日米間での関税交渉が決着
2025年7月、日米間の関税交渉がついに決着しました。このニュースを耳にして、「そもそも関税って何?」「なぜ各国は関税をかけるの?」と疑問に思った人も多いのではないでしょうか。
関税は国際貿易や経済に大きな影響を与える仕組みですが、実は私たちの生活にも密接に関わっています。
そもそも「関税」とは?
まず、関税とは何かから見ていきましょう。関税とは、外国から輸入される商品に対して国が課す税金のことです。例えば、日本がアメリカから輸入する牛肉や自動車に特定の税率をかけて、そのぶんを輸入業者が支払う仕組みです。
この税金は、商品の価格に上乗せされるため、輸入品の価格が上がることがあります。関税には大きく分けて2つの種類があります。
従価関税
商品の価格に対して一定の割合で課税されるもの。
従量関税
商品の数量や重さに基づいて課税されるものです。例えば、牛肉1kgにつきいくら、という形で税金がかかる場合もあります。
なぜ関税をかける必要があるのか
では、なぜ各国は関税をかけるのでしょうか。その理由は主に3つあります。
1.国内産業を守るため
海外から安価な商品が大量に流入すると、国内の企業や農家が競争で不利になることがあります。例えば、日本の米農家を考えてみましょう。外国産の安い米が関税なしでどんどん入ってくると、日本の米農家は価格競争で苦しくなります。
そこで、輸入米に関税をかけて価格を上げ、国内の米農家を守るのです。これにより、国内の雇用や産業が維持され、経済の安定につながります。

2.国家の財源にするため
関税は国の収入源の一つです。特に貿易が盛んな国では、関税による収入が国の予算に大きく貢献します。歴史を振り返ると、昔の多くの国では関税が主要な税収源でした。現代でも、発展途上国などでは関税が国の財政を支える重要な役割を果たしています。
日本の場合、関税収入は全体の税収のごく一部ですが、それでも国の運営に役立っています。
3.貿易のバランスを調整するため
国同士の貿易では、特定の国から大量に輸入しすぎると貿易赤字が膨らむことがあります。関税をかけることで、輸入量を抑えたり、特定の国との貿易バランスを整えたりできます。
また、関税は外交や交渉のカードとしても使われます。今回の日米関税交渉のように、関税の引き下げや撤廃を条件に、相手国から有利な貿易条件を引き出すこともあるのです。
関税にはデメリットも
ただし、関税にはデメリットもあります。関税をかけると輸入品の価格が上がり、消費者にとっては商品が高くなることがあります。例えば、輸入果物や衣料品が高価になると、日常の買い物に影響が出るかもしれません。
また、関税を高く設定しすぎると、相手国が報復としてこちらの国の商品に関税をかけることがあり、貿易戦争に発展するリスクもあります。実際に、過去にはアメリカと中国が互いに高い関税をかけ合い、両国の経済に影響を与えた例もあります。
関税は単なる税金以上の意味を持つ
日米関税交渉の背景にも、こうした関税の役割や影響が関わっています。アメリカは農産物や工業製品の輸出を増やしたいと考え、日本は自動車や電子機器の輸出を守りたいという思惑があったとされます。
交渉の結果、双方が納得できる関税率やルールが設定されたことで、貿易の円滑化が期待されています。これにより、例えばアメリカ産の牛肉が日本で少し安く買えるようになったり、日本の自動車がアメリカで売りやすくなったりするかもしれません。

関税は、単なる税金以上の意味を持っています。国内産業を守り、国の収入を支え、国際的な貿易のバランスを調整する役割を果たす一方で、消費者や国際関係にも影響を与えます。私たちが普段何気なく買っている商品の価格や品質にも、関税が関わっているのです。
今回の日米関税交渉の決着は、両国の経済だけでなく、私たちの生活にも小さな変化をもたらすかもしれません。これを機に、関税や貿易の仕組みについて少し興味を持ってみると、ニュースの見方がもっと楽しくなるかもしれません。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
