「常用漢字」と「学習漢字」の違いって? 「当用漢字」っていうのもあった? 選定基準や数、種類をあらためてチェック

常用漢字・学習漢字について「聞いたことがあるけれどよく知らない」という人は珍しくありません。常用漢字と学習漢字、そして当用漢字の意味と違いを分かりやすく説明します。日常生活にも関わる漢字ルールの歴史に触れてみましょう。

常用漢字の意味と成り立ち

まずは、普段目にすることの多い「常用漢字」の定義や選定基準を押さえておきます。常用漢字がどのようなものか分かれば、当用漢字や学習漢字への理解も深まります。

常用漢字の定義

常用漢字とは、社会生活において一般的に使用する漢字の目安です。1981年に、内閣が常用漢字表を告知し、この表自体またはそこに載っている漢字を常用漢字と呼びます。

2010年には時代の変化に合わせるため、現代においてよく使われている漢字が選び直され、常用漢字は2,136字になりました。

例えば、法令や役所が作成する公用文は常用漢字に基づいて表記されます。新聞・放送の字幕などの表記も常用漢字を基本としています。

これは、使用する漢字の種類を一定の範囲にすることで、漢字を使った情報伝達がスムーズになることが目的です。

社会生活でよく使われる漢字が選ばれた

常用漢字の選定基準は、社会でどれだけよく使われているかです。2010年の改定では、2004~2006年の間に作成された書籍・雑誌・教科書860冊分と、朝日新聞・読売新聞・Webニュース記事が調査対象になっています。

これらの資料から分かった、出現頻度の高い漢字が常用漢字に入れられました。また、使う頻度が低くても漢字で書いたほうが分かりやすいものや、熟語によく使われるもの、訃報の「訃」のように生活に必要と考えられる漢字も選ばれています。

1981年に作成された常用漢字表は、当時の社会生活で使われる漢字の96%以上をカバーしたといわれます。改定でさらに191字が追加されたので、常用漢字を身につければ一般的な漢字はほとんど理解できるでしょう。

出典:常用漢字表について(答申) – 国語施策・日本語教育|文化庁
常用漢字表(平成22年内閣告示第2号) – 国語施策・日本語教育|文化庁

当用漢字と常用漢字の関係は?

「当用漢字」という単語はあまり聞いたことがないかもしれません。当用漢字は常用漢字の前にあった漢字ルールで、現在は廃止されています。当用漢字の意外な成り立ちや、常用漢字になって何が変わったかを見ていきましょう。

当用漢字ができた背景

当用漢字ができた背景には、戦後の日本における占領政策が関わっています。実は、GHQ(連合国軍総司令部)は漢字廃止を考えていました。その手始めとして、使う漢字の種類を制限したのが当用漢字で、「当用」は当面の間使う漢字という意味です。

1946年に、内閣が「当用漢字」として1850字を告示します。GHQは、漢字が日本人の識字率を低下させていると考え、戦争遂行の一因になった可能性があると判断していました。

それを証明するため、1948年に「アメリカ教育使節団」が日本の識字率を調査します。しかし、字が読めない日本人は全国で約2%に過ぎないという予想外の結果が出たため、漢字廃止は中止されます。1981年には当用漢字に代わり、常用漢字が定められました。

当用漢字と常用漢字の違い

当用漢字は、漢字廃止を考えていたGHQの意向を反映しています。そのため、一般社会で使う漢字を、当面の間、当用漢字のみに「制限」するという厳しいルールです。

人の名前や地名などの固有名詞は例外とされていますが、専門用語もできるだけ当用漢字の範囲内に納めなければなりませんでした。

一方、1981年以降の常用漢字は、社会で使われる漢字の「目安」です。固有名詞はもちろん、科学・芸術などの専門分野には適応されず、使用する際の個別の状況も配慮されます。

常用漢字は、社会における情報伝達がスムーズになるように定められたものなので、当用漢字に比べて縛りが緩やかです。

学習漢字って何?

「学習漢字」は文部科学省によって選ばれた漢字の一覧で、主に小学校の漢字教育に関係します。学習漢字の意味や、2020年に実施された変更点、漢字を身に付けるためのコツを紹介します。

学習漢字の意味

「学習漢字」は「教育漢字」とも呼ばれ、常用漢字のうち小学校で習う漢字のことです。ただし、一部の常用漢字は、読み方学習が中学・高校に割り当てられています。

文部科学省は、小学校1~6年生まで学年ごとに学ぶべき漢字を分類した「学年別漢字配当表」を作成しています。

配当表の選定基準は、「社会生活で使う回数が多い漢字」「子どもの生活に関わりが深い漢字」「基本的な字画の漢字」「覚えやすい漢字」の4点です。学校の漢字教育はこの配当表を基準にして進められます。

出典:別表 学年別漢字配当表|文部科学省

改訂された学習漢字の変更点

文部科学省が決めた教育課程の基準は「学習指導要領」にまとめられ、全国の小中学校、高校の学習内容に反映されます。

学習指導要領は約10年ごとに改められます。2025年現在の小学校向け学習指導要領は、2017年に改訂、2020年に実施されたものです。

これによって小学校で習う学習漢字にも変更がありました。大きな特徴は、都道府県に用いる漢字20字が追加されたことです(茨、媛、潟、岐、熊など)。以前は4~6年生に割り当てられていた学習漢字の一部についても、配当学年が変更されています。

出典:平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介|文部科学

漢字を覚えやすくするためのコツ

漢字は覚えるまでが大変です。単調な暗記作業になると、多くの子どもは漢字学習がつまらなくなってしまいます。

漢字を効率よく身に付けるポイントは、先に漢字の意味と読みを覚えることです。漢字の成り立ちと意味をストーリーにすれば、記憶に残りやすくなるからです。

親子で、漢字の成り立ちを当てるゲームをするのもよいでしょう。共通の部首を持つ漢字や意味が同じ漢字をグループ分けする方法もあります。一気に覚えようとせず毎日少しずつ繰り返すことが大事です。

学習漢字は小学校で習う常用漢字

「学習漢字」は耳慣れない呼び名かもしれませんが、小学校で習う常用漢字のことです。学習漢字は1~6年生まで学年ごとに配分され、特によく使われる漢字や基本的な漢字の順に習う仕組みです。

常用漢字を身に付ければ一般的な漢字の9割以上を使えるため、公文書や新聞など基本的な文章の読み書きがスムーズになります。

一つずつの漢字には現在の形になった歴史があり、繰り返し書くだけでなく成り立ちをストーリーで理解すると覚えやすいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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