乳幼児突然死症候群(SIDS)とは?「赤ちゃんの原因不明の突然死」からわが子を守ろう

乳幼児の突然死は、保育施設や家庭、どこでも起こる可能性があります。

小児科医で、NPO法人「SIDS家族の会」の医学アドバイザーでもある小保内俊雅先生(東京・多摩北部医療センター)に、実際に起こったケースを紹介いただき、どのような予防策があるのかを考えます。

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは?

SIDSの定義は、1歳未満児に突然の死をもたらした症候群

突然死は生涯にわたって発生する危険があります。成人の場合、心筋梗塞・脳梗塞・くも膜下出血など原因が特定され、予防法や治療法が確立しているものが少なくありませんが、乳幼児では原因不明の突然死が多く認められています。

特に乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome。以下、SIDSと表記)は、最近ではよく知られた疾患です。2005年に改訂されたガイドラインでは、SIDSの定義を「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によっても原因が同定されない、原則として1歳未満児に突然の死をもたらした症候群」としています。

SIDSの発生率は減少の方向に

SIDSの発生率は明らかに減少していますが、1歳以上の乳幼児でも死後検査の結果、原因や死に至るメカニズムが解明できないケースがあります。たとえば、呼吸器感染症によって突然死することがよく知られています。なかでもRSウイルス感染後の突然死は、3歳未満児にまで認められています。
しかし死後検査では、死を合理的に説明できる所見がないため、1歳未満児ではSIDSと診断されることが多いのですが、同様の症例でも1歳以上児の場合は診断が異なってしまいます。その不合理を解消するために、乳幼児の予期せぬ突然死(SUDI:Sudden Unexpected Death in Infancy)と、新たな概念が提唱されるようになりました。

乳幼児の予期せぬ突然死「 SUDI(スーディ)」との違いは?

SUDIのなかのひとつがSIDS

SUDIには明確な定義はありませんが、一般的には「それまでの健康状態や病歴からまったく予期できない突然の死亡」とされ、突然死全体をさします。つまり、SUDIのなかのひとつとしてSIDSが位置づけられ、ほかの突然死例との共通点と相違点を観察することができ、死亡原因や死亡に至ったメカニズムを明らかにできると考えられています。

 

 

SUDIによる死亡事案から見えてくるお昼寝中の注意点

事例1:おくるみ(スワドリング)で保育園のお昼寝中に起こった事案[4か月女の子]

死亡に至った経緯

・女児は前日から便が緩く下痢気味でした。
・登園時の体温は平熱でふだんと変わらず機嫌も悪くありませんでした。
・授乳時の様子もふだんと変わらず、飲んだ量もいつもと変わりませんでした。
・園ではお昼寝中に寝つきをよくするため、おくるみで体を包むようにして寝かしています。
当日も同じようにして眠りにつきました。
・お昼寝の1時間後、顔色が悪く、大量に汗を出している状態で発見されました。
・ただちに救急搬送されましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。

・起こったときの経過

1 登園時、保育者が女児の検温をして平熱であること、機嫌がよいことを確かめる。

2 ひとりの保育者が授乳し、もうひとりの保育者が様子をチェックしてふだんと変わらないので「だいじょうぶね」と話し合う。

3 保育者が女の子におくるみをつける。隣のベビーベッドではすでにおくるみを着せられた子どもが寝ている。

4 1時間後、担当保育者が女の子の顔色が悪く、大量に汗をかいている姿に気づく。急いで救急車を呼びに職員室へ。

医師のチェックポイント

脱水症状の危険性を高めたスワドリング

本事例では、前日から下痢気味であったことから脱水症状に陥りやすい危険が察知されます。このような状態の子どもを温めすぎてしまうと、生命の危機にさらされてしまいます。
そのひとつの要因となったのが、園で使っているおくるみだといえます。おくるみは、海外ではスワドリングと呼ばれ、乳児を寝かせるときに使われる寝具のひとつです。18世紀ごろから世界中で広く使われています。
赤ちゃんは、胎児期には子宮壁に包まれています。ところが出生後は、そのように包まれるものがなくなるため、おくるみが子宮壁の代わりをして安心して眠ることができると考えられています。たとえばヨーロッパの調査では、スワドリングをされている子どもに突然死の発症が抑えられている、という報告があります。それはスワドリングで寝かせるとき、基本的に仰向けになるからです。さらに、寝返りをしにくくさせるとも考えられています。

スワドリング中でも起こる寝返り

その一方で、スワドリング中の突然死の22症例の報告もあります。そのなかで15名がうつ伏せ寝で発見され、そのうち1名を除けば、就寝時は仰向けで寝かされていました。スワドリングは寝返りをしにくくすると思われていても、寝返りをしてしまうことがあるのです。
そして寝返った場合、上肢が布できつく覆われているため、首を回転させて息をする姿勢をとりにくくしてしまうと考えられます。その結果、窒息による死亡事案の危険性が高まるのでしょう。また、報告のなかの1名は布が顔と首のまわりを覆ってしまったことによる窒息死と診断されています。スワドリングは正しく使うことが肝心です。
また別の1名は、非常に体温が高い状態で発見され、温めすぎが突然死の誘因になったと考えられています。安全性を確保するためには、スワドリングの布の材質を慎重に選ぶことも重要です。さらに2名は、柔らかいベッドに寝かされたことによる窒息と診断されています。これらの報告から、スワドリングはすべてにおいて安全というわけではありません。

スワドリングの材質やベッドなど保育・育児環境を整える

スワドリングを使ったことのない乳児が使用するときは、危険が伴うことを認識する必要があります。スワドリングに慣れていない乳児の場合、就寝時間が長くなる一方で、目覚めが悪くなるという調査結果があります。これは、乳児は新しい環境に適応することが苦手であり、環境変化は突然死の危険因子であることを示唆しています。
ご家庭で新たにスワドリングを始めようとするとき、十分に観察ができる環境を整えて始めることが重要です。お昼寝の間は、注意深く子どもたちを見守ることが求められます。

事例2:うつ伏せ寝で心肺停止[1歳4か月男の子]

死亡に至った経緯
・当日、男児は体調が悪くうつ伏せが一番寝やすかったようで、保護者もお昼寝を優先させようとうつ伏せ寝をさせました。
・しばらくして様子を見てみたら、男の子がぐったりしている姿を発見します。
・保護者は、男の子は寝返りができるので、うつ伏せで寝ていても問題はないと認識していました。

・起こった時の経過

1 保護者は仰向けで寝かしつけようとするが、子どもがむずかって寝つかない。

2 うつ伏せにすると落ち着いて寝たので、保育者はそのまま寝かしつけた。

3 15分後、保育者が男児の顔をのぞいたところ異常はなかった。

4 45分後様子を見に行くと、うつ伏せ寝のままでぐったりしている男の子を発見する。保育者は急いで救急車を呼んだ。

医師のチェックポイント

1歳以上でもつ伏せ寝で突然死の危険はある

うつ伏せ寝が危険なことは周知のとおりです。ここで注目してもらいたいのは、1歳を超えれば大丈夫だという誤解があったことです。たしかに1歳を超えると、突然死に陥る子どもの数は極端に減少します。同時に、寝返りをしてうつ伏せになる子どもの数も圧倒的に多くなります。
しかし本事例のように、体調が悪いなどの要因が加わると、1歳を超えても突然死を誘発してしまうことがあるのです。たとえば、てんかんに伴う突然死の研究では、成人になってもうつ伏せが突然死を誘発する危険因子とされています。
さらに注目していただきたいのは、お昼寝の間、何度か子どもの様子を見ていたにもかかわらず、事案が発生してしまうことです。単に無呼吸だけでは、この短時間では死亡に至りません。体調が悪いときは、致死性の不整脈などさまざまなメカニズムが働いている可能性があることが示されています。

呼吸だけでなく顔色のチェックも必須

生後4か月ごろまでは、生理的に無呼吸があります。これまでの研究では、無呼吸になったときに目覚める機能が鈍ると、無呼吸から呼吸再開が遅れて死に至ると考えられてきました。
ところが、本事例を検証してみると、呼吸チェックだけでは十分ではない可能性があります。しかし、脈拍のチェックなどは現実的ではありません。そこで、無呼吸も循環の異常も同時に察知することが可能な顔色のチェックを行う必要があります。そのためにも仰向けで寝かせ、寝具で顔が覆われないようにすることが重要です。

危険因子を知ってしっかり予防 !「乳幼児突然死症候群」発症の4大原因

1年齢 3歳までは突然死の危険が

お昼寝中の突然死は3歳未満児で発症が認められています。発症数は6か月未満児がもっとも多く、年齢が進むにつれて発症頻度は減少していますが、3歳までは危険があると考えて対応する必要があります。

2感染 RSウィルス感染症に要注意

子どもの体調不良でもっとも多いのが呼吸器症状です。なかでもRSウイルス感染は、一般成人にとっては軽い鼻かぜ程度ですが、乳幼児と老人は重症化し突然死の要因にもなります。

3寝かせ方 うつ伏せ寝にならないように

生後5か月ごろになると寝返りをしてうつ伏せができるようになります。寝返りができれば、再び仰向けになれるから大丈夫だという考え方があります。しかし、1歳以上児でも体調不良が重なってうつ伏せ状態で発見された突然死の事例があります。

4子どもの体調 鼻水や咳症状をあなどらない

昨年、RSウイルス感染の重症化を予防する薬を取り扱っているアッヴィ合同会社が、保育施設を利用している1030名の保護者を対象にしたアンケート調査を行いました。その結果、50%以上の保護者が、子どもの体調がすぐれないときに登園させたことがあると答えています。
さらに、RSウイルスの初期症状である鼻水では70%以上、咳でも50%以上の保護者が登園させていると答えています(図3)。突然死や無呼吸の事案では、感染初期のケースが認められているので、保護者は子どもの体調に十分配慮する必要があります。

図3)体調不良でも保育施設を利用したときの症状 アッヴィ合同会社(2015年7月)乳幼児がかかりやすい感染症と両親の就労に関するオンライン調査レポート。2歳以下の乳幼児をもつ父母1030名(有効回答数 586名)複数回答あり。

家庭に潜む乳幼児の突然死の危険とは?

保護者や兄弟による添い寝、寝ながらの授乳は危険な場合も

家庭でも保護者と乳幼児の添い寝が問題にされています。ただ、添い寝者の気配があることで子どもが眠りすぎにならないため、無呼吸状態から素早く呼吸を再開でき、突然死の予防効果があるとも考えられています。その一方で寝ながら授乳する添え乳をすると、子どもの鼻孔部をふさいでしまう危険があるという見方もあります。
また、保護者が飲酒などで通常の意識状態でないときや、ベッドではなくソファなどで添い寝をする場合は、危険だと考えられています。

さらに、子ども同士の添い寝はたいへん危険です。特に幼児と寝返りを打つようになった乳児の場合、うつ伏せになった下の子の上に上の子が乗ってしまうこともあるため、兄弟だけで一緒の寝具に寝かせることは避けるべきです。寝返りをしたことがない乳児でも上に乗られ、鼻孔部をふさがれてしまう危険はあるので、複数の子どもを同時に寝かせる場合は別々の寝具を使用することが必須です。

 

気をつけたい! 子どもの睡眠環境のチェックリスト

上記の事例から、家庭でのお子さんの睡眠環境について、もう一度チェックをして、安全な睡眠時間を守りましょう。

check1:うつ伏せ寝になっていませんか?

仰向けに寝かしつけても、寝返りをしてうつ伏せになる可能性があります。睡眠時はできるだけ近くで見守りましょう。1歳以上になっても、体調によってはうつ伏せ状態は危険です。

check2:同じベッドに子どもを添い寝させていませんか?

まだ寝返りをしたことがなくても、初めて寝返りをする可能性があります。特に1歳未満児の場合は、ベッドに複数人寝かせないようにしましょう。

check3:柔らかいベッドに寝かせていませんか?

寝返りを打ってうつ伏せになったとき、ベッドや敷き布団が柔らかいと窒息状態になります。適度な硬さが必要です。

check4:子どもの体格に合った寝具を使用していますか?

掛け布が大きすぎると、寝返りを打ちながら掛け布が顔を覆ってしまうことが考えられます。またスワドリングの場合も、体格に合わせてきっちり巻くことが大切です。

check5:子どもを温めすぎていませんか?

乳児は暑くても布団をはがすことができません。特に体調がすぐれなかったり、夏季には暑がっていないかを注意深くチェックし、脱水症状にならないように気をつけましょう。

 

 

監修/小保内俊雅先生(東京・多摩北部医療センター 小児科)
千葉大学医学部卒業後、愛育病院新生児科、国立精神神経センター神経研究所、東京女子医大母子総合医療センター新生児科を経て現在に至る。この間、「ドイツにおける乳幼児突然死症候群研究制度とその運用および問題点」を研究。NPO法人「SIDS家族の会」の医学アドバイザーでもある。

 

構成/佐々木美幸 イラスト/上島愛子 出典/『0.1.2歳児の保育』2016年夏号 再構成/HugKum編集部
この記事は保育者向けに出版された内容を、保護者向けに再構成したものです。

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