赤ちゃんのうつ伏せは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高まるとされていますが、筋肉の発達を助ける働きがあるとも言われています。赤ちゃんにうつ伏せの練習は必要なのでしょうか。当記事では、うつ伏せの姿勢で考えられるメリットや、うつ伏せの姿勢をするときの注意点についてご紹介します。
赤ちゃんにうつ伏せの練習は必要か?
赤ちゃんにうつ伏せの練習をさせることは、結論から言うと必要ではありません。ただし、うつ伏せ寝が落ち着く、安心するなどの理由から、うつ伏せ寝を好む赤ちゃんもいるので、普段の遊びに取り入れる感じで、うつ伏せをやってみてもいいかもしれません。
赤ちゃんがうつ伏せになりだすのは5ヶ月ごろ
赤ちゃんのうつ伏せは、練習というよりも遊びの中で行うのが良いでしょう。赤ちゃんの体調や機嫌がよければ2ヶ月くらいからうつ伏せの姿勢を始めることができます。ただし、まだ首がしっかりすわっていないため頭を持ちあげることができず、赤ちゃんによってはうつ伏せになるのを嫌がる場合もあります。そのため、遊びの中でうつ伏せの姿勢をさせたい場合は、5ヶ月ごろからが良いでしょう。この時期になると、寝返りを打てるようになるので、自分の力で自然にうつ伏せになることができるようになります。
うつ伏せ姿勢で考えられるメリット
赤ちゃんのうつ伏せは、無理に練習させる必要はありませんが、うつ伏せの姿勢には以下のようなメリットがあると考えられています。
首がすわりやすくなる
赤ちゃんをうつ伏せの姿勢にすると、頭を持ち上げようとします。まだ首がすわる前の赤ちゃんでも、顎を持ち上げようとしたり、横を向こうとします。頭を持ち上げようとする動きは、首から背中にかけての筋肉を発達させることができます。そのため、首がすわりやすくなる、寝返りのきっかけになるなどのメリットがあるとされています。
げっぷがしやすくなる
母乳やミルクを飲んでしばらくした後、うつ伏せにすることでお腹の中の空気が外に出やすくなります。うつ伏せにしてあげるとお腹が自然と圧迫されるので、背中をさすってもげっぷがでなかったり、げっぷが苦手な赤ちゃんも自然とげっぷを出すことができます。
ただし、母乳やミルクを飲んですぐの赤ちゃんは、うつ伏せにしたことで吐き戻してしまう可能性もあるため、少し時間をおいてからうつ伏せにしてあげましょう。
呼吸が楽にできるようになる
うつ伏せは、自然と胸を開くことになるので、肺を広げやすい姿勢と言えます。肺が広がることで肺の機能が鍛えられ、より深く呼吸ができるようになります。また、うつ伏せの姿勢は口を閉じるので、鼻呼吸を促すことができます。鼻呼吸が習慣化されると、感染症にかかりにくくなるなど全身の健康にもメリットがあるとされています。
運動機能が発達する
赤ちゃんをうつ伏せの姿勢にすると、仰向けで寝ていたときとは目線が変わり視界が広がります。今まで見えなかったものやおもちゃの置き場所が見えるため、触ってみたい、近くに行きたいと好奇心を刺激することになるため、体を動かすきっかけになることも。寝返りやおもちゃに近づきたいとハイハイをする、全身の運動機能を発達させることなどにつながるでしょう。
うつ伏せの姿勢にするときの注意点
うつ伏せの姿勢をする場合、どんなことに注意すればよいのでしょうか。ここからは、赤ちゃんをうつ伏せの姿勢をするときの注意点をご紹介します。
必ずママパパがそばにいる
うつ伏せの姿勢は安全に行うことが重要です。常にママやパパが一緒に見ていられる環境で行ってください。ママやパパが目を離した隙に顔が下向きになると、赤ちゃんは呼吸ができなくなってしまいます。また、ママやパパがそばにいることは赤ちゃんの安心感につながります。慣れないうつ伏せで不安にならないよう、安心してできるようにしてあげてください。
無理にやらせようとしない
うつ伏せになるには筋肉や体力を使うためが、それを嫌がる赤ちゃんもいます。無理にやらせることはストレスにつながってしまうため、嫌がる場合はうつ伏せの姿勢をさせないでください。また、うつ伏せの姿勢を始めてから苦しそうにしたり、泣いてしまったときはすぐにやめましょう。
授乳後すぐにはやらない
母乳やミルクを飲んだばかりの赤ちゃんをうつ伏せにすると、お腹が圧迫され、吐き戻してしまいます。さらに、うつ伏せで吐くと吐いたもので窒息してしまう危険性があるので、授乳後すぐのうつ伏せの姿勢は控え、落ち着かせてから行うようにしましょう。
柔らかいクッションや毛布の上ではやらない
柔らかいクッションや毛布、布団の上で練習を行うと、赤ちゃんの口を塞いでしまう危険があります。赤ちゃんの顔が埋もれてしまうような物は周りに置かないようにしましょう。また、ひも状の物は赤ちゃんの首に巻き付いてしまう可能性もあります。思わぬ事故を防ぐためにも、赤ちゃんの頭の周りや手の届く範囲に窒息の危険性がある物は置かないようにしましょう。
うつ伏せのまま眠らせない
うつ伏せの姿勢後、赤ちゃんは疲れて眠くなってしまうかもしれません。しかし、そのまま眠らせてしまうと窒息してしまう危険性も。1歳以降など寝返りがスムーズにできるようになり、苦しいときに自力で向きを変えられるようになるまでは、必ず仰向けにして眠らせましょう。
うつ伏せのまま眠ってしまうと、赤ちゃんが眠っている間に突然死してしまう乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症リスクが高まるので、十分注意してください。
うつ伏せの姿勢のやり方
うつ伏せの練習は必ず行わなければいけないものではありませんが、赤ちゃんとママパパとのコミュニケーションの一環として、遊ぶときに取り入れてみてもよいかもしれません。では、うつ伏せの姿勢は、どのように行えばよいのでしょうか。
いつからできる?
生後2~3カ月頃からうつ伏せの姿勢は可能ですが、5か月くらいまで待ってから、少しずつスタートさせるのがいいでしょう。2ヶ月頃の赤ちゃんはまだ頭をしっかりと持ちあげることができないので、すぐに疲れてしまうこともあります。無理に練習としてやらせるのではなく、5か月を過ぎたころに、普段の遊びのひとつとしてご機嫌を見つつ取り入れてあげましょう。
頻度はどれくらい?
うつ伏せの姿勢は1日1回、最初は10秒程度からで問題ありません。楽しそうであれば、時間を延ばしでも良いでしょう。慣れてきた場合でも、赤ちゃんが苦しそうではないか、嫌がっていないか、いつもと様子の違うところはないか確認してあげてください。
やり方1:ママやパパが抱っこして行う
まずは、赤ちゃんを抱っこしたまま、ママやパパが仰向けに寝転がってみてください。ママやパパと体がくっついた状態なので、赤ちゃんは安心してうつ伏せになることができます。また、遊んでいる感覚があるためか、赤ちゃんも喜んでくれるようです。このとき、ママやパパの体がくっつくことで赤ちゃんの口を塞いでいないか、苦しがっていないか、赤ちゃんの表情を見ながら注意して行いましょう。
やり方2:床の上で行う
ママやパパの抱っこでうつ伏せに慣れてきたら、床の上でもうつ伏せの姿勢で遊んでみても良いでしょう。。床の上でうつ伏せの姿勢をするには、ママやパパの片方の手で赤ちゃんの首から背中を支え、もう片方の手でお腹からお尻あたりを支えながら、「こうやって寝返りを打つんだよ」とサポートするイメージでゆっくりうつ伏せにしてください。自分で首を動かすことができず顔が下向きになった場合、横向きに動かしてあげてください。しばらくうつ伏せにしたら、無理のないタイミングで仰向けに戻してあげましょう。
やり方3:バスタオルを使って
少しずつうつ伏せができるようになったら、バスタオルを赤ちゃんの脇の下にはさんで体のバランスをとってあげましょう。
くるくると巻いて筒状にしたバスタオルを、うつ伏せの赤ちゃんの脇の下の右から左にかけて置きます。そして、赤ちゃんが自分の体を支えられる位置にひじを置き、身体のバランスを取らせます。バスタオルを使うことで、長時間うつ伏せができるようになります。ただし、危ないので赤ちゃんから目を離さないように行ってくださいね。
楽しく遊びながらうつ伏せ練習を
赤ちゃんのうつ伏せの練習は、絶対に必要なことではありません。ただ一方で、うつ伏せの姿勢をすることは、筋肉や運動機能を発達させるきっかけになるというメリットもあります。うつ伏せの姿勢は、窒息などに十分注意し、ママやパパとの遊びやコミュニケーションの一環として、安全に楽しく行いましょう。
記事監修
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。
文・構成/HugKum編集部