人気落語家・春風亭一之輔さんに聞きました!夏休み「親子で落語」体験がおすすめなワケ

ご存じですか?落語は子どもの集中力や想像力を養うのにうってつけだそうです。今年の夏休みは、いつもとは趣向を変えて、親子で落語デビューしてみませんか

子供からご年配の方まで親子三代で楽しめる『春風亭一之輔のおもしろ落語入門おかわり!』の著者で、NHKで人気を博した「落語ザ・ムービー」にも出演した、人気落語家・春風亭一之輔さんに、子どもと一緒に落語を楽しむためのポイントを教えていただきました。

保育園や幼稚園で落語をやることも。子どもでも楽しめる「落語」はたくさんあります

落語会や寄席で、大きな声を出してみんなで一緒に笑う楽しさを経験してほしい

──落語は「大人の世界のもの」だと思われがちですが、子供には難しくありませんか?

基本、日本語がわかれば大丈夫です。難しい噺もありますけれど、子どもが楽しめる噺もたくさんあります。

実際、学校寄席といって、保育園、幼稚園、小中高の学校へ噺家がうかがって落語をやることも多いです。私も、保育園に呼ばれて落語をやったことがありますが、生後6カ月の赤ちゃんから6歳までの“お客さん”に、楽しんでいただけたと思います。ほとんどの子が最後まで飽きずに聞いてくれました。泣き出して途中退場しちゃった子どももいましたが、それはそれでいいんです。

──学校寄席はどのように進めて、どんな噺をするのですか?

まずは、落語とは何かというお話を簡単にしています。「落語とは、着物を着た人が、一人で、座布団に座って、人物を演じ分けながら、お話をしていきます。手ぬぐいと扇子を使って、お蕎麦を食べたり、本を読んだりしますよ」と話しながら、落語に出てくる仕草を実際にしてみます。

絵・山口晃(『春風亭一之輔のおもしろ落語入門』より)

噺は、子供や動物が出てくる15分くらいにきゅっと締まったものを選びます。例えば、子ほめ、初天神、寿限無(じゅげむ)、狸の札、転失気(てんしき)、桃太郎、平林(ひらばやし)など。このあたりのラインナップが、子供におススメの噺です。

──子供たちからは、どんな反応がありますか?

学校寄席が終わってから感想文を送っていただくことがあるのですが、「初めて落語を聞いたけれど、おもしろかったです」とか、「難しくなかったです」という声が多いので、私も嬉しくなります。会が終わってすぐの質問タイムでは、「年収はいくらですか?」なんていう、子供ならではの直球が飛んでくるので、気が抜けませんけれど()

あと、反応といえば、子供は音のおもしろさで笑うことが多いようです。「寿限無」の名前を言い立てるところなど。おもしろい音に反応しています。

一人が色々な役を演じる落語は、子どもの想像力を育むのに役立ちます

──落語は、子供にとってどんな「いい影響」があると思いますか?

落語は、私のようなオジさんが女の人をやったり、狸になったり、いろいろな役になっておしゃべりをします。それも、着物のままでお化粧をするわけでもなく、必要以上に声色を変えることもしません。聞き手であるお客さんは、そんな一人のおしゃべりから想像をふくらませて笑いへと繋げていくわけですから、想像力を育むことにとても役立つと思います。

それから、一人のおしゃべりをみんなで一緒に聞くという経験は、日常ではあまりありませんよね。でも、落語会や寄席なら、大きな声を出してみんなで一緒に笑えます。この、「声に出して笑ってもいいんだ」「みんなで一緒に笑ってもいいんだ」という経験は、子供の心の成長にとって大切なことだと思います。

──落語会や寄席に、子供を連れて行っても大丈夫ですか?

もちろん大丈夫です。ただ、ホールなどでやる落語会は未就学児が入れない場合が多いですが、寄席はOKです。

寄席とは演芸専門の小屋(劇場)のことで、一年中、落語を中心に漫才や手品、紙切りや音曲などをやっています。東京には4カ所あり、合い間で飲食もでき、いろいろな芸を見ることができるので、子供も飽きません。

一番前の席に座ってお菓子を食べながら落語を聞いて、ゲラゲラ笑っている子供さんがよくいますよ。私の落語会にも、必ず小学生のお子さんが客席に数人はいます。私は声が大きくて、落語が分かりやすいからなのかな?

── 師匠は、『春風亭一之輔のおもしろい落語入門』と『春風亭一之輔のおもしろ落語入門おかわり!』という落語の児童書も出されているのですよね。

終演後のサイン会などで、この本を読んで落語を覚えたというお子さんが来てくれることもあります。「『鈴ヶ森』を覚えたので、聞いてください!」って。時間もありませんから、丁重にお断りしますけれど(笑)、ありがたいことです。

落語の世界は、ダメな人も排除しない「こんな人がいたっていいじゃない」という懐の深さがベースにあります

──親子で落語を楽しむ秘訣があれば御指南ください。

落語には、定番の登場人物で、いつもぼ~んやりしていて、なんとかラクに生きようとする「与太郎」という人物がでてきます。他にも、だらしのない人、失敗ばかりしている人、間抜けな人、慌て者、そそっかしい人など、実にいろいろな人が登場してきます。でも、それがダメということでなく、笑い話にしていきます。どんな人も排除せずに、「こんな人がいたっていいじゃない」という懐の深さがベースにあり、それが落語の魅力のひとつ。そのあたりを、親子で笑い合いながら感じていただければ、いいんじゃないでしょうか。

寄席に足を運んで、生の落語を見ていただくのがいちばんですが、まずは、本を読んだり、DVDやテレビを見たりして、好きな落語家を見つければ、落語の世界がグッと身近なものになると思いますよ。

私も寄席に出ていますので、いつでも会いに来てください。お待ちしています。

 

©キッチンミノル

 

春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)

2001年日本大学芸術学部卒業。同年、春風亭一朝に入門。04年二つ目昇進、12年真打昇進。古典落語に現代的な笑いを巧みに取り入れながら、聴き手を落語の世界へと連れて行ってくれる、今大人気の若手真打。滑稽噺から人情噺まで持ちネタは200を越える。年間900席以上の高座に上がり、テレビやラジオでも活躍。http://www.ichinosuke-en.com

 

『春風亭一之輔のおもしろ落語入門』(小学館)

絵・山口晃

小学生からご年配の方まで、親子三代で楽しめる「読む落語」の決定版。師匠の語り口による『転失気』『鈴ヶ森』『初天神』『堀之内』『あくび指南』『長屋の花見』『井戸の茶碗』を収録。

『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)

絵・山口晃

前作『おもしろ落語入門』同様、師匠の語り口による『つる』『桃太郎』『かぼちゃ屋』『粗忽の釘』『化物使い』『代脈』『芝浜』を収録。

*2冊とも、装画&挿絵は、現代アートの第一人者・山口晃が書き下ろしで担当。江戸の町の風情、物語の機微を丹念に豊かに描き、落語の世界に彩りを加えています。『おかわり!』では、「粗忽の釘」を漫画で書き下ろしています。

編集部おすすめ 夏休みに子どもと楽しめる落語情報

夏休み親子寄席  鈴本演芸場(東京・上野)

2019年8月18日(日)、25日(日)

開場 午前9:00 開演 午前9:30 終演 午前11:00

落語や紙切りなど4席が楽しめます。

入場料金 1,000円(子供、大人同一料金)

詳細は鈴本演芸場のホームページでご確認ください。

http://www.rakugo.or.jp/2019-oyakoyose.html

THE こども寄席 横浜公演 横浜関内ホール(小ホール)

2019年831日(土)

午前の部 開場 午前10:00 開演10:30  終演11:30すぎ予定

午後の部 会場 午後14:00  開演午後14:30 終演 午後15:30すぎ予定

落語と紙切りなど3席が楽しめます。

入場料金 大人2,500円 子供2,000

詳細はTHE 子ども寄席のホームページでご確認ください。

https://kodomoyose.jp/news/nextp

取材・構成/神崎典子

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