アンコンシャスバイアスって何?
誰でも持っている無意識の思い込み
アンコンシャスバイアス(Unconscious Bias)は、何かを見聞きしたとき、とっさに「これは~だ」と判断する無意識の思い込みです。
人間なら誰でも持っている機能であり、なくすことはできません。知識や過去の経験をもとに目の前の情報を素早く判断することで、スムーズな判断・行動を支えます。
しかし同時に、アンコンシャスバイアスは無自覚に人を傷付けたり、差別や悪習の原因になったりもする厄介な機能です。

家庭に見られるアンコンシャスバイアス
家庭に見られるアンコンシャスバイアスの代表的な例は「男女の役割分担への思い込み」です。内閣府男女共同参画局は「令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果」を発表しています。
この調査によると「仕事で家計を支えるのは男性、家事や育児は女性」という伝統的な役割意識は、男性の方が強いことが分かりました。一方で、女性の方が周囲に性別による役割を決めつけられる傾向があります。
また親子関係で、子どもに決めつけた言い方をするのも親のアンコンシャスバイアスです。親の無意識の思い込みは、子どものやりたいことや挑戦のチャンスを奪う危険性があります。
出典:令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果|内閣府男女平等参画局
職場に見られるアンコンシャスバイアス
アンコンシャスバイアスは職場にも見られます。例えば「リーダーは男性の方がよい」「お茶出しや受付は女性がすべきだ」というものです。
たとえ言葉で直接言わなくても、アンコンシャスバイアスは表情や間接的な振る舞い、人事などに表れます。
「育児期間中の女性は育児を優先すべきなので、簡単な仕事しか任せられない」というのもアンコンシャスバイアスです。この判断は、子育て中の人に負担を掛けてはいけないという善意からくる場合もあります。
しかし、人によって事情はさまざまです。本人の意思を聞かずに決めつけている点で無意識の思い込みといえます。
アンコンシャスバイアスが引き起こす問題

それでは、アンコンシャスバイアスの何が問題なのでしょうか? アンコンシャスバイアスがなぜいじめや差別につながったり、人の可能性を潰してしまったりするのかを見ていきます。
いじめや差別につながりやすい
職場に現れるアンコンシャスバイアスは、新入社員の採用や仕事の評価時に不公平な判断を引き起こす可能性があります。不公平な人事評価は職場のモチベーションを下げ従業員の離職にもつながります。上司や担当者の「女性は管理職に向かない」「ゆとり世代は根気がない」といった思い込みは、必要な人材を逃してしまうかもしれません。
アンコンシャスバイアスは、パワハラやセクハラなどを生みやすい特徴もあります。アンコンシャスバイアスに無頓着な場所では、性別や他の人と「違う」ことを理由にいじめや差別が起きやすくなります。
無意識にやりたいことを諦めてしまう
アンコンシャスバイアスは他人だけでなく、自分に対しても発揮されます。よくある例は、「自分には無理だ」「皆と同じでなければならない」というアンコンシャスバイアスによって自分の可能性を狭めてしまうことです。このようなネガティブなアンコンシャスバイアスは、チャレンジ精神を失わせ、本人の自己肯定感を下げてしまうでしょう。
「家事や育児、介護は女性の担う仕事だ」といった、家庭内の役割分担への思い込みも、自分のやりたいことを初めから諦めてしまう原因になります。
アンコンシャスバイアスを減らすには?

いじめや差別、不公平な評価や自己否定を生んでしまうのがアンコンシャスバイアスです。不適切なアンコンシャスバイアスが使われる理由と減らし方を紹介します。
アンコンシャスバイアスの原因
不適切なアンコンシャスバイアスの主な原因は、自分を守ろうとする保身や防衛、社会から学んだ慣習、個人的な習慣です。
不利な状況に立ったり不快な思いをしたりしたとき、アンコンシャスバイアスを自分の正当化や相手への攻撃に使う人は多いでしょう。劣等感を刺激されて不安を感じた場合にも、アンコンシャスバイアスによる防衛が発揮されやすくなります。
また、もともとは社会生活をスムーズにするため学んだ常識や習慣も、時代遅れになればネガティブなアンコンシャスバイアスを生み出します。
自分を振り返る癖をつける
アンコンシャスバイアスは無自覚に現れるため、まずは自分がどのような思い込みを持っているかを振り返る必要があります。
「皆が~」「普通は~」「~べき」は、アンコンシャスバイアスに気付くためのキーワードです。自分がこれらのキーワードを口にしていたら、「もしかしてアンコンシャスバイアスかも?」と考えてみましょう。
今まで会った全ての人が「A」だったとしても、新しく会う人は違うかもしれません。初めから決めつけずに、目の前の相手をよく見ることが重要です。
相手の違和感に注意する
自分のアンコンシャスバイアスに気付くもう一つの方法は、聞き手の反応に注意することです。それまで普通の態度だった相手が、顔を曇らせたり、とげとげしい態度をとるようになったら危険信号です。自分の言動に含まれたアンコンシャスバイアスが、相手を傷付けたのかもしれません。
相手の態度に違和感を持ったら、今自分が言った内容に問題がなかったかを確認し、必要なフォローを行いましょう。普段から、双方向的なコミュニケーションを心掛けることが大切です。
とりあえず「やってみる」のも大事
自分に対する否定的なアンコンシャスバイアスは、自身の可能性をしばしば狭めてしまいます。進学やキャリア形成においてチャレンジできなくなり、自分のやりたいことを最初から諦めてしまうかもしれません。
このようなネガティブな思い込みを乗り越えるには、「どうせ私にはできない」と思っても、とりあえず一回はやってみる姿勢が有効です。
実際にやってみたら思ったよりうまくいった、楽しめたという経験ができれば、「私にはできない」が自分の思い込みだったと分かります。
子どもにアンコンシャスバイアスを伝えるには?

アンコンシャスバイアスの問題を、子どもと一緒に考えるにはどうしたらよいでしょうか? 楽しく遊びながら気付かせる方法や、キーワードを使う方法を紹介します。
一緒にアンコンシャスバイアスのクイズや動画に挑戦
アンコンシャスバイアスによって、子どもが自分の可能性を狭めてしまわないためには、小さなころから自分や周囲のアンコンシャスバイアスを自覚する必要があります。
そうはいっても無意識の思い込みに気付くのは大人でも難しいことです。言葉だけで説明するよりも、子ども自身にアンコンシャスバイアスを体験してもらった方が、子どもに伝わりやすいでしょう。
具体的には、親子でアンコンシャスバイアスのクイズをやったり動画を見たりして感想を言い合う方法があります。楽しみながらアンコンシャスバイアスを話すきっかけを作れます。
思い込みの種類について体験を話し合う
子どもにアンコンシャスバイアスを伝えるには、専門用語をキーワードにして身近な体験を話し合うのも一つです。アンコンシャスバイアスに関連する専門用語には、以下のようなものがあります。
●ステレオタイプ:所属する集団や一部の特徴などから人を決めつけること
●同調バイアス:「周囲と同じでなければいけない」と思い込むこと
●確証バイアス:自分の考えを裏付けるような証拠だけを重視し、反対の証拠は軽視すること
●権威バイアス:専門家や自分より目上の人の意見は正しいと思い込むこと
●ネガティビティバイアス:物事のポジティブな面よりネガティブな面にばかり意識が向くこと
●インポスター現象:自分の実力を正当に評価せず低く見てしまうこと
自分や子どもが陥りやすいアンコンシャスバイアスを選び、お互いのエピソードや感想を話し合ってみましょう。
アンコンシャスバイアスに気付こう
「アンコンシャスバイアス」は無意識に働くので、身近でありながら自覚しにくい存在です。しかし、自分や周囲のアンコンシャスバイアスに無自覚なままだと、さまざまな問題が引き起こされます。
特に、家庭や職場における性別役割や少数派への偏見は、いじめや差別につながりやすく危険です。自分の能力を低く見てしまう決めつけも、チャレンジ精神を失わせ自分の可能性を狭めてしまいます。
自分や周囲のアンコンシャスバイアスに気付き、お互いを尊重できる関係性を育てましょう。
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文・構成/HugKum編集部
