイナスの結果につながったとしても、責めないようにします。

質問を考えるきっかけにする

子どもから質問されたときには、それを自分で考えるきっかけにすると、思考力を育むことにつながります。すぐに答えを教えるのではなく、まずは「どう思う?」と問いかけるとよいでしょう。

知識に関する質問であれば「一緒に調べてみよう」と、辞書や図鑑などを開いたり、図書館へ関連する本を探しにいったりするのも効果的です。インターネットで検索するときにも、どういった言葉で検索をすればいいと思うか、相談しながら調べると情報収集の力が身に付きます。

対等なやりとりができる雰囲気をつくる

VUCAの時代に求められるコミュニケーション力を育むには、親子で対等にやりとりできる雰囲気が必要です。

選んだものや考えたことを否定される・ばかにされるといったことが続けば、子どもは表現しなくなるでしょう。子どもの表現力を伸ばすには、安心して表現できる関係性や雰囲気づくりが欠かせません。

VUCAの時代に必要な力を育もう

VUCAの時代は、絶えず物事が変化しており、いつ何が起こるか分からない上、物事が複雑に関係し合っていて、何を選択すればよいかがはっきりしません。このような状況に対応するには、子どもが自ら考え決めたことを適切に表現できるようになっている必要があります。

このような力を育んでいけるよう、教育は変化してきています。子どもがこれからの時代に必要な思考力・判断力・表現力を身に付けられるよう、家庭でも問いかけや接し方を工夫するとよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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