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「幼稚園受験」という選択肢もあるんだ
― まず、幼稚園受験を考えたきっかけから教えてください。
Kさん:娘が1歳くらいの頃、私の大学時代の友人のお子さんが幼稚園受験をしたそうで、彼女から話を聞く機会がありました。そこで、「幼稚園受験」という選択肢もあるんだと初めて知りました。
近所の公立小学校は中学受験をする家庭が多いとも聞いていたので、中学受験も選択肢にあったんです。でも、夫が「勉強中心の生活が大変だった」と中学受験で苦い経験をしていて(笑)。それで、「中学受験はどうしようか」と夫婦で話していたところでした。
― 幼稚園受験は情報がほとんどないと聞きます。経験した方のお話はすごく貴重でしたね。
Kさん:友人の話がなかったら幼稚園受験を考えなかったかも知れません。夫は「そんな小さいうちから受験なんて大変じゃない?」と、最初はあまり乗り気ではありませんでした。でも、チャレンジしなければ可能性はゼロ。「とりあえずやってみて、塾や幼稚園受験がうちの子に合わなければやめればいいんじゃない?」と私が話して、まずは幼児教室に通うことから始めました。娘は新しいことに興味を持つタイプなので、楽しめそうなら続けようと思っていました。

受験準備は2歳からスタート。まずは週1から練習
― 準備はどのくらい前から始めたのでしょうか。
Kさん:幼稚園受験は11月です。2年保育の幼稚園を考えていたので、試験本番は娘が4歳の11月。でも、その前に雰囲気に慣れる目的で3年保育の幼稚園も受験しようと、娘は2歳の11月から幼児教室に通い始め、3歳の11月に1回目の幼稚園受験をしました。結果は補欠合格でしたが、合格をいただいてもそこに進学する予定はなかったので、「幼稚園受験ってこういう感じなんだ」と分かったのが良かったです。
― 幼児教室選びは悩みましたか。
Kさん:個人の教室に通っていた友人から、「先生との相性が子どものモチベーションに大きく影響する」、「子どもの前で厳しいことを言われることもある」と聞いたので、大手幼児教室を選びました。最初の1年間は週1回通いました。
― 週1回だと負担も大きくなさそうですね。
Kさん:そうですね。3年保育の幼稚園受験のための幼児教室では、知識を詰め込むというより、「先生の指示に従えるか」が主でした。「運動をこういうふうにやってね」と口頭で指示されて、それに従えるかみたいな感じのもので、やっぱり慣れるのが大切だと感じました。各幼稚園の対策クラスもありますが、うちは基本クラスだけを受講しました。面接練習も家で。「面接とはこういうものだよ」と伝えて、「どんな遊びしてるの?」と私が聞いて、娘が答える練習をするという簡単なやり取りだけやって本番を迎えました。
―娘さんはすぐに慣れましたか。
Kさん:通い始めた頃は、娘が私から離れたくなくてうるうるしたときもありましたがそれも数回でした。それよりも、楽しそうなときがいっぱいありました。運動や手を動かすのが好きなタイプの子なので、工作も楽しかったようです。母の日や父の日に、顔を書いてくれたのですが、うれしそうに「はい、どうぞ」と持ってきてくれました。

2年保育のコースへ。本人はとっても楽しそうに「できたよ、見て!」
― 2年保育の幼稚園受験は、難関と言われる幼稚園ばかりだと伺いました。
Kさん:そうですね。募集人数も少ないので、これまでとは雰囲気が違いましたね。うちは基本クラスのほかに志望校別クラスをとって週2日になりました。1コマは90分です。小学校受験と違うのは、座学よりも運動と指示行動が中心のところでしょうか。それが混ざっていることもあります。「平均台を通って、向こうにいるぬいぐるみが3つあるから、くまさんのところに、いちごを置いて、スキップで戻ってくる」といった課題が出ます。
― 一度にいくつも指示が出るんですね。
Kさん:そうなんです。何をするか覚えて、順番通りに行動できるかを見るようです。けんけんぱやスキップなど、体を動かす課題も多かったですね。工作もあって、はさみやのりを使って作品を作ることもありました。宿題は特にありませんでした。
― 週2日になっても娘さんは楽しく通っていたそうですね。
Kさん:そうなんです。好奇心旺盛な子なので(笑) 子どもにとっても習い事の延長のような感覚でした。幼児教室に通うことで受験に関する情報が得られたり、試験形式に似た活動ができたりするので、慣れる意味では大きかったと思います。
本人と相性の合う幼稚園を選んだ
―受験する幼稚園はどのように決めたのでしょうか。
Kさん:大学受験は本人に選択させたかったので、高校まで安心して通える環境を重視しました。娘がとても活発な性格なので、元気な雰囲気の幼稚園をいくつか見学。あとは、実際にその幼稚園に通っている知人から話を聞きました。どの幼稚園も魅力的で、最終的にはどこにご縁があってもいいなと思っていましたが、試験日程も考えてA幼稚園とB幼稚園を受けることにしました。
― 準備の中で大変だったことはありましたか。
Kさん:願書を書くのが一番大変でした。全部手書きなんです。「子どもにどう育ってほしいか」「どんなことを大切にしているか」など、家庭の教育方針や子どもへの関わり方を言葉にしなければならず、夫婦で何度も話し合いました。
― ご夫婦でどんなことを話し合いましたか。
Kさん:話していく中で、夫と同じことを大切にしていたんだと気づきました。我が家では「言葉を大切にする」ということを意識しています。会話を通して子どもの気持ちを知ること、親の考えを丁寧に伝えることを大事にする。普段はなんとなく共有しているつもりでも、改めて言葉にする機会になってよかったですね。幼稚園受験をきっかけに、子どもが小さい段階で、夫婦で子育てについて深く話せたことは、とても良かったと思います。

いざ、心臓バクバクの試験当日
― 受験当日の様子も教えてください。お子さんには受験と伝えていたのでしょうか。
Kさん:前日は私が心臓バクバクで寝られませんでした(笑)。娘には、受験本番の日も、「幼稚園に遊びに行くよ」と伝えていました。そのときに通っている幼稚園も娘は大好きだったので、生活リズムは崩さないように、前日まで普段通り通園していたので、本人には受験の意識はなかったと思います。それがかえって普段通りできてよかったかも知れません。
A幼稚園は子どもだけで過ごす時間が1時間ほどありました。親は別室で待っているので、何をしているのか分からず、私のほうがとても緊張しました。戻ってきた娘が「楽しくて盛り上がっちゃった」と(笑)。それを聞いて少し安心しました。
B幼稚園は親子で遊ぶ時間があり、その後面接がありました。父母それぞれに同じ質問がされる場面もあり、事前に答えの方向性をそろえておいてよかったと思いました。どちらの幼稚園もそうなのですが、事前に幼児教室でもらった過去問をもとに面接対策をしていたのですが、B幼稚園では想定外の質問が。ヒヤッとしましたが、落ち着いて答えられたと思います。
「合格」の文字に涙。娘は4月からA幼稚園へ
― 合格発表のときのことは覚えていますか。
Kさん:先にB幼稚園の結果が出て不合格でした。難しいとは思っていましたが、やはり落ち込みました。その数日後にA幼稚園の合格発表がありました。発表は9時。娘をいつも通り幼稚園に送って、自宅の前でスマホで結果を確認しました。実は、あまり期待していなかったんです。そのぶん、画面に「合格」と表示されたときは驚いて。その場は外ですから、いったん落ち着いてうれし涙を我慢し、急いで家に帰り、部屋で存分に泣きました。
― 受験を通して感じた変化はありますか。
Kさん:はい。家庭の教育について考える良い機会になりましたし、夫婦で同じ方向を向けたことが大きな収穫でした。幼稚園受験は子どもに大変なことをさせているイメージがあるかも知れませんが、実際にやってみると、すごく楽しかったですし、何より娘の変化を感じました。
― 挑戦したことで得られたものも多かったのですね。
Kさん:娘が靴をそろえたり、挨拶ができるようになったり、生活面での成長がありましたね。幼稚園受験というと大変なイメージがありましたが、子ども自身は楽しんでいたと思います。結果として、娘の性格にも合っているA幼稚園に入園できてよかったと感じています。
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取材・文/黒澤真紀
