リチウム電池が発火する仕組みと使用製品
リチウム電池(リチウムイオン電池)による発火事故が相次ぎ、発火の仕組みや使用されている製品に関心が集まっています。まずは、なぜリチウム電池が発火するのか、主な原因と使用されている製品について確認しましょう。
リチウム電池の主な発火原因
リチウム電池には燃えやすい材料が使われており、状況によっては発火する可能性があります。主に、以下のような原因で発火するケースが多いでしょう。
・衝撃によって内部の回路がショートする
・過充電や過放電によるトラブル
・製造不良による故障
発火に至る仕組みは原因ごとに異なりますが、例えば衝撃によるショートが起きた場合、電池内で電流が流れ発熱し、内部の材料が反応して発火します。特にリチウム電池は衝撃に弱いとされ、製品を落とす、ぶつけるなどした場合にショートが起こりやすいため注意が必要です。
使用されている主な電化製品
リチウム電池は、さまざまな電化製品に広く使用されています。例えば、以下のような製品に内蔵されていることが多いようです。
・スマートフォンやノートパソコンなどのIT機器
・モバイルバッテリー
・ハンディファンなどの充電式小型家電
・携帯用ゲーム機やコントローラー
・電動アシスト自転車
・電子タバコ用のデバイス
・カメラやビデオなどの撮影用品
IT機器や充電デバイスを中心に、身の回りのさまざまな製品に使われていることが分かります。普段意識することはあまりないかもしれませんが、充電を伴う電化製品の取り扱いには注意が必要です。
リチウム電池が発火した事故の事例

リチウム電池の発火は、事故としてニュースにもなっています。自宅だけでなく電車内やごみ処理施設など、多くの場所で発火事故が起きているため、主な事例について確認しましょう。
モバイルバッテリーやハンディファンの事例
東京消防庁の資料によると、2014年から2023年までの10年間で、リチウム電池の発火事故は増加しています。2023年には165件の事故が起きており、中でもモバイルバッテリーによる事故が多く、44件です。
2025年にも多くの事故が起きており、8月22日には東海道新幹線「のぞみ」で充電中の発火事故が起きているほか、8月28日には上越新幹線でもモバイルバッテリーから煙が出るなどのトラブルが発生しています。
また、夏の暑い時期によく使われるハンディファンも、充電中や家庭内での事故が報告されているということです。モバイルバッテリーやハンディファンは持ち歩くことが多いため、日頃から状態を確認しておくことが大切です。
出典:「のぞみ」でモバイルバッテリー発火、座席ポケット焦げ(朝日新聞) – Yahoo!ニュース
:上越新幹線 モバイルバッテリーから煙 乗客1人が軽いやけど|NHK 首都圏のニュース
:可茂消防事務組合 | ハンディファン(携帯扇風機)の火災事故に注意! / shingle
ゴミ処理施設での発火事例
リチウム電池による発火事故は、ゴミ収集車やゴミ処理施設内でも発生しています。リチウム電池が入っていることや発火につながることが認知されていないケースでは、通常のゴミとして収集されてしまい事故につながることがあるのです。
2025年5月9日、13日には福井県鯖江市内のクリーンセンターで火災が起きています。出火場所が不燃ゴミをためておく不燃ピットであったことから、リチウム電池の発火である可能性が高いとされています。また、7月28日には、群馬県でゴミ収集車の火災があり、車内でリチウム電池を使用した製品が見つかったとのことです。
ゴミ収集車やゴミ処理施設での火災は、火災による危険以外にゴミ処理のコスト増加にもつながり、問題視されています。
出典:リチウムイオン電池も原因…全国のゴミ処理場で相次ぐ火災(福井新聞ONLINE) – Yahoo!ニュース
:【速報・動画】ごみ収集車から発煙 群馬・桐生市| 上毛新聞電子版|群馬県のニュース・スポーツ情報
リチウム電池の発火を防ぐための対策

リチウム電池は発火しやすく、取り扱いに注意が必要です。では、どのようにして対策をすればよいのでしょうか? モバイルバッテリーには発火しにくいタイプの電池が内蔵されている製品も増えてきていますが、基本的な対策方法について解説します。
高温や衝撃を避ける
リチウム電池は、高温や衝撃に弱い材質です。高温の場所に置くと熱暴走が起こりやすくなり、衝撃が加わると回路がショートしやすくなります。
できるだけ涼しい環境で保管するように心掛け、高温になりやすい窓際や車内に置いておくことは避けましょう。また、強い衝撃が加わらないよう、持ち歩きの際にはクッション性のあるバッグに入れるなど、対策もできます。
スマートフォンやハンディファンなど手元で操作する機械は落とさないよう注意し、スマートフォンにはカバーをかけるなど落下の衝撃を抑える対策もしておくとよいでしょう。
正しい取り扱いを心掛ける
リチウム電池内蔵の電化製品は、正しい取り扱いを心掛ける必要があります。例えば、IT機器の場合、充電器やケーブルは原則純正のものを使用し、ケーブルの状態もしっかり確認することが大切です。
用途外の使用や、衝撃を加えるような使い方もやめましょう。取扱説明書をよく読み、手順を確認した上で使うと、事故の予防になります。
製品自体の安全性チェックも忘れずに行いましょう。信頼できるメーカーの製品なのか、リコール情報が出ていないかも確認が必要です。リコール情報が出ている場合は速やかに使用を中止し、回収や処分など指示に従いましょう。
出典:リチウムイオン電池による火災にご注意ください/羽島市公式Webサイト
リチウム電池の正しい捨て方とは

リチウム電池を内蔵した製品は、それぞれ処分の方法が異なります。正しい処分方法を把握し、発火事故のリスクを減らしましょう。一般的な処分方法を紹介します。
自治体のルールに従って捨てる
リチウム電池を使用した製品は、該当製品の分類によって捨て方が異なります。まずは、自治体のルールを確認しましょう。
電化製品の場合、小型家電を回収しているボックスや、回収場所へ持参することが一般的です。捨て方が分からない場合は自治体の窓口に確認するか、メーカーへ問い合わせましょう。
捨てられる場所は限られますが、発火事故を防ぐため普通ゴミに混ぜないよう注意が必要です。
回収業者の利用を検討
自治体がリチウム電池内蔵の製品を回収していない場合には、回収業者の利用を検討しましょう。例えば、スマートフォンの場合は、キャリアショップで回収を受け付けています。
モバイルバッテリーはJBRC加盟製品の場合、協力店である家電量販店のリサイクルボックスで処分が可能です。それ以外の製品や故障している場合などは、メーカーの窓口で回収を受け付けているケースがあります。
不用品回収業者でも小型家電などの処分を受け付けており、リチウム電池が内蔵された製品が対象となる場合もあります。ただし、配送業者がリチウム電池の配送に対応していないケースもあるため、事前に確認が必要です。
出典:一般・自治体の方へ|「リチウムイオン電池 混ぜて捨てちゃダメ!」プロジェクト|東京都環境局
リチウム電池の発火事故を予防しよう
リチウム電池を内蔵している製品は多いですが、電池の状態によっては発火のリスクがあります。落下による衝撃や劣化によって発火事故につながる可能性があるため、取り扱いには注意を心掛けましょう。
捨てる場合は、自治体やメーカーのルールに従って、適切な方法で処分しなければなりません。購入の際はリチウム電池の有無や処分方法を確認しておくことで、廃棄時のトラブルを予防できます。
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構成・文/HugKum編集部