日米首脳会談が実現
トランプ大統領が来日し、高市首相との間で日米首脳会談が実現しました。高市首相は、故安倍元総理の外交・安全保障路線を強く意識し、自らを「女性安倍」として位置づけることで、トランプ大統領との個人的な信頼関係構築と、日米同盟のさらなる深化を目指しています。
会談では、伝統的な軍事・安全保障分野だけでなく、経済や貿易、そして昨今重要性を増す経済安全保障といった幅広い領域での協力強化が確認されました。

中国を警戒するアメリカにとって日本との連携は重要
トランプ大統領にとって、政権一期目における安倍元総理との関係は「ゴルフ外交」に象徴される極めて友好的なものでした。トランプ氏は、高市首相がその「安倍路線」を継承することを強く望んでおり、これは高市政権にとって大きな追い風となります。
高市首相はこの期待に応える形で、日本の防衛力の強化、米国との共同訓練の拡充、そしてサプライチェーンの強靭化など、具体的な協力項目を打ち出すことで、日米同盟がインド太平洋地域の平和と繁栄の「礎」であることを再確認しました。

トランプ大統領、もっと言えば今日の米国は、台頭する中国に強い警戒感を抱いており、これは共和党だろうが民主党だろうが変わりません。そして、米国は中国に対応する上で経済的、地理的に日本を最も重要なパートナーと位置づけており、高市政権が米国との関係深化という姿勢を貫くことを大変評価しています。
要は、今日の日本と米国はウィンウィンの関係にあるとも言えるでしょう。
一方、日米関係の深化は中国との緊張をもたらす可能性も
高市政権が外交の最優先課題として日米関係の深化を掲げ、価値観を共有する国々との連携を強化していくことは、外交上の明確な方針です。しかし、この強固な日米連携、特に軍事・安全保障と経済安全保障における協力強化は、中国との関係に冷え込みをもたらす可能性があります。
中国は、日本の軍事力強化や、米国との経済的な連携強化を対中包囲網の一環として捉えており、これに対し強い警戒感と反発を示しています。台湾情勢を巡る日米の連携強化や、半導体などのハイテク分野での規制協力は、中国の経済成長戦略や外交戦略と真っ向から対立するからです。

高市政権は、中国との関係を完全に断ち切るのではなく、建設的かつ安定的な関係を維持する意向を示してはいますが、外交の軸足が明確に米国側にある以上、中国側が対日姿勢を硬化させるシナリオが考えられます。それによって、東シナ海や尖閣諸島、そして経済的な軋轢は増大し、日中関係は一層の緊張を強いられるかもしれません。
高市首相にとって、「女性安倍」として日米同盟を極限まで深化させることは、内政・外交上の成功の鍵となります。しかし、その代償として対中外交において、厳しい舵取りを迫られることになります。今後、高市政権は、いかにして日米の強さを維持しつつ、中国との決定的な対立を回避し、地域の安定に貢献していくかという、重大な課題に直面することになるでしょう。
こちらの記事もおすすめ
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
