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親子がコラボレーションした初めての展覧会
この展覧会は、太郎さんの漫画作品のファンだった倉敷市立美術館の学芸員・山吹知子さんが、太郎さんの父・やべみつのりさんが倉敷出身であることを知り、親子展を開催してはどうかと考えたことがきっかけで開催に至ったもの。
「おふたりの作品の魅力はもちろんですが、紙芝居・絵本作家のみつのりさんが描かれた家族絵日記と、そこに描かれていた大らかで子どもの意思を尊重した育児方針にもっとも魅力を感じた」そうです。
山吹さんが言及した家族絵日記は、みつのりさんが、ご長女の光子さんとその弟・太郎さんの成長を観察して綴ったものです。作家活動をする一方、家庭では家事と育児を担当し、いつも子どもたちの傍らにいたみつのりさんだからこそ描くことができたエピソードが満載で、子どもたちの日々の様子を、手描きの絵と少しの文章でノートに記録しています。

本展には、その家族絵日記はもちろんのこと、みつのりさんの紙芝居や絵本の原画、太郎さんの漫画作品の展示とともに、太郎さんの子どものころ描いた絵や、親子で創作したドミノやかるたなども展示されています。
みつのりさんの展示作品は、こぐま社の絵本『かばさん』や『ひとはなくもの』『ひっくりかえる』の原画や、童心社の紙芝居『ほねほねマン』や『どうぶつのてんきよほう』『ぼくのタガメ』など。



太郎さんの作品は、大ヒット作『大家さんと僕』をはじめ、『マンガ ぼけ日和』、『ぼくのお父さん』などのパネルを多数展示しています。

子どもたちの成長を綴ったみつのりさんの絵日記も、鑑賞することができます

おふたりの作品のほかに、本展で注目したいのが、みつのりさんが描いた膨大な家族絵日記(「光子メモノート」38冊と「太郎メモノート」3冊)と、家族絵日記の一部をプリントした展示コーナーです。
プリントされたページは、どれも太郎さんが選んだページで、印象深いシーンが描かれています。みつのりさんの家族絵日記は、太郎さんの漫画『ぼくのお父さん』にも登場しているので、漫画作品の愛好家にとっては見逃せない展示といえます。

親子展と同時に刊行された、みつのりさんの家族絵日記『光子ノート』もミュージアムショップにて販売中!!
展覧会を堪能したあとは、ミュージアムショップを要チェック!
ショップ内では、国産ジーンズ発祥の地・倉敷に因み、ジーンズ生地で製作されたバッグやエプロンをはじめ、ポップなデザインのマスキングテープなど特別展限定のオリジナルグッズも多数販売されています。


太郎さんが編集した992ページ、オールカラーの『光子ノート』はマストバイアイテム

数あるアイテムの中でも見逃せないのが、太郎さんが自ら出版した『光子ノート』です。
会場内で展示されているみつのりさんの家族絵日記のうち、太郎さんの姉・光子さんと過ごした日々を綴った38冊に及ぶ膨大な絵日記「光子メモノート」の全ページを、太郎さん自らがスキャニング&トリミング。その中から太郎さんが厳選して1冊にまとめたものです。なんと、その総ページ数は992ページにも及び、本の冒頭には太郎さんの書き下ろし解説漫画も載っています。


太郎さんによれば、「大人になってからこの絵日記を読んだことで、漫画を一冊描かせてもらえた」とのこと。そして、「かねてから絵日記を本にしたいと思っていたので、出版社へ企画を持ち込んだのですが、断られたため自ら出版をすることにした」そうです。

絵日記出版への太郎さんの熱い想いは、本のボリュームや装丁に表れています。992ページというボリュームは製本の限界の厚さ。ノートのカラーページや紙の日焼け、テープの劣化などをそのまま収録するために、全ページがカラーで印刷されています。また、背に製本テープが貼ってあるような装丁は、原本のノートを再現しようとしたものです。

『光子ノート』には、1975年から太郎さんが生まれた1977年までの光子さんの成長の記録とともに家族の歴史が詰まっています。
光子さんがお友だちと遊んだり、保育園に行ったり、お誕生日を祝ったり、夏のプールやお風呂屋さんに行った日々……。倉敷のおばあちゃんやみつのりさんご夫婦のご友人も登場して、日記を読み進めると、1970年代半ば、高度成長期の東京の雰囲気も浮かびあがってきます。昭和の時代に生きた人が読んだなら、きっと懐かしく思うことでしょう。
その一方で、本に掲載されているエピソードやシーンは、時代を問わず誰もが共感できるものなので、自身の子ども時代や子育てに思いを馳せる人が多いと思います。

巻末に掲載されたみつのりさんのあとがき「へんなおとうさん」には、絵日記を綴ろうと思ったきっかけや、絵日記を綴っていたときの気持ち、そして、現在の想いが語られています。
《——幼い子どもが世界と出会い、いろんなことを知っていく過程は、なんともおもしろいです。どんづまりだったぼくは、少し光がかんじられました。そして、自分のへんさ加減に気づかされました。
その間、妻はずっと外で働いていました。感謝です。
娘の誕生、息子の誕生、こどもたちの成長する姿をみて、描きつづけることでぼくは自己回復をしてきたように思います――》(本のあとがきより一部抜粋)
子育てを経験した方なら、誰もが同じようなことを感じたときがあるのでは⁈ 展覧会へ足を運んだら、ぜひ手に取ってみてください!
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文/山津京子