「生きる力」ってどんなチカラ?身につけるには?【井桁容子先生の子育て相談】

乳幼児教育保育実践研究家の井桁容子先生が、子育て中のママのお悩みに答えます。今回は「がまん」することが苦手な子どもの対応についてお話を伺いました。

Q : すぐにキレたり、孤立したりする大人になってほしくない…。心が折れない強さをもってしっかり生きていく力、どう育てる?

A : 「わかってもらう」経験がやわらかい心を育てます

社会の中で生きていくためには「強さ」も必要です。でもこの場合の強さとは、「どんなこともがまんして頑張る」という種類のものではありません。生きていくうえで役に立つ強さとは、しなやかなもの。そのためにめばえっ子時代に大切なのは、「やわらかな心で接してくれる大人」の存在です。

しなやかな心は簡単に折れない!

枯れ枝と、草花の茎を思い描いてみてください。かたい枝は強そうに見えますが、強い力が加われば折れてしまいます。でも、細くてもやわらかな茎は、簡単には折れません。
人の心も、これと同じです。いやなこと、つらいことが起こったとき、うまく乗り越えていけるのは、視点や考え方を変えることができるやわらかな心をもった人。こうした「しなやかな強さ」こそ、「生きる力」なのです。

しなやかな強さをもつやわらかな心のベースとなるのは、「わかってもらう」ことです。いやなことを「いや」と言ったとき、無理強いされない、気持ちを聞いてもらえる…。こうした経験をすると、子どもは「理解された」と感じます。そして安心することで、いやだと思ったことも受け入れようとする余裕が生まれるのです。

たとえばにんじんを食べ残したとき、「じゃあ、どんな料理だったら食べられそうかな?」と歩み寄ってもらえたら、「次は食べてみようかな」と自然に思えるかもしれません。でも「好ききらい言わずに食べなさい!」としかられ、強制されると、にんじんと無理強いされた記憶がセットになり、にんじんがもっときらいになってしまいます。そして、自分の気持ちを表現することもできなくなってしまうのです。

自分の気持ちをわかってもらえないことは、子どもにとって大きなストレスになります。そして苦手なことやきらいなことをがまんしたり、親の言うことに従わなければならなかったりする状況が続くと、子どもの心は柔軟性を失ってしまうのです。

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人を巻き込み、助け合える力が本当の強さにつながる

子どもが自分の気持ちを表現するためには、関わりをもつ大人への信頼感が必要です。感じたことを素直に言っても、しかられたりきらわれたりすることはないという確信は、「自分らしくいるだけで十分な価値がある」という自己肯定感につながります。
さらに、どんな自分でも「大好き」と思ってもらえる、という感覚は、意欲も育てます。「〇〇でなければならない」という「かたさ」がないため、自分らしさを生かしながら周囲と関わり合い、助け合えるようになるのです。困ったときやつらいとき、だれかに「助けて」と言える。ひとりで抱え込まず、他人の力を借りて解決に向かうことができる。こうした柔軟な発想や姿勢こそ、生きるために必要な強さなのです。

幼児期は、大人が子どもから学ばせてもらえる時期でもあります。まずは「~が上手だからいい子」「~ができないからダメな子」などと〇×で評価するのはやめ、子どもの気持ちに目を向けてみましょう。きっと、目からウロコが落ちるような発見があるはずです。やわらかい気持ちで、ありのままの子どもの個性に目を向けてみてください。

井桁容子先生

乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。

2019年10月号『めばえ』 構成/野口久美子 イラスト/小泉直子 

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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