児童虐待防止法改正で体罰禁止! 「子育てのイライラ」が増えがちな今、上手にコントロールする方法は?【アンガーマネジメント講師監修】

2020年4月より「改正児童虐待防止法」が施行されることもあり、しつけのあり方に関心が高まっています。子育てでは大人の思い通りにいかない場面も多くありますが、イライラを爆発させずに、子どもの成長に効果的なかかわり方をするためのポイントをお伝えします!

法改正にあたっては、子どもの権利を守るため、親権をもつ人が「児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」といった内容が新たに盛り込まれました。

「こうあるべき」の理想にとらわれすぎないで

理想通りにはいかないのが子育てです。おうちの方が理想にとらわれすぎると、「子どものために」という本来の目的が「自分が完璧な保護者たるために」という目的にすり替わってしまうことも少なくありません。
例えば、子どもが食事を食べてくれないとき、自分の思い描く“完璧な保護者像”とのギャップにイライラしがちですが、「子どもが栄養をとれるようにする」という本来の目的に立ち返ると、他の方法で補えばよいと思えて怒りを手放すことができます。
まずは「こうあるべき」の理想を一旦、横に置いて考えてみましょう。

おうちの方の言動が感情表現のお手本に

イライラをコントロールする方法を身につけることは、おうちの方だけでなく子どもにとっても大切なことです。おうちの方が日頃から感情的にならずに落ち着いた態度で気持ちを伝えていると、子どもはその伝え方をまねするようになります。
逆に、おうちの方が怒鳴ってばかりだと、子どもはその姿を見て「感情を伝えるにはこう表現すればいいんだ」と学び、思い通りにならないと怒鳴るという行動パターンをとることがあるため注意が必要です。
おうちの方の言動が子どもの感情表現のお手本になるので、下に挙げたポイントを意識しながら、怒らなくても効果のある伝え方・かかわり方を心がけていけるといいですね。

怒りすぎないための3つのポイント

①「理想ではないけれど許せる」の範囲を広げる

「こうあるべき」という理想通りの状態と「これは許せない」と感じる状態の間にある「理想通りではないが許せる(例:自分からやらなくても、おうちの方と一緒にやればOK)」と思う範囲を意識して広げると、必要以上に怒らずにすみます。

②イラッときたら、子どもをよく観察する

単なるミスなのか、まだできないのか、善悪の判断がつかないのか、などの原因に応じて、対処の仕方は変わります。反射的に叱らず、子どもをよく観察して、その行動の原因に合ったかかわり方をしましょう。

③「また?」「何度も言わせないで」のイライラを上乗せしない

「注意したい行動」に、「同じことをくり返す」という別のイライラが加わると、怒りが増してしまいがち。子どもは一度にいろいろなことを言われると、「怒られた」という印象だけが残って𠮟られた内容を忘れてしまうので、その行動のことだけを注意して。

今すぐできる!イライラ・怒りのコントロール法

怒りは誰にでもある感情で、それ自体は悪いものではありません。ただ、爆発させると周囲の人を傷つけてしまうおそれがあり、ためこむと自分がつらくなってしまうことも。まずは「イライラをコントロールする」という視点をもちましょう。

イラッときたら6秒間やりすごす

怒りの感情のピークは6秒といわれ、イラッとしてからの6秒をやりすごすことができれば感情的にならずにすむと考えられています。
やってはいけないのは、その場の勢いで反射的に何かを言ったりしたりすること。感情的な言動は後悔のもとです。まずは1拍おいて「子どもに何をどうしてほしいのか」を冷静に考えましょう。
子どもと一緒に6秒数えてもいいですし、子どもと手をつないで深呼吸をするのも傷つけるような言葉を避ける方法としておすすめです。

ハッピーログをつけてプラスの感情を増す

心の中のマイナスの感情がプラスの感情よりも大きくなると、ちょっとしたことでイライラしやすくなってしまいます。プラスの感情を増やせるように、今日あったいいことだけを記録する「ハッピーログ」をつけてみましょう。
「お茶がおいしかった」「子どもの寝顔がかわいかった」など、幸せを感じたことなら何を書いてもかまいません。書き続けていくと日常生活の中にある小さな幸せを実感できるようになり、子どもやおうちの方自身の長所にも目が向くようになります。

自分の気持ちが落ち着くものを用意する

「好きな音楽を聞く」「好きな香りをかぐ」「スクイーズ(握って遊ぶおもちゃ)をギュッと握る」など、気持ちが落ち着くこと・ものを見つけておくと、イライラをしずめるのに役立ちます。
ものが近くにない場面で怒りがこみあげたときは、ストレッチなどで体を動かすだけでも気持ちが切り替わりやすくなります。「まあ、いいか」「ひと休み、ひと休み」「大丈夫だよ」など、自分がホッとするフレーズを決めておき、それを唱えてイライラをやり過ごす習慣をもちましょう。

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叱る必要があるときはココに注意!

イライラをぶつけるようなかかわり方は避けつつも、身の危険があることや、他人に迷惑をかける行動はその場できちんと叱る必要があります。叱るときは、次のような点に気をつけて言葉を選びましょう。

人格は否定せずに行動だけを叱る

幼児期の子どもにとって、おうちの方は「この人の言うことはすべて正しい」と思える絶対的な存在です。「あなたはダメな子ね、悪い子ね」という叱り方をすると、言葉通りに「自分はダメな子なんだ、悪い子なんだ」と受け止めてしまうので、「それはしてはダメ」と行動だけを叱るようにしましょう。

今やってほしいことを具体的に伝える

「ちゃんと(きちんと)片づけて」といった抽象的な言い方をしても、子どもはどう行動すればよいのかをイメージできません。「使ったおもちゃはこの箱に入れて」というように、やってほしいことを具体的に伝えましょう。やってしまったことを責めるのではなく、未来の望ましい行動を伝えるのもポイントです。

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イライラ・怒りを減らすためのシーン別対処法

シーン1 まだできないのに自分で靴をはきたがる

これは成長に必要なステップで、子どもにはおうちの方を困らせようという気持ちはありません。子どもは大人と同じ速さでは動けないので、時間に余裕をもって行動し、自分でやろうとする姿勢を「ちゃんと成長しているな」「できるようになるまで待つよ」という気持ちで見守りましょう。

シーン2 歯みがきや着替えを嫌がる

大声で叱ったからといってスムーズにできるわけではありません。感情を乗せなくても指導もしつけもできます。「子どもができるようになるまでくり返し言うもの」と肝に銘じておきましょう。加えて、歯ブラシや洋服を自分で選ばせるなど、子どもがやりたくなる工夫をするのも有効です。

シーン3 公園で遊び終えても帰ろうとしない

おうちの方が急いでいると「声をかけたらすぐに帰る」ことを期待しがちですが、子どもは切り替えに時間が必要です。「あと10分」「あと5分」と早くから声をかけ、時間になったら「もっと遊びたかったね。でも約束の時間だよ。また遊ぼうね」と気持ちに寄り添いながらも、毅然とした対応を。3歳ころまでは「今日だけは特別」という対応はせず、決めたルールは徹底しましょう。

 

シーン4 遊び食べをやめない

「食事はきちんと食べるべき」という思いが強くなると、コントロールできないことに対してイライラしてしまいます。そこで、「この年代は遊び食べをするもの」と割り切って、床に新聞紙を敷くなどの食べこぼし対策をしましょう。そのうえで遊び食べの原因を観察し、食事に集中しにくいなら「何が入っている?」と食べ物に興味が向くような質問をする、飽きてしまったら食事を下げるなど、原因に応じた対策を。作ったのに食べてくれなくて悲しい、片付けが面倒、というおうちの方の感情から怒るのではなく、食べ物を粗末にしないことや食事のマナーを教えるという視点をもつと少し冷静な対応ができるでしょう。

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シーン5 お菓子やおもちゃを「買って」とダダをこねる

周囲の目が気になることから、普段よりきつく叱ったり、買い与えて済ませたいと思ったりしがちですが、そのような基準が明確でない判断は子どもにはわかりにくく、「ダダをこねれば買ってもらえる」と学びかねません。買わないと約束した日は買わないという、わかりやすいルールにしましょう。たとえ買わなくても「いいものを選んだね」と子どもを肯定する一言を添えることで、「自分が否定されたわけではない」と伝わります。

シーン6 怒られて泣いた子どもの泣き声にイライラする

「今、泣き声で自分の気持ちが刺激されているな」と自分のことを一歩引いた視点からとらえ、子どもの泣き声に触発されることなく、自分と子どもの感情に線を引く意識をもちましょう。また、子どもはおうちの方に嫌われたと思ってさらに泣いていることもあるので、「〇〇ちゃんは大好きだけど、この行動はダメだよ」と伝えましょう。

シーン7 電車やバスの中で騒ぐ

おうちの方が「公共ルールを守らせなければ」という思いから強く注意すると、子どもはさらに興奮してしまうことも。人目が気になり慌ててしまうのもわかりますが、そういう時こそ落ち着いて伝えるように心がけて。「静かに」ではなく「次の駅までお話ししないよ」といったわかりやすい表現を選ぶと、子どもも行動に移しやすいですよ。

 

記事監修

日本アンガーマネジメント協会公認講師
篠 真希

母親向けアンガーマネジメント講座などを開催。近著に『イラストでわかる 怒らずのばす育て方』(池田書店)。

『ベビーブック』2020年4月号 イラスト/ハラユキ デザイン/平野 晶 文/安永美穂 構成/童夢

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