「子どもの漢字勉強法」の正解は? 書いて覚える、厳しい採点は逆効果! 漢検1級・漢字勉強法の達人に聞いてみた

小学生になると漢字の勉強が始まりますが、なかなか覚えられなくてはがゆい思いをしていませんか? 保護者としても不安があるかもしれません。

今回は、そんな家庭に向けて、小学生が漢字を効率的に勉強するための方法や漢字を好きになるポイントについて、漢検1級保持者のあびさんと、漢字をはじめさまざまな勉強法に通じているブレイクスルー佐々木さんにうかがいました。YouTuberとしても活躍する、今注目の二人です。ぜひ参考にしてみてください!

漢字がなかなか覚えられない!小学生向け覚え方テクニック

―漢字がなかなか覚えられない小学生向けに、覚え方のテクニックを教えてください。

1.声に出しながら書く

あびさん:覚えた言葉を声に出しながら書くと、耳と手の感覚も使えて記憶に残りやすくなります。「書く」はもちろん、「見る」「読む」「聞く」といった五感をフルに使う漢字学習もおすすめです。

ブレイクスルー佐々木さん(以下、佐々木さん)なぞり書きをしながら、意味や使い方を声に出すことで、目・手・耳の3つを使って覚えられるから、頭にしっかり入ります。

2.音読みと訓読みはセットで覚える

あびさん:漢字を覚えるときは、「熟語での音読み」と「単体での訓読み」をセットにして覚えるのがおすすめです。例えば「育成(いくせい)」という熟語と、「育(はぐく)む」という訓読みを一緒に学ぶことで、漢字の意味や使い方が自然と理解できるようになります。

3.音を表す部品を意識した学習を

あびさん:漢字の多くは「意味を表す部品」と「音を表す部品」とを組み合わせて作られています。その、「音を表す部品」(音符や声符といいます)を意識した学習をすることで、漢字の読みが覚えやすくなり、初めて見る漢字でも読みを推測しやすくなります。

例えば、「包」は「ホウ」という音を表す部品です。そのため「包」が含まれる「抱」「泡」「砲」「飽」はすべて「ホウ」と読みます。このように、共通の部品を持つ漢字の法則性に気がつくと、漢字がぐっと覚えやすくなりますし、パズルのように楽しく学べるようになりますよ。

4.ストーリーで覚える

佐々木さん:漢字の形を「ものがたり」として考えてみましょう。例えば「休」は「人」が「木」のかげで休んでいる姿に見えます。こんな風に、漢字の中にイメージやストーリーを見つけることで、ぐっと記憶に残りやすくなるんです。自分だけの面白い話を作ると、覚えるのがもっと楽しくなりますよ。

5.身のまわりの漢字を見つけて遊ぶ

佐々木さん:新しく覚えた漢字を、家の中やお店のポスター、本などから探してみましょう。「あ! この前習った漢字だ!」と見つけたときのうれしさがポイント。その瞬間、記憶にしっかり残ります。見つけた漢字を使って、手紙や日記に入れて使ってみるのも効果的ですよ。

やりがちなNG漢字勉強法「とにかくひたすら書く」のは効果なし!?

―避けたほうがいい、NGな漢字勉強法を教えてください。

佐々木さん:「とにかく書いて覚える」だけの勉強は、かえって効率が悪くなることがあります。意味や読み方を理解せず、何十回も無心で同じ字をノートに書くだけだと、手は動いていても頭には入っていないことが多いです。

また「間違えたくないから」と新しい漢字を避けたり、答えをすぐに見てしまったりするのもNG。失敗を恐れずに、自分の力で思い出そうとすることが、記憶を深めるコツです。焦らず、意味や使い方を理解しながら、楽しく繰り返すことが大切です。

あびさん:同じ漢字をひたすら何回も書き続ける学習法は、あまりおすすめできません。まったく書かないのも問題ですが、ただの「作業」になってしまうと、記憶には残りにくく、何より漢字が嫌いになる原因になりかねません。

大事なのは「思い出して書く」というステップを繰り返すことだと考えています。こまめなミニテストを通じて、書けなかった字だけを数回書くなど、メリハリのある学習法をおすすめします。

漢字が好きになるには?

―漢字に苦手意識を感じている小学生向けに、漢字が好きになる、得意になるアイデアを教えてください。

あびさん:“学校で習う漢字”に縛られず、「海星」で「ひとで」と読む、「海月」は「くらげ」と読む、などのようなクイズを入口にすることで、漢字への興味が芽生えるかもしれません。

僕は小学4年生の頃に漢字を好きになったのですが、そのきっかけはテレビのクイズ番組でした。熟字訓や当て字など、いわゆる難読漢字のクイズを見て、漢字の魅力に惹かれていったのです。学校で習う漢字学習だけを続けていても、ここまで漢字を好きになってはいなかったはずです。

学校の漢字テストが苦手な子であっても、クイズであれば「へぇ、そう読むんだ!」という驚きや発見があるため、漢字に対する見方が変わるかもしれません。学校では習わないから…と遠ざけるのではなく、まずはクイズなどを通じて「楽しさ」を感じるところから入ることで、苦手意識を払拭することができるのではないでしょうか。

佐々木さん:漢字を「絵」や「パズル」のようにとらえると、ぐっと面白くなりますよ。例えば、「森という漢字は木がたくさん集まってできている」、「耳という漢字は、人の耳の形をもとにしている」のように、形に注目してみましょう。

また、1日に一つだけ「今日の漢字」を決めて、その漢字を使った言葉を探したり、文を作ったりする遊びもおすすめです。家族と一緒にクイズを出し合うのも楽しいですよ。「できた!」「見つけた!」という小さな成功体験が、自信につながって、自然と漢字が好きになっていくはずです。

保護者は「厳しすぎない採点」を

―あびさんによれば、保護者がサポートする際には注意したいことがあるといいます。

あびさん:家庭で漢字学習をサポートする際、お子さんの書いた漢字を丸付けすることがあるかと思います。その際、「とめ・はね・はらい」などを細かく見て厳しすぎる採点をしてはいませんか?

文化庁の示している指針によると、「骨組みが過不足なく読み取れ、その文字であると判別できれば、誤りとはしません」としています。例えば「木」の真ん中の縦画の最後は、とめるように書いても、はねるように書いても、どちらでも問題ありません。

漢字の骨組みに関わらないような、「とめ・はね・はらい」などの細かな違いや、わずかなズレなどまでに着目し、「×」をつけてしまっては、漢字嫌いの原因になりかねません。ぜひ厳しすぎない柔軟な丸付けをしていただければと思います。

参考:PDF|常用漢字表の字体・字形に関する指針

[まとめ]漢字は楽しく五感をフルに使って勉強しよう

小学生が漢字を効率的に勉強する方法を漢字の達人たちに教えていただきました。漢字をただひたすら書いて覚えていた人は、ぜひ効果的な方法に切り替えて、漢字を楽しく覚えましょう。

お話を伺ったのは

あび さん

2001年東京都生まれ。大学2年生のときに漢検1級を取得。大学3年時には漢検1級の成績優秀者表彰で全国検定振興機構 理事長賞を受賞。また、大学2年生より漢字・日本語に関する情報を発信するYouTuberとしての活動を開始。現在登録者数は6.5万人を超え総再生回数は1億回を超えるなど、漢字に特化したチャンネルとしては最大規模を誇る。

お話を伺ったのは

ブレイクスルー佐々木 さん

早稲田大学先進理工学部応用物理学科を首席で卒業し、同大学院を修了。在学中にYouTubeチャンネルを立ち上げ、教育系動画クリエイターとして活動を開始。現在では登録者数120万人を超える人気チャンネルに成長。「学びをもっと身近に、わかりやすく」をコンセプトに、短時間で理解しやすい教育動画を発信し、多くの支持を集めている。

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構成・文/石原亜香利

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