普段、何気なく使っている電気が、どこから来るのかを考えたことはありますか?私たちの暮らしを支えるエネルギーの在り方、使い方に意識を向けることが、子どもたちが生きる未来の社会を変えていきます。サステナブル(持続可能)な循環型社会を探求する、武蔵野大学環境システム学科のオサム先生(明石修准教授)と明石ラボの学生たちと、新電力会社「みんな電力」を訪ねました。
自然エネルギーの電力を 〝顔の見える生産者〞で選ぶ時代に !?
これからの「地球の暮らし方」を考えるうえで欠かせないテーマのひとつにエネルギーがあります。3・11の東日本大震災後、電力に対する関心が高まりましたが、忙しい毎日に追われなかなか意識を向けられない、という人も多いかもしれません。
武蔵野大学のオサム先生は、自宅の電気を自然エネルギーに変えたいと思い、2年ほど前、電力会社を「みんな電力」に切り替えました。選んだ理由は「顔の見える生産者というコンセプトに共感したから」。顔が見える生産者って、どういうこと?その仕組みや取り組みをうかがいました。
自然エネルギーの電気を使えば家からのCO2 を半分にできる
——まずは、自然エネルギーの現状と、なぜ今、それが大事なのかを教えてください。
みんな電力(以下、みん電)自然エネルギーとは、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱など自然を利用してつくられる電力のことで、発電時にCO2を出さないため、地球温暖化対策に有効だとされています。ここ最近、個人も企業も、自然エネルギーに切り替える動きが増えてきています。実は、家庭から出るCO2の約半数が電気によるものです。今、家庭の電力を切り替えることは、地球の未来の姿に影響すると考えられます。
みんな電力では、環境を考慮したサステナブル(持続可能)な電力の生産者のプロフィールを紹介。好きな発電所に、電気代から100円を「応援金」として寄付することができる。
——「みんな電力」の仕組みは、どうなっているのですか?
みん電 私たちは、日本各地の自然エネルギー発電所と契約をしている小売電気事業者です。契約している発電所の電力を、みんな電力を通して供給しています。また、顔の見える発電所とのつながりを実感していただきたく、電気料金の中から毎月100円を応援金としてお好きな発電所に届けることもできます。応援することで、自然エネルギーの普及に貢献することができます。
「みんな電力」の仕組み。電気の質と送配電は今までと変わらず、電気料金は、みんな電力の契約発電所へ届く。
——オーガニック野菜の生産者さんから、道の駅などで野菜を買うようなイメージでしょうか?
みん電 そうですね、発電所というより電力の生産者さん。ホームページでは、生産者の方たちをご紹介しています。とはいえ、電気は目に見えないものですし、野菜のように直販ができません。自分の電気料金が、どこに支払われているのか納得していただくために、超明細というサービスを始めました。電気料金の行き先を1円単位でお知らせする仕組みで、ご好評をいただいています。
料金の内訳が明快な「超明細」のサービス。お金がどこへいくら流れていくかがわかると、見えない電気が"見えて"くる。
——生産者を訪ねるツアーなども実施していますよね?
みん電 はい、発電所の見学ツアーは、ご家族連れでの参加も多く、皆さんに喜んでいただいています。現在は、コロナの影響でオンラインでの見学会を開催しています。
電力生産者を訪ねる発電所ツアー(オンライン見学会も実施)やイベントなど、電力を介したコミュニケーションが特徴的。
——エネルギーについて、もっと自分ごととして意識をするには、どうしたらいいと思いますか?
みん電 今は自分でエネルギーを選べる時代です。子育てで忙しくても、家庭の電力を自然エネルギーに変えるだけで、環境に貢献することができます。未来を生きる子どもたちに「あのとき、なぜ何もしなかったの?」と言われないための第一歩になるのではないでしょうか。そして、この選択が、「うちの電気はどこで誰が作っているんだろうね?」など、エネルギーや環境に関する会話のきっかけになるといいですね。
電力×ファッション!? 異業種とのコラボで広がるつながり
「みんな電力」は、「顔が見える電力™」というコンセプトだけでなく、異業種とのコラボにも注目が集まっています。たとえば、2019年の秋に実施した、ファッション業界とのキャンペーン。電力会社とファッション!? という異例の組み合わせですが、なんと、ビームスジャパンで、電気の店頭販売を行ったのです。セレクトショップであるビームスが選んだ3つの発電所とその地域の特産品を同時に販売。店頭で、1000 円分の”でんきのカード”を購入し、みんな電力と契約をすると、初月度から3000円分の電気料金が差し引かれるお得な仕組みです。これからも、電気を介したおもしろいつながりが生まれそうです。
2019年の秋にBEAMS JAPANの店頭で電気を販売。電気は「でんきのカード」で購入。
記事監修
明石修准教授(オサム先生)
武蔵野大学環境システム学科准教授。主宰する「明石ラボ」では、人と自然が共生したサステナブルで循環型の社会はどのように実現できるのか、について日々、学生たちと研究と実践を行っている。専門分野は、自然エネルギーや持続可能な食と農(パーマカルチャー)、モノの消費と循環経済など。 https://akashi-lab.com/
「親子で学ぶSDGs」は『小学一年生』別冊HugKumにて「21世紀的地球の暮らし方」のタイトルで連載中です。
記事監修
1925年の創刊以来、豊かな世の中の実現を目指し、子どもの健やかな成長をサポートしてきた児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターに関わっていただき、子ども達各々が自身の無限の可能性に気づき、各々の才能を伸ばすきっかけとなる誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載しています。
『小学一年生』2020年9月号 別冊HugKum 構成・文/神﨑典子 写真提供/みんな電力 https://minden.co.jp/