緊急事態宣言が発令されてから2週間がたちましたが、感染者の増加に歯止めがかからない状況に不安が募る毎日です。一方、世界にさきがけて新型コロナウィルスの封じ込めに成功しているのが台湾。感染者数ゼロを達成する日も多く、その政府の対応・対策に注目が集まっています。
2年前から台湾に暮らす、2児のママに現地の様子を伝えていただきました。
目次
台湾では一般市民に行動規制はなく、学校も通常登校
夫の駐在に帯同して約2年間、台湾で暮らしています。小学3年生の長男は日本人学校に、年長の次男は現地の幼稚園に通っています。
今回の新型コロナウィルスに対する台湾政府の動きは、迅速かつ的確で「これを先手先手と言うのね」と感心することばかりでした。そんな政府の対応もあり、4/13の週には新規感染者数が「ゼロ」となった日が3回ありました。
マスクをしないとバスや電車に乗れない、百貨店に入る前に検温する、などの小さな制約はありますが、基本的に一般市民には行動規制や要請はありません。日本人学校は現在春休み延長中ですが、現地校では検温とマスク着用などの注意を払いながら、通常通りに子どもたちが登校しています。
マスク配布システム、企業への勧告~国民に寄り添った先手の対策
まず、これまでに台湾がとってきた対策の一部を紹介します。
・昨年12月、中国武漢で正体不明の肺炎が流行しているという情報を掴み、武漢からの航空機の検査を義務づけ
・その後、防疫対策司令センターを立ち上げ、マスクや防護服の生産の増強を指示
・1月下旬に中国人の入国規制を強化し、2月上旬に全面禁止に踏み切る
・春節明けの休校決定。同時に保護者に「防疫世話休暇」を認めることを発表。子どもの世話のために休暇を取ることを企業は拒否できないとした
・学校再開にあたり、マスク、アルコール、非接触式体温計を学校に配布。換気の仕方などの具体的対応策や学級閉鎖、学校閉鎖の基準を通知
・アプリで予約ができる「マスク配布システム」の構築。健康保険証を提示して実名制で受け取れる。現在は薬局だけではく、コンビニやスーパーでの受け取りも可能
・感染者や濃厚接触者、海外から帰国した人に14日間の隔離義務の徹底。隔離された人に1日あたり約3600円の補償金を支給するが、違反者には最高約360万円の罰金を科す
SARSの教訓。台湾人の意識の高さを見習う毎日
台湾で今、自由に行動できるのは、政府の対応だけでなく、台湾人ひとりひとりが高い危機意識を早い段階から持っていたことのおかげだと感じています。1月には多くの人がマスクをしていたし、消毒液を持ち歩いていました。遠出や習い事を自主的に取りやめる人もいて、通常の生活を送りながらも、街全体にピリッとした空気が漂っているのを感じました。
台湾人ママ曰く「SARSを経験しているからね」とのことで、私も子どもたちも台湾人のみなさんに影響されて、自然と当事者意識を持てるようになりました。
街中でも色々な工夫がなされています。身近なところでは、コンビニやスーパーの床にはシールが貼られ、ソーシャルディスタンスを保てるようになっています。また、マンションのエレベーターには自動で噴射される消毒液が設置され、ボタンを押す前に使えるようになっています。ボタン部分はシートを貼って覆い、1日になんども掃除担当の方が消毒をしてくれています。
学校や幼稚園、休校中の対策は?
日本人学校は3週間の休校、さらに春休みが約2週間延長に
日本人学校では、1/22〜29までの旧正月の長期休暇が明けたあと、通常通りに4日間授業があったあと、現地校との足並みをそろえる形で約3週間休校となりました。外出自粛などの制限がなかったので、学校からの宿題をこなし、外遊びをしたり、ゲームをする毎日。習い事や安親班(学童保育)は休みにはなりませんでした。その後、再び登校し、わずか31日間の3学期が終わりました。
通常なら多くの母子が日本に一時帰国する春休みですが、今年は皆帰国できませんでした。年度がわりで新たに日本から派遣される先生の、2週間の自宅検疫期間を待つため、始業式が約2週間延期され、春休みは合計6週間に! しかし、残念ながら、3月末に日本から新任の先生の派遣は時期未定の延期と発表がありました。4月の下旬に始業はできますが、しばらくは短縮授業となるようです。
徹底した感染防止策をしている現地幼稚園
次男が通う現地の幼稚園は休園はありません。ただ、園独自の感染防止策を多く施しています。例えば、日本など他国に出国した場合、他国から来た人と接触した場合は1か月登園不可(政府の措置は2週間)、園内は先生以外の大人の立ち入り禁止、給食の時間にはプラスチックのつい立をして飛沫が飛ぶのを予防することなどです。これは最近始まったことではなく、数か月前から実施されています。
登校が可能なので、オンライン授業は準備段階
現在のところ、登校、登園ができる状態なので、小学校も幼稚園もオンライン授業は始まっていません。ただ、通信機器や通信環境についてのアンケート依頼が学校や園から来ていたり、先生たちがオンライン授業の練習をする様子がSNSにアップされているので、今後状況に変化があったときのために準備が着々と進んでいるようです。現地小学校も同様との話を聞きました。
親日家の台湾。政府の迅速な対応に賞賛
親日家が多く、日本の状況を共に心配してくれる台湾人たち。台湾のニュース番組でも、連日日本の感染者数などの話題が流れています。特に志村けんさんの訃報は大々的に報じられ、追悼番組も放送されました。「子どもの頃にドリフを観て、日本が好きになったからショック」と台湾人の友人がラインをくれるほどでした。
迅速な政府の対応や機転が、市民の信頼を高めている
先日「ピンクのマスクをつけていた男の子が学校でからかわれた」という事例があったそうです。それを聞いた台湾のコロナ対策本部のメンバーが全員ピンクのマスクを着用して会見をした、というニュースがありました。
政府関係者の対応や機転が市民の信頼を得て、市民の危機感や当事者意識が政府を応援する、そんな良い循環が今、台湾にはあります。これからの不安もありますが、あたたかい気持ちを忘れずに子どもたちと「自分たちにできることをしっかりとがんばろうね」と話しています。
取材・文/suzu