話題の「シュガードーム」とは?
砂糖を煮詰めると飴(あめ)化し、カラメルになります。ラップをかけたボウルの中央に、カラメルをとろり。両手で一気にセルクルを下に押せば、カラメルが風船のようにふくらみます。この不思議な工程、これこそが、砂糖でできた食べられる、話題の「シュガードーム」。
できたドームをカップケーキにかぶせれば、ずっと眺めていたくなるような繊細で美しいシュガードームケーキが出来上がります。
「シュガードーム」の誕生秘話

きっかけは、「球体を作れないかな〜」という好奇心
子どもたちを対象にワークショップを開催しているのですが、子どもたちが“丸”や“球”を描いたり作ろうとしたりすると、それはそれは難しいのです。大人だって、正確に“丸”を描くのは難しいものですよね。
球体ってどうやってできているんだろう? どうしたら綺麗にできるんだろう?
その時に、風船やビーチボールが丸くふくらむのは、すべての場所の圧力が均一になる性質があるからという原理を知ったんです。
フランスで、球の飴細工を作るのを見たことがあります。それを、家庭のキッチンでできないか試行錯誤したのが、2020年に紹介した、ボウルと市販のラップを使って作るこの方法です。
出来上がるのは、球ではなく半球ですけどね(笑)。でも、「どうしたら丸くふくらむのか?」ということは理解できますよね。
もちろん、ここに行き着くまでにたくさん失敗しました(苦笑)。
まず、高温に耐えられて、伸縮性のあるラップに出合うまでに数日。
ベストな飴の状態に行き着くまでに数日…。
鍋やボウルについた飴はなかなかとれないですし、1〜2週間くらいは暗中模索の毎日でした。
「シュガードーム」の4つのポイント
そうしてたどり着いたのが、ここから紹介するシュガードームづくりのための4つのポイント。その中でも、ボイルの法則とシャルルの法則が鍵に。この法則を教えてくれたのは、東京理科大学の先生でした。
ポイント:砂糖の七変化
砂糖は加熱温度によって、形状をさまざまに変えて一定温度を超えると冷やしても元に戻らなくなります。理科の実験でよくでてくるのが、165度〜の「べっこう飴」。シュガードームでは、一歩手前の140度「タフィー」という状態が目安になります。よく、りんご飴やフルーツ飴に使われるパリパリの薄い飴の状態です。
ポイント:耐熱ラップ
そして、高温の飴を流して膨らませるという作業を成功に導いてくれるのは、「耐熱性」と「伸縮性」を備えたラップ。140度程度の飴を扱うので、150度以上の耐熱性のあるラップを選びましょう。ピタッとボウルにくっつく仕様で空気が漏れず、伸縮性のあるものを選びます。高温の熱でもラップの構造が破壊されずに、びよーんと伸びる状態をイメージしてください。
ポイント:ボイルの法則
物理学者ロバート・ボイルによって1662年に発見された、気体の圧力と体積の関係。ボウルの中の体積が小さくなることで、圧力が高まります。高温の飴を流したラップは熱によって伸びやすくなっているため、高い圧力がかかると、息を吹き込んだ風船のようにふくらむのです。
ポイント:シャルルの法則
空気は温まるとふくらみ、冷えるとしぼむ性質があります(シャルルの法則)。飴の温度は140℃もあるため、周りの空気が温められてふくらんだのです。
シュガードームのバレンタイン特別レシピ

シュガードームのポイントを理解した後は、バレンタイン直前ということで、ピンク色の可愛いシュガードームカップケーキの作り方をご紹介しましょう。
材料
パラチニット 50g
着色料(赤) ごく少量
チョコレートカップケーキ 1個
チョコレートクリーム 30g
スプリンクル(ハート) 適量

下準備
直径20cmボウルに耐熱ラップをピッタリとはる

ボウルの中央に直径10cmのセルクルを置く

作り方
- 鍋にパラチニットと着色料を入れて中火にかけ、パラチニットが溶けて透明になるまで溶かす。(約165度)
- 1の鍋を回しながら、140度目安まで温度を下げる。
- 2を用意しておいたセルクルの中央に500円玉程度流し、素早く両手でセルクルを下方に押す。
- 飴が膨らんだ状態のまま約2分、固まるまで状態を維持する。
- 4が完全に固まったら、ラップをそっと外す。
- チョコレートカップケーキを用意し、チョコレートクリームで縁取りします。中央に今回はネコのフィギュアを置き、ハートのスプリンクルを散らす。
*ネコのフィギュアの代わりに、いちごでも良い
*ネコのフィギュアは消毒をして用いる - 5を6の上からそっとかぶせる。
*飴細工は高温になります。調理の際は、必ず大人の方と一緒に細心の注意を払って取り組みましょう。

終わりに

繊細で薄いシュガードームは、パリっと割って食べられる面白さもあります。「壊したくない!」「まだ眺めていたい!」…と言いながらも、案外、割る時は気分爽快(笑)。
見た目も綺麗で、工程は摩訶不思議! それでいて、気体の圧力と体積の関係(ボイルの法則)を知れるという、身の回りの不思議から生まれたレシピ。
シュガードームを楽しみつつ味わいながら、私たちの身の回りにある自然界の不思議・神秘をも実感していただけたらうれしい限りです。ぜひ親子で作ってみてくださいね!
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シュガードームを考案したのは
ケーキデザイナー、芸術教育士。フランスと日本で製菓を、京都芸術大学大学院で芸術を学ぶ。子どもとママのための製菓クラスやワークショップ「My little days」を主宰。子どもたちの興味や感性に寄り添う独自の世界観から提案している。かたわら、ウエディングやパーティ用のお菓子製作、雑誌やテレビ、Webなどで幅広く活躍。著書に「メレンゲのお菓子 パブロバ」(立東舎)、「不思議なお菓子レシピ サイエンススイーツ」(マイルスタッフ)、「太田さちかのサイエンススイーツ 魔法のおやつをめしあがれ」(文化出版局)などがある。


