敬語は全部で5種類。それぞれの特徴は?
敬語は「敬語の指針」で以下の5種類に分類されています。
●尊敬語
●謙譲語Ⅰ
●謙譲語Ⅱ
●丁寧語
●美化語
それぞれの敬語はどのように用いるのでしょうか? それぞれの特徴を見ていきましょう。
尊敬語
尊敬語とは相手を立てるときに使う敬語のことです。相手と直接コミュニケーションを取るときにはもちろん、相手の家族やその他の人との会話でも使用できます。
動詞を尊敬語に言い換えると、行為について相手を立てられます。例えば「行く」「来る」「いる」は「いらっしゃる」に、「食べる」は「召し上がる」に、「言う」は「おっしゃる」に言い換え可能です。
また「お名前」「お忙しい」など、名詞や形容詞などの前に「お」を付けて、ものや状態について相手を立てることもできます。
謙譲語1
謙譲語1とは、自分から相手へ向かう行動などについて、相手を立てるときに使う敬語のことです。自分の行動を丁寧に言い換えることで、相手に敬意を示せます。
尊敬語と同様に、相手と直接コミュニケーションを取るときにはもちろん、相手の家族やその他の人との会話でも使用可能です。
相手を立てるとき「行く」「訪ねる」「聞く」「尋ねる」はいずれも「伺う」に言い換えましょう。「言う」は「申し上げる」、「会う」は「お目にかかる」と表現します。
また「お届けする」「ご案内する」のように「お」や「ご」を付けて表現する場合もあります。ものについて相手を立てるときにも、「先生へのお手紙」「先生へのご説明」などのように、名詞の前に「お」や「ご」を付けて敬意を表すことが可能です。
謙譲語2
謙譲語2は自分の行為などを相手に対して丁寧に表現するときに使う敬語です。丁重さを表すことから丁重語とも呼ばれています。
行為について丁寧に表現するときには、「行く」「来る」の代わりに「参る」を、「言う」の代わりに「申す」を、「する」の代わりに「いたす」を、「いる」の代わりに「おる」を用いましょう。
自分に関することを控えめに表す名詞を使うと、ものについても丁重さを示せます。例えば自分の著作物は「拙著」、自分の会社は「小社」などと表現します。ただしこれらは主に書き言葉で使われるのが一般的です。
謙譲語2は基本的には自分側の行為に使います。また立てる必要のない第三者やものにも使用可能です。例えば「電車が参りました」「お客様が参りました」などと使えます。
ただし、立てる相手の行為やものに使うと失礼にあたるため注意しましょう。
丁寧語
丁寧語とは、相手に対して丁寧に物事を伝えるときに使う敬語のことです。文末に「です」や「ます」を付けて表現します。
例えば「今日はいい天気だ」は「今日はいい天気です」に、「昼休みに本を読む」は「昼休みに本を読みます」のように言い換えられます。
「です」「ます」よりさらに丁寧に表現するときには「(で)ございます」を使用できます。
丁寧語は謙譲語2と似た働きを持つ敬語ですが、相手にも自分にも使える使用範囲の広さが特徴です。
美化語
美化語とは、名詞の前に「お」や「ご」を付けて、ものごとを美化するときに使う敬語のことです。他の敬語のように特定の人物を立てるものではなく、言葉そのものを美しく表現するために用いられます。
美化語では「酒」は「お酒」、「料理」は「お料理」、「茶」は「お茶」、「家族」は「ご家族」と表現します。
例えば目上の相手に料理をすすめるときには、「料理を召し上がってください」と言うよりも「お料理を召し上がってください」と言う方が丁寧です。
美化語は相手を立てているわけではないため、尊敬語や謙譲語とは性質が異なります。ただし行為者や向かう先、相手などに配慮する場合に役立つことから、敬語に分類されている表現です。
よく使う敬語をチェック

敬語で用いる言葉は、普段の言葉とは違うことがあります。正しく敬語を使うには、敬語に言い換える際の言葉を理解しておく必要があります。
例えば「行く」は、尊敬語で「行かれる」「いらっしゃる」「おいでになる」「お越しになる」、謙譲語で「伺う」「参る」、丁寧語で「行きます」と表現します。
「来る」は、尊敬語で「いらっしゃる」「おいでになる」「見える」「お越しになる」、謙譲語で「伺う」「参る」、丁寧語で「来ます」です。
また「食べる」は尊敬語で「召し上がる」、謙譲語で「いただく」「頂戴する」、丁寧語で「食べます」です。
よく使う言葉の敬語表現を覚えておけば、その場や相手にふさわしい言葉づかいでコミュニケーションを取れるようになります。
間違いやすい敬語を確認

敬語は誤った使い方をすると、異なる意味で伝わったり、失礼にあたったりすることがあります。正しい敬語で適切に敬意を示すために、ここでは間違いやすい敬語を確認しましょう。
「お持ちしましょうか」と「お持ちになりますか」の違い
「お持ちしましょうか」と「お持ちになりますか」はどちらも敬語ですが、行為の主体が異なります。
謙譲語の「お持ちしましょうか」では、行為の主体は発言した人です。そのため「お持ちしましょうか」と言った人が持っていきます。一方「お持ちになりますか」は尊敬語のため、持っていくのは相手です。
例えば相手が本を持っていくかを確認したい場合には、「本をお持ちになりますか」と尋ねます。「本をお持ちしましょうか」では、自分が持っていきましょうか?という意味に捉えられてしまうため注意が必要です。
「休日にご旅行へ行ってきました」はNG
「私は図書館で本をご予約しました」「明日の持ち物をご準備しました」「消しゴムをご購入しました」などは、「休日にご旅行へ行ってきました」と同様に誤った表現です。
紹介した例文に出てくる「ご予約」「ご準備」「ご購入」「ご旅行」は尊敬語に分類できる敬語のため、相手の行為やもの・状態に用いて相手を立てるときに使います。自分の行為には使わないため、注意しましょう。
同じように「お」や「ご」を付ける場合でも、「おいしいお料理を食べました」「お花をプレゼントしました」など、ものごとを美化する美化語であれば問題ありません。
「お読みになられる」は二重敬語
敬語を使うときには二重敬語に注意しましょう。例えば尊敬語を重ねた「お読みになられます」や、謙譲語を重ねた「ご説明申し上げさせていただきます」などは二重敬語です。
一見丁寧に感じられますが、不自然な表現で「失礼だ」と受け取られてしまいかねません。「お読みになります」「ご説明いたします」で、十分敬意を示せます。
また「先生様」のように、役職に敬称を重ねるのも二重敬語の一種です。「〇〇先生」もしくは「〇〇様」のどちらかを使用しましょう。
ただし「敬語の指針」によると、「お見えになる」「お伺いする」などは一般的に定着しているため、使用しても構わない二重敬語とされています。
敬語を正しく使おう
相手に敬意を示す敬語は、正しく使うことでコミュニケーションをスムーズに進められるようになります。適切に敬語を使うには、意味や使い方を確認しましょう。
あわせてよくある間違いを知っておくことも重要です。尊敬語と謙譲語で行為の主体が違う点や、二重敬語だと失礼に当たる点などを押さえておくと、正しく敬語を使えるようになります。
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文・構成/HugKum編集部