子どもがいる家庭のインテリア。年齢によって「距離感」を変えることがカギに【土橋陽子の子どもの自立を育むインテリア・レッスンvol.2 】

インテリアショップ「イデー」所属後、独立。雑貨やインテリアのデザイナーとして、親子に大ヒットした「fun pun clock(ふんぷんくろっく)」のデザインも手がけた土橋陽子さん。インテリアにまつわる記事を執筆したり、ライフスタイルのコンサルティングも行ったりと、多方面で活躍中です。

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モンテッソーリ教育を勉強中の土橋さんがつくるインテリアには、いつも「家族の笑顔」が中心にあります。私たちがかんたんに取り入れられる「家族のためのインテリア」のヒントを教えていただきます。

 子どもが安心できる、適度な「距離感」のすすめ

4人家族の土橋家ですが、テーブルには5脚椅子をそろえています。一脚だけ種類のちがう5脚めの椅子に座ると、いつもとはちがう距離と目線で子どもと向き合えるので、じっくり話を聞きたいときはこの席を活用しています。

緊張感を生む「向かい合う」姿勢。並んで座れるソファでリラックス

わが家は、私たち夫婦と高校生の息子、中学生の娘の4人家族です。それぞれの部屋もあるのですが、家にいるときはなぜかみんな、リビングにいる時間が長いのです。食事は4人そろっていただきますが、それ以外はタブレットで音楽を聴いたり、本を読んだり、楽器をいじったり、パソコンを開いたり……。同じ空間で、それぞれが好きなことを楽しんでいます。

 

たとえば、学生時代の就職活動を思い出してみてください。面接のスタイルは、ほとんどが向かい合って「逃げ場なし」の対面式ですよね。この「向かい合う」姿勢は、自然と緊張感を生むといわれています。この緊張感、実は家庭の中でも同じことが言えるのです。いつもがっつりと向かい合ってばかりでは、いくら親子でも疲れてしまいますよね。

幼いうちは、家族が側にいることが感じられる距離感を

もちろん、赤ちゃんのうちは目を離すと危険な場合があるので、大人の視線がつねに注がれる場所に子どもがいることが大切です。でも、3歳くらいになってくると「これがやりたい」「こうやってみたい」といった意欲が強く出てきます。そんな意欲を応援するのが、家の中での親子の適度な「距離」なのです。

 

子どもがブロックやお絵かきをするそばで、ママはソファで本を読んでいる……これくらいの距離感は、親子にとってとても心地がいいもの。子どもは「ママやパパがそばにいる」という大きな安心感をもって夢中で遊べます。ママも、自分の好きなことをしながら、それでもちゃんと子どもを見守ることができます。こんなふうに、子どもが遊ぶ空間に、大人がリラックスできるソファがあること。これだけでも、親子の自然な距離をつくることができるのです。

 

適度な距離のもうひとつのメリットは、親は干渉し過ぎず、ここぞというときに子どもにうれしい声かけをしてあげることができること。「わあ、できたね!」「おっ、がんばったね! もう一枚紙を出そうか?」という具合です。そばにぴったりついていると、つい頻繁に口を出してしまうものですが、ほんの少し距離があるだけで、これを防止できるのです。すると、子どもは「ちゃんと見てくれていた」「一生懸命やれた」という達成感も味わうことができます。

「子どもたちが幼児から小学生くらいの頃、リビングで遊ぶそばで、私はよく新聞を読んでいました。すると、自然と子どもたちも新聞に興味を持ち出したのです。娘は新聞を丸めて柱をつくり、新聞で壁を作って小さな“家”を作りました。写真は、お友達とそこに入り、手作りの電話でおしゃべりしているところです。息子は、当時大好きだった鉄道の話題をまとめた『鉄道新聞』作りに夢中に。この新聞、小学校でも話題になるくらいの出来でした。まさに『ほどよい距離』のサブ効果!」

子どもの体に合ったテーブルと椅子があれば、集中力もアップ

 子どもがじっくり集中できる環境には、ある程度「設定」が必要です。たとえば、体に合ったサイズのテーブルと椅子は、必ずそろえてあげたいもの。絵本を見たりお絵かきしたりと、そのテーブルと椅子が子どもにとっての安心できるひとつの居場所になります。椅子の色のバリエーションがある場合など、子どもに選ばせてあげるとより愛着が深まるでしょう。

モンテッソーリ教育では、子どもが満足して幸せそうにしているときは「見守り」、なにかを探しているときは「手助け」をして、ひとつのことに集中しているときは「話しかけず、そばにいる」という大人の姿勢を大切に考えます。

テーブルと椅子という居場所をもった子どもは、ときにはグルグルと紙にペンで丸を描いたり、ときにはコップに入れた水を別のコップに移すことを繰り返したりと、夢中になって遊ぶことでしょう。そんなとき、「テーブルに描かないでね!」「ああ、こぼしちゃう!」と、せっかくの集中を中断させたくないですよね。

そのテーブルと椅子は子どもの居場所、子どもエリアです。なにか困っていたり、探していたり、危ないことがない場合は、ママは子どものそばでママの好きなことをしながら見守ってあげましょう。

国産のブナやサワクルミなどの頑丈な木材で作られた子ども用の椅子。しっかりしていて軽いので、子どもが自分で持ち運ぶこともできます。色はほかに赤、ナチュラルの全3色。幅36×奥行30×高さ46㎝、座面の高さは27㎝。定価20,000円(税抜) オークヴィレッジ「広葉樹の森 子どもイス」 https://shop.oakv.co.jp/shopdetail/000000002521/

変形テーブルで「視線」を変えると、家族の会話が弾みます

ゆるやかなカーブがかかったテーブルは、その日の気分で好きな位置に椅子を置いても楽しい。いつもと違う角度から家族の顔を見ることができます。色は写真のナチュラルのほかにダークブラウンも。幅200× 奥行125× 高さ70 センチ。 定価¥450,000(税抜) イデー「CURVED PLYWOOD TABLE Natural」https://www.idee-online.com/shop/g/g100652/

 

毎日、夫と会話をしていますか? パパとママが楽しそうにおしゃべりをしていると、そばにいる子どもはとても安心して、幸福感に満たされます。また、子どもはパパとママの会話を誰よりもよく聞いているもの。夫婦の会話が弾むと、子どもの語彙力も自然に増えるのです。

私はよくインテリアの相談を受けるのですが、そこには「家族」が関係することが多々あります。中には「家族との会話が少ない」ことに悩む方も。そんなとき、私はよく変形のテーブルをおすすめします。「テーブルといえば四角!」。このイメージから離れてみると、視線が変わり視野もぐんと広くなるのです。

変形テーブルは、隣りに座ったり斜め前に座ったり……座る人の好みや気分に合わせて座る場所をいろいろと選べるのがいいところ。「このほうがリラックスして話せる」という位置が見つけやすいのです。「テーブルを変えただけで?」と思われるかもしれません。でも、実際に「家族の会話が増えました!」といううれしい声もたくさん届いています。

【土橋陽子の子どもの自立を育むインテリア・レッスンvol.1】我が家流インテリアのすすめ。子どもの参加を促して「壁の色」から変えてみませんか
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お話をうかがったのは…

土橋陽子|家具デザイナー

インテリアショップ「イデー」に所属後、独立。デザインや記事の執筆など、インテリアに特化した活動に加え、ライフスタイルのコンサルティングなども行う。 家族の時間に笑顔を増やすアナログ時計「funpunclock」シリーズデザイナー。仕事と並行して、モンテッソーリ教師の資格取得を目ざして、モンテッソーリ教育理論を学び直し中。

取材・構成/三宅智佳

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