学童や学校で大人気の漢字ゲームができるまで
カンジモンスターズは漢字で戦うカードゲーム
カンジモンスターズ(以下:カンモン)は、部首を合体させ、漢字の力を使って戦う“漢字バトルカードゲーム”。2022年12月にカードゲームが発売され、後に「コロコロイチバン!」で2023年6月号からマンガ連載を開始させました。
ゲームの推奨年齢は5歳以上で、まだ漢字を習っていない子どもでも遊べます。
シンプルなルールと、初めてプレイする子でも大人に勝ててしまう意外性から、特に学童や塾など、異年齢の子どもたちが集まる場では大人気のカンモン。
開発者にこだわりを聞いてみました。
「学ぶためのゲーム」ではなく「子どもたちが熱中するゲーム」を作りたい

――漢字をゲームにしようと思われたきっかけを教えてください
森本さん:tanQ株式会社のビジョンが「世界っておもしろい」なんです。どんな世界でもおもしろいというのを前提に、じゃあ勉強の中でもいちばんつまんないと思われる「漢字」をおもしろくしてみたら? と思って、漢字をテーマにすることにしました。
人の脳は「おもしろい」と思ったときや「おもしろそう?」と感じるとドーパミンという期待物質が出るんですね。でも解答を予想できる数学や理科と違い、形が決まっている漢字を書くという動作には予測する余白がないんです。
そこでカンモンでは、遊んでいると、部首ごとの変形パターンが自然にわかるような作りにしています。
だから、新しい漢字を見ても、「あの部首かも?」「こういう意味かも?」と予測できるようになることを目指しました。

――それまではどんなゲームを作っていたんですか?
森本さん:以前から「学びが届くゲームのサブスク」なども手掛けていたんですが、その理念は大人にはウケるけれど、子どもたちに聞いてみると「1回やったよ」とは言うものの、1回だけで終わってしまうことがすごく多かったんです。
実際に全国のユーザーさんの家にお邪魔して実地調査をしたこともあるんですが、大人は学んでほしくてそのゲームを買い与えているから、普及率は高い。でも子どもたちにとっては学び目的のゲームはおもしろくないから1回やったらもうやらない。結局大人が買い与えても、子どもが自ら進んで遊んではもらえない、という現象が続いていたんです。
大人も漢字のおもしろさに目覚める工夫がスゴイ
部首ではなく、共通点はカタチや成り立ち
――カンモンでは部首別の分類がないのはなぜですか?
森本さん:漢字は、現在も大規模に日常的に使用されている中で言えば、世界でもほぼ唯一の表意文字なんです。
例えば「友」という字。これはもともと「手」という字が2つ合わさったもの。
「援」という字は形を変えた「手」が4つ。「先」は「人」の上に「足跡」があるという形です。
子どもの気持ちになって漢字を見たとき、これは「てへん」と言うより、「手が4つ」のほうがおもしろいかな、と思ったので、カンモンではあえて部首別にはしていません。

子どもにとっての「使いやすい」が詰まったアイデアがびっしり
――カンモンは子どもへの気遣いが素晴らしいですよね
森本さん:カンモンにはカードを「手札」にするタイミングがありません。手の小さい子どもにとって、相手に見せないようにずらしてカードを持つ、という動作はとても難しいんですね。カードを全て落としたり、丸見えになってしまったりすることもある。
ですからカンモンは「めくる」だけでゲームが進行できるようにしました。カードのサイズも厚みや硬さも、実際に対象年齢(5-9歳)の子どもたちにプレイしてもらい、ベストサイズを採用しています。

さらに細かいことですが、ルールや指示は1文節で区切っています。1文節で区切ることでディスレクシア(識字障害)などの子どもでも、理解しやすくしています。
学童やフリースクールなど、異年齢が集まる場で「途中から参加したい」と思ったとき、ルールがよくわからなくて諦める子がいないように考えました。
――準備しながらルールがわかるようになっているのも便利です
森本さん:カンモンはマットの上にカードを並べて準備をするんですが、そのマットにルールも印刷しました。紙だときょうだいや小さい子が参加したときに、破ってしまうことが多発したからです(笑)。
布にすることでコストはかかりましたが、説明書がボロボロになってしまう心配がないので、いつでも確認できます。箱も薄いので片付けも簡単ですし、本棚のスキマに入るので、取り出しやすいです。

――開発の際に参考にされたゲームはありますか?
森本さん:参考にしたのはポケカ(ポケモンカード)ですね。私自身、子どもたちとポケカやデュエマ(デュエル・マスターズ)をプレイしたことがあるのですが、ルールが難しくてよくわからず(笑)、子どもにイライラされた経験があるんです。
ですからルールに関しては、小学校低学年の子どもはもちろん子どもに誘われた大人もすぐにわかるような、簡単なものにしようと思いました。
初めて参加する子でも無理なくルールがわかるようにしたこと、勝つためのオプション利用や課金をしなくても、その場ですぐ参加できることも、子どもたちが夢中で遊んでくれている理由かなと思います。
カンモンは漢字を「学ぶ」よりも「親しむ」ためのゲームでありたい
――以前は保護者からの「悪い」評価にがっかりした日もあったとか
森本さん:子どもに「なんで漢字が書けないといけないの?」と聞かれたとき、「大人になったら必要だから」とよく言いますよね。でも私自身、パソコンやスマホに囲まれている今、漢字がちゃんと書けて理解できる必要があるか? という問いにまだ自分で答えが出ていないんです。
カンモンは(公財)日本漢字能力検定協会協力の唯一のカードゲームです。
漢字をモチーフにしたゲームと聞くと、漢検に合格する、国語の成績が上がる、など学習に意味を持たせたがるのが大人ですが、カンモンは「学ぶ」よりも子どもたちが漢字を嫌いじゃなくなる、漢字に親しむためのゲームです。
その点は学習目的のゲームではないので、大人が期待する部分と違ったのかな、と思います。
全国大会の初代王者は、小学2年生
――昨年(2025年)は初の全国大会も開催されました

森本さん:全国から約500人の参加があり、1年かけて予選を勝ち抜いた猛者が決勝大会で対決しました。決勝戦は偶然にも大人VS子どもという対決になり、初代王者は小学2年生という結果になりました。
今年もすでに予選大会が開催されていますので、興味がある方はぜひ参加してください。
プレイされた方はわかると思いますが、カンモンは運も勝利の要素なので、初心者が勝ち抜ける可能性も十分あります。
カンモンで勝つことで、子どもたちにはぜひ根拠のない自信を持ってほしいですね。
カンモンを通じて漢字の成り立ちや世界観など、何かを発見して「漢字っておもしろい」と思ってもらえたらうれしいですね。
ゲームのキャラクターたちが登場するギャグ漫画「カンジモンスターズ」は月刊誌「コロコロイチバン!」でも連載中です。
決勝戦の様子はこちらから
お話を伺ったのは
神戸大学経営学部卒業後、広告会社に勤務。2014年、仲間とともに教育系ベンチャー・tanQ株式会社を創業し、代表取締役を務める。「学びをエンタメにする」を掲げ、子どもの「知りたい!やってみたい!」を育む探究型教育コンテンツを開発。遊びながら学べる「タンキュークエスト」や、漢字を題材にしたカードゲーム「カンジモンスターズ」などを手がける。全国各地で子どもたちに探究の楽しさを伝え、“モリソン”の愛称でも親しまれている。
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この記事を書いたのは
会社員生活を経て、現在はフリーライターとして活動中。小学生の母。お出かけスポットやトレンドの紹介記事、母目線で気になる情報やインタビュー記事などを執筆しています。子育てに役立つ、楽しい記事を作成することを心がけています。
