【未就学児の発達の悩みをサポート】保育園運営の「グローバルキッズ」が取り組む「児童発達支援事業所」とは

「職員と親子と地域に最も信頼される存在になり、子どもたちの育ちと学びの社会インフラになる」というビジョンを掲げるグローバルキッズ。首都圏を中心に現在170園以上の保育所やこども園を運営しています。同社では2019年より児童発達支援事業所「グローバルキッズAct(アクト)」をスタート。保育事業者が支援事業に参入した意図やメリットなどについて、施設開発サポート部の斎藤直之さんにお話を伺いました。

 

未就学児の発達の悩みに向き合い、子どもたちをサポートする「グローバルキッズAct(アクト)」

私たちは「子どもたちの未来のために」という企業理念のもと保育園を運営。一人ひとりを大切に、一人ひとりの発達を理解した「子ども中心にした保育」の実践をしています。各保育園では気持ちの切りかえが苦手、こだわりが強いなど、お友達との保育園での生活になじめない子どもたちが一定数在籍しています。また、保護者も言葉の出が他の子より遅れている、集中して遊べない、順番が待てないなど、自分の子の発達に関して悩み、心配を持っていて、悩み相談をうけることもあります。

保育園の保育士もそういう子どもや保護者との向き合い方、寄り添い方について日々悩んでいます。市区町村の療育センターは、発達障害の診断がついたお子さんが優先的になり、発達の悩みを抱えるお子さんは、数か月相談ができない事例もあります。こうした「発達の悩み」に対して、もっと深く関わっていきたい、寄り添っていきたいという想いから「児童発達支援事業所」を運営することになりました。

「放課後デイサービス」は飽和状態。一方で、未就学児が通える「児童発達支援事業所」はまだまだ不足

 

「児童発達支援事業所」は就学前の発達の悩み、不安を抱えるお子さんが通える施設です。就学後のお子さんが通う「放課後等デイサービス」は近年施設数が急激に増え、飽和状態といわれていますが、就学前のお子さんが通える「児童発達支援事業所」はまだまだ数が不足しています。

幼稚園、保育園での生活の中で我が子の発達について心配、困りごとがでてきて、3歳児健診の際にお住まいの区市町村から紹介されて等、利用のきっかけは様々です。お住まいの区市町村にて面談等を経て、「通所受給者証」という児童発達支援事業所を利用できる保険証のような書類が発行されます。「通所受給者証」が発行され次第、事前に契約・体験のうえ事業所と直接契約し、利用をする流れとなります。

幼稚園や保育所に通いながら、週に1~2回通所

主に3歳児以上のお子さんの利用が多く、幼稚園や保育園に通いながら、月曜日~土曜日の週1~2回・1回1時間程度、保護者の方と一緒に通所してもらいます。幼稚園降園後の夕方や、保育園登園前の午前中など、通い方はそれぞれです。職員と1人に対しお子さん1人の11での「個別」の活動、職員数名とお子さん2~4名程度の「小集団」の活動を実施しています。

 

保護者様と共に子どもの発達を

 

契約時(もしくは契約日以降)に、保護者様と一緒にお子さんの悩み事、得意なこと、発達段階を確認します。それぞれのお子さんに沿った支援計画(目標)を立て、支援計画をもとに支援を行います。グローバルキッズActでは、支援を行う指導訓練室という部屋の隣に保護者様に待機していただき、マジックミラー越しに支援の様子を見ていただきます。

支援は、ルールなどを設けた机上の遊びや、微細運動、身体を動かす遊び(トランポリンやサーキット運動等)など様々です。一定時間座って集中して遊ぶ経験、お友達とルールや順番を守って遊ぶなど、さまざまな経験をさせます。支援終了後はその日の活動の意図や、お子さんの様子を保護者様へフィードバック。環境の作り方など、家庭でもできることをお伝えして、保護者様とともにお子さんの成長に寄り添っていきたいと思います。 

3歳児以上だと、利用料は無償化の対象に

 利用料は1回あたり1万4000円から1万5000円くらいですが、受給者証があることによって、利用者は1割負担になります。また、児童発達支援事業所は幼児教育・保育の無償化の対象施設になりますので、3歳児以上のお子さんは無料です。発語が気になるなどの理由で2歳くらいから通う方もいますが、ほとんどのお子さんが3歳以上で料金はかかっていません。

 

メリットは、保育園での活動の情報を共有できること

集団と個別指導、双方の様子がわかることで、子どもの抱えている課題が見えてくる

 

個別活動の1〜2時間くらいだと、集中できたり、スムーズに活動できる子も多くいます。でも、子どもたちは普段、保育園や幼稚園などで生活している時間の方が圧倒的に長いもの。個別、少人数ではできていても、集団生活になると課題が浮き彫りになることもあります。その点、グローバルキッズの保育園に通っている子の場合は、保育園での様子を想定した支援ができる利点があります。他の園の場合は、簡単には見学しづらいですが、同じグループなので見学もスムーズです。また、Actの職員は入社前に保育園での研修を行うので、保育園での集団生活や行事の大変さ、保護者との関係性などを理解したうえで、保育園に対し現場に即したアドバイスができます。

 

今後5年間で2030施設に増やすことが目標

 

また、Actに通っていない子の場合でも、保育園の中に気になる子がいたときに、園の方から「こういう子がいるけど、どうしたらいいかな?」と相談されることがあります。Actの職員は療育の専門資格を持つスタッフが揃っているので、彼らが園に行ってみて、子どもへの関わり方を保育士にアドバイスするケースもあります。Actの職員の中には、他の事業所に在籍中に、保育園や幼稚園と連携することの必要性を感じ、その取り組みをしたくて転職してくる人もいます。Actは(2020年6月)現在、4施設ありますが、今後5年間で2030施設に増やすことを目標にしています。

Actの施設内にはボルタリングができるコーナーも。しがみつく動きは指先の器用さも育てます。

 

保育園との連携は、保護者に安心感を与えています

現在Actに通所している保護者の方にも、保育園とActとが連携して活動していることは安心感につながっているようです。療育センターは順番待ちで通わせたいけど空いていないケースが多いなか、日頃通って信頼関係が築けている保育園の、同系列の事業所に通えるのは安心できると好評です。保育園と同じ安全基準に則って作られた施設はしっかりしていますし、職員研修や教材などは共通していることも多く、保育事業者が行うメリットは多いと思います。

 

早期療育の大切さを伝えていきたい

Actの職員の中には、早期療育の重要性を感じてやってくる人もいます。大人になってからだとできることは限られるから、もっと早期にできることをやりたいと思うそうです。お子さんにとっても、保護者にとっても、早い段階で、その子の特性にあう関わり方などを学ぶことは大切です。また、「自分の興味に沿って周りと一緒に楽しむ体験を積むことは、自己肯定感を育みます。早期療育の大切さは、保育園で働く保育士たちにも、もっと伝えていきたいです。また、社会全体がそれぞれの違いを認め合いながら、みんなで支え合う生き方などを伝えていけるといいなと思っています。

 

 

お話を伺ったのは

 斎藤直之さん(グローバルキッズAct 運営サポート担当)

神奈川県出身。神奈川大学経済学部を卒業後、営業代理会社を経て、2011年グローバルキッズ入社。保育所の運営マネージャー、新規開発業務等を経て2018年から、児童発達支援事業の立ち上げを担当し、現在は施設のフォローや新規施設の立ち上げ等、児童発達支援事業に係る全般業務を担当。
取材・構成/江頭恵子

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