毎年流行る「ウイルス性の感染症」にはいろいろな種類があります。それらの対処法・予防法などを小児科専門医の森戸やすみ先生にお聞きしました。
Q:子どもが流行している感染症にかかるのではないかと心配です。家庭でできる有効な予防法はありますか?
「感染症」ってどんな病気?
感染症とは、体に病原体が侵入して起こる病気の総称。病原体には、ウイルス、細菌、真菌(カビの 一種)、寄生虫などがあります。これからの季節に増えてくる「ヘルパンギーナ」「プール熱(咽頭結膜熱)」「手足口病」などの「夏かぜ」、そして今年大きな話題となっている「新型コロナウイルス感染症」などはウイルスによって引き起こされる感染症です。
ウイルスはどんなふうに広がる?
感染症が広がる経路は、おもに4 種類に分けられます。
①飛沫感染
せきをしたときなどにウイルスを含む唾液が飛び散り、それを吸い込む。
②接触感染
ウイルスを含む唾液などがついたところに触れ、その手で目や 鼻、口などに触れる。
③空気感染
せきをしたときなどに飛 び散ったウイルスが乾燥して空気中を漂い、それを吸い込む。
④経口感染
病原体が含まれるものを 飲んだり食べたりする、または感染した人の排泄物やおう吐したものが手を介して口から体内に入る。
④以外は、鼻やのど、目などの粘膜からウイルスが体に入ってきます。粘膜には病原体から体を守るバリア機能がありますが、うるおいが不足するとバリア機能も低下していきます。
感染症予防のためにいちばん大切なことは
予防の基本は、手洗いです。下の手順を参考に、流水と石けんでていねいに洗いましょう。外出から 戻ったとき、食事の前、排泄後には、 手洗いを習慣に。ウイルス性の感染症が流行している時期は、たくさんの子が使うおもちゃで遊んだ後などにも、 こまめに洗うようにすると安心です。
正しい手洗いの仕方
1手のひら
↓
2手の甲
↓
3指先
↓
4指の間
↓
5親指
↓
6手首
アルコール消毒は予防に有効
エンベロープ(脂質性の膜)を持つウイルスは脂質に作用するアルコールで感染力を失うので、ウイルス性の感染症の予防にはアルコール消毒が有効です。開封してからの時間や保管状況などによってアルコール濃度がかわるので、手の除菌用ならアルコー ル濃度 70 %以上を目安にしましょう。
感染予防のためにマスクは必要か
ウイルスは一般的なマスクの繊維のすき間を通り抜けられるサイズであるため、「マスクをすればウイルス性の感染症を防げる」とは言えません。 (ただし、マスクをつけていると温かく湿った空気を吸い込むことになるため、 のどの粘膜のうるおいを守る効果は期 待できます。)
マスクが必要なのは、予防したい人ではなく、すでに感染している人。目的は、せきなどをしたときに唾液や鼻水が遠くまで飛び散るのを防ぐことで す。マスクは必ず、口と鼻の両方をしっかり覆うようにつけましょう。
記事監修
森戸 やすみ 先生
一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、小児科クリニック勤務。著書に『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など。
『めばえ』2020年6月号 イラスト/原あいみ(京田クリエーション) 構成/野口久美子
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。