新型コロナウイルスの感染拡大の影響で「これから収入が減るかもしれない」と、家計を見直す方も多いでしょう。でも「見直し方には優先順位があります」と話すのは、自身も3人の子どもを育ててきたファイナンシャル・プランナーの畠中雅子先生。家計の正しい見直し方について教えていただきました。
目次
まず見直すべきは固定費の住居費・通信費
家計の見直しというと、真っ先に食費の節約が思いつきますが、食費を削ろうとすると、どうしてもごはんやパン、麺といった炭水化物が増えてしまいます。特に家族が家にいて、3食作らなければいけないとなると、カレー、焼きそば、チャーハン、と単品で回しがち。そうすると節約したつもりでも、栄養が偏り、病気になりやすい体に。結果的に医療費がかかってしまうのです。もちろん食費の節約も大事。ただ、それが最優先事項ではないということです。
住宅ローンは、返済額ではなく返済期間の見直しを
では、家計の見直しの最優先事項は何かというと、住居費、つまり住宅ローンです。今のように、この先の減収が不安というときは、つい目先の返済額を減らしたくなりますが、返済額ではなく返済期間を縮めることに目を向けましょう。
たとえば現状、ボーナス払いをしていなくても、今の残高の約1割をボーナス払いに回せば、返済期間が4~6年程度短縮されます。4~6年も短くなれば、残高が何十万かカットに。長い目で見ると、こちらのほうがずっと節約効果が高いわけです。
固定費は、一度見直すと節約効果が長く続きます
携帯電話など通信費も、見直しのチャンスです。今はショップに行きにくい時期ですが、ネットの比較サイトで安くする方法を検討できますし、電話やネットで契約を変更できる携帯電話会社も多いはずです。
住居費や通信費といった固定費は、一度見直すと節約効果がずっと続くため、まずは優先して見直しましょう。
在宅勤務で、夫婦で話をする機会が多い今だからこそ、こういったじわじわと正しい見直しを考えることが重要です。
貯蓄性のある保険は利息ゼロで借りられる!?
貯蓄性のある保険はコロナ禍の救済措置がある商品も
固定費の見直しといえば、保険が定番ですが、今知っておいてほしいのは、掛け捨ての保険より、個人年金保険や学資保険など貯蓄性のある保険が威力を発揮するというケースもあるということ。というのは、現在、新型コロナウイルス災禍で、多くの保険会社が“契約者貸付”の利息をゼロにしているからです。
契約者貸付とは、解約返戻金の一定の範囲内でお金を貸してもらえる制度。通常、貸付金には利息がかかりますが、今は利息ゼロで、自分の保険を担保にお金が借りられるのです。貯蓄性のある保険は、ここ最近は返戻率の低さから人気が落ちていましたが、こうした仕組みがあるということを知っておいても損はないでしょう。
調理の工夫次第で光熱費も食費も節約に
固定費を見直して初めて、食費や光熱費といった「やりくり費」の見直しに着手します。
わが家もそうですが、このコロナ自粛で自炊が増えて、しょうゆ、みりん、酒、砂糖の減り方が早くなったと感じるお宅も多いのではないでしょうか。家族みんなが食べられるものということで、煮込み料理が増えているんですね。
煮込み料理が増えると、食材や調味料だけでなく、ガス代もかかります。ですから、なるべく圧力鍋などを使い、ガスを使う時間を短くするといった工夫が必要になります。
また麻婆豆腐とミートソース、肉じゃがとコロッケなど、途中まで調理方法が同じ料理を多用するのもコツです。途中までいっしょに作っておけば、光熱費を節約できるし、献立のバリエーションも増えて一石二鳥です。
食費の節約をするなら、大根、キャベツ、白菜などの野菜で、かさまししていくのもおすすめです。単品のほうが簡単で食費も安くあがりますが、冒頭にお伝えしたように健康を害する危険性があります。肉や魚といったタンパク質に、うまく野菜を組み合わせれば、量も増えて何よりも健康的。毎日の食事を工夫して、体もお財布もしっかりと締めたいですね。
財布のひもがゆるまないようにレジャー費は予算を決めて!
この時期は家にいるため、食費や光熱費が増える分、レジャー費は減っているのではないでしょうか。どこにも出かけられないので、ほぼゼロというご家庭も多いでしょう。
でも、この一時的なレジャー費ゼロ円が落とし穴。「春休みに出かけられなかったから、夏休みはパアッとどこかに行こう!」と反動で、お金をたくさん使ってしまう可能性があるからです。「今まで我慢したんだからいいよね」という気持ちになるのも仕方ありませんが、ここは冷静にレジャー予算を決めてほしいところです。
夏休みに一気に使わず、夏休みにいくら、秋の連休にいくらと、この先使えるレジャー費をうまく分散させていくとよいでしょう。
子どもが家にいる今は金銭教育のよいチャンス
家計の見直しは、まずは住居費や通信費の固定費、それから食費や光熱費のやりくり費という順番が正解。そしてレジャー費を予算化すれば、ばっちりです。
子どもが家にいるこの時期は、金銭教育をするよいタイミングです。「パパは頑張って働いているけれど、新型コロナウイルスの影響で、パパの会社の業績が悪くなったから、お給料も減って、みんなで協力しなくちゃいけないんだよ」と、その子のレベルに合わせて説明してあげましょう。
この先も感染症や金融危機、地震など何があるかわかりません。こうした危機に備えて、貯金の必要性や節約の大切さを伝えておけば、次の波が来たときには、しっかりと耐えられる親子関係になっているでしょうね。
教えていただいたのは
畠中雅子さん
ファイナンシャルプランナー。実体験に基づく的確なアドバイスが人気。多数のメディアで執筆やセミナー講師など、幅広く活躍している。2男、1女の母。最新著書に『病気にかかるお金がわかる本』(黒田尚子共著・主婦の友社)がある。
フェイスブック https://www.facebook.com/profile.php?id=100008263622632
畠中雅子のミニチュアワールド見学ブログhttp://miniatureworld.jp/
取材・構成/池田純子