インテリアショップ「イデー」所属後、独立。雑貨やインテリアのデザイナーとして、親子に大ヒットした「fun pun clock(ふんぷんくろっく)」のデザインも手がけた土橋陽子さん。インテリアにまつわる記事を執筆したり、ライフスタイルのコンサルティングも行ったりと、多方面で活躍中です。
モンテッソーリ教育を勉強中の土橋さんがつくるインテリアには、いつも「家族の笑顔」が中心にあります。そこで、私たちがかんたんに取り入れられる「家族のためのインテリア」のヒントを数回にわたって教えてもらいます。
子どもの「資料」の置き方一つでママもストレスフリーに
子どもの資料は、どこに置いていますか?
子どもの「学び欲」を刺激する、絵本や図鑑、地球儀、パズル、最近は子ども用のタブレットもあるかもしれませんね。
私は、これを子どもの大切な「資料」と考えています。どこの家庭にもある、子どもたちの資料。これは家のどこにありますか? リビング、子ども部屋……。まだ子どもが小さい場合、リビングに置いている家庭も多いかと思います。子ども用の小さな本棚に並べるなど、一か所にまとめるケースが一般的ですよね。
ただ、このときに「あるある」なのが、子どもが散らかしてそのままにしてしまったり、本などはせっかくママがきれいに背表紙を並べて収納したのに、ぐちゃぐちゃに戻っていたりすること。さらに、こどもの資料は色とりどりなので、インテリアにこだわるママなどは「うーん、ちょっとリビングの雰囲気が……仕方ないんだけど」と葛藤することもあるのではないでしょうか。つい「床にたくさん広げないで!」「ちゃんと片付けて!」と言ってしまう気持ちもよくわかります! 子どもも、せっかく夢中になっていたのを中断されては、楽しくありませんよね。
少しだけ「こもれる」コーナーを作りましょう
そこで、本棚や棚を少しだけ移動してパーテーションがわりにしてみましょう。同じ部屋の中で、別の小さなスペースを作るのです。そこにクッションをひとつでも置いてあげれば、子どもの立派な隠れ家スペースのでき上がり。子どもはそこに入って、夢中で資料を開くと思います。このスペースは、子どもを「知性」と向き合わせてあげるための工夫なのです。
このスペースを作ると、ママにもメリットがあります。隠れ家スペースなので、たとえ本棚の本の背表紙がぐちゃぐちゃになっていても、多少ものが出しっぱなしでも、ママのスペースの邪魔にはなりません。ですから、子どもの好きにさせてあげても気にならない。親子で、ストレスフリーなのです。
高さ80センチの棚があれば、子どもの資料コーナーが作れます
家具の「向き」を工夫してみる
子どもの資料コーナーづくりでいちばんおすすめなのは、高さ80㎝の本棚です。高さ80㎝というと、幼児が立ったときでも隠れるか、頭が少しのぞくくらいの高さ。動かせない家具との間に60センチほど間を空けて本棚を置くと、その間のスペースがあっという間に資料コーナーに。すると、子どもはそのコーナーにもそもそと入り込み、好きなことを始めるはずです。同じ室内にいながら、ママやパパの視線から離れて好きなことに集中しやすいのです。
スペースに余裕のない場合は、リビングの「ソファ」の背もたれの裏を子どもの資料コーナーにするのも有効です。近くにいるけれども、視線の向きが背中合わせで向かい合わないので、適度な心の距離が保てます。ソファを少しずらせばいいだけなのでお手軽です。
ほんの少しのスペースと家具の向きを工夫するだけで、子どもの資料コーナーは作れるのです。
「距離を置いて見守る」心地よさ
モンテッソーリでは、「子どもが積極的に取り組んでいるとき、大人は距離を置いて見守る」という教育理念があります。そもそも、子どもは本当に「集中」すると、どんなにうるさい場所でも集中できるもの。この資料スペースの目的は、親からの過干渉から逃れるところに本当の目的があるのです。
同じ室内でも「見られすぎない」「見えすぎない」心地よさ。ママも、子どもの姿が目に入るとつい、「それはそこじゃないよ!」など口を出してしまうものですが、こうすると「あ、なにかやっているな」くらいの気持ちで、子どもの「夢中」を邪魔せずに過ごせます。
それに、子どもは「狭い場所」が大好きですよね。わざわざ誘わなくても「なにか面白そうな場所ができた!」とすぐに興味を示します。そこに図鑑やお絵かき用のイーゼルなどを置いてあげれば……しばらく出てこないかもしれません(笑)。
少し大きくなったら、大人と資料を共有する楽しさも
わが家のリビングには大きな本棚があるのですが、そこにはおもに夫と私が資料として使ったり、読んだりする雑誌や写真集、小説がつまっています。
子どもたちが小さいときは「これは子どもにはわからないだろうな」と思っていたのですが、そんなことはありませんでした。とくに写真集などは、子どもも見やすく、大人とは異なる視点で眺めるので新鮮な感想を聞くこともできます。
もう少し大きくなってくると、親が使っている資料にも子どもは興味を抱くことでしょう。大人の本棚には、子どもの興味をひく魅力のようなものがあるのかもしれません。それを垣間見ることで、親が伝えられない、もしくは伝えていないことを感じとってくれることもあります。
また、大人と資料を共有するということは、直接話さなくても「親が考えていること」「親が興味を持っていること」がそのまま子どもに伝わるということ。わが家では、小説なども包み隠さず堂々と本棚にいれてあります。こんなふうに、子どもと資料を共有する楽しさも、ぜひ味わってください。
子どもの資料は、たとえマンガでも、こどもは必ずなにかを感じとるもの。でも、その中にぜひ「図鑑」はいれてあげたいものです。図鑑のメリットは、同じカテゴリをさらに「分類」して「ちがい」を見分ける力がつくこと。たとえば、「蝶」にもこんなにたくさん種類があって、それぞれ特徴が異なること……図鑑がひと目で教えてくれます。電車が好きな子どもなら電車の図鑑、昆虫が好きなら昆虫の図鑑……。これをそろえて「種をまく」だけで、あとは子どもが見て、考えて、育ててくれますよ!
お話をうかがったのは…
インテリアショップ「イデー」に所属後、独立。デザインや記事の執筆など、インテリアに特化した活動に加え、ライフスタイルのコンサルティングなども行う。 家族の時間に笑顔を増やすアナログ時計「funpunclock」シリーズデザイナー。仕事と並行して、モンテッソーリ教師の資格取得を目ざして、モンテッソーリ教育理論を学び直し中。
取材・構成/三宅智佳