小学生時代に「キャリア教育」を意識させるには。Vol.3は「お手伝い」で身につくこんなチカラ

前回の記事では、キャリア教育とは何か?他者との関わり方や自立心を養うために幼児期に親ができる関わりをお伝えしました。今回は児童期に育みたいキャリア教育、特に「はたらく」ことについて、日常の子どもたちの生活とどうリンクさせていくかを紹介していきます。

普段の生活で親が意識できる子どもの「キャリア教育」のススメ。 Vol.2まずは幼児期・児童期の声かけから
前回のVol.1でキャリア教育とは、「人との関わりから役割を見つけ、子どもが自立し、より良く生きるための教育」とお伝えしました。今回は、その...

「はたらく」とはどういうこと?を考えてみる

「はたらく」というと、子どもたちにはまだ先に思えるかもしれません。ですが、「はたらく=お金を稼ぐ」という「労働」の観点だけではなく、「誰かの役に立つこと」という視点で考えると、児童期の子どもにも十分に伝えていけるでしょう。

「マズローの欲求5段階説」を聞いたことがある方も多いと思いますが、人は生理的な欲求、安全欲求の次に「誰かの役に立ちたい、受け入れられたい」という社会的な欲求を持っています。ぜひ子どもにも「人の役に立ち、誰かに受け入れられる」社会的な喜びも味わってほしいですよね。

 

お手伝いを通して、子どもの「自己有用感」「共感力」を育む

前回の「普段の生活で親が意識できる子どもの「キャリア教育」のススメ。~Vol.2まずは幼児期・児童期の声かけから」でも書きましたが、お手伝いは一番身近な「はたらく」です。始めは「できること」を役割として与えるお手伝いでも、成長とともに

●「続けられること」(例:毎回食べたお皿を片付けるなど)

●「興味があることに通じていること」(例:植物に興味があるなら、植木の水やりなど)

●「やってみたいと思えること」(例:パソコンから必要な資料を出力してもらうなど)

を意識して、子どもの気持ちも聞きながら、都度調整していくと良いでしょう。

また、親が体調不良のときや忙しいときに子どもに協力を頼んでみると、案外難しいことも喜んでやってくれたり、いつも面倒臭がることも進んで引き受けてくれたりします。きっと、誰かの役に立ちたいという思いや、親の大変さ、しんどさに共感してくれるのでしょう。やってもらったら、ぜひ感謝の気持ちと家族の役に立っていることを伝えて、自己有用感や共感といった「他者の存在があって生まれる感情」を育てていきたいですね。

 

児童期に意識したい子どもへの関わり

この時期は、誰かの役に立つことや共感できる力を育みながら、世の中の仕事や、自分の将来の夢も考えられる働きかけすることをおすすめします。

わが家では以下のようなことを心がけて関わっています。

 低学年頃

息子がひとりでの登校を渋るときに通学路の途中まで送っているのですが、朝、街を歩いているだけでも、多くの仕事に出合えます。

「いろいろな大人ががんばっているんだね」

通学路の安全を守ってくれている地域の人、工事現場の人、コンビニエンスストアの店員、トラックやタクシーの運転手、ゴミ収集の人など、世の中には有償無償、いろいろな仕事があることを伝えられます。誰かのためにはたらいている大人がいっぱいいることを伝え、例えば「ゴミ収集の人は、住んでいる街をキレイにしてくれて、ありがたいよね。」というように、自分たちが恩恵を受けていることを言語化して伝えています。

「やってもらってありがたいね」という気持ちや、「はたらく人がいるから安心して暮らせる」などを伝えることで、自然とはたらく人に敬意を持てるのではないかと考えます。

中学年頃

小学校で4年生のときに1/2成人式というイベントを行う学校があり、そこでは「将来の夢」を発表し合うと聞いたことがあります。そのときに語られる子どもの夢が現実的すぎたりすると、夢が小さく思えてがっかりしてしまうパパママもいるかもしれませんが、なれる、なれないよりも、子どもが「なりたい」と言える夢を持っていること自体が素晴らしいことです。どんな夢でも、ありのままを受け止めてあげられるようになりたいですね。

「どうしたらできそう?」と問いかける

わが家では、夢ややりたいと言って始めたことで、もし壁にぶつかることがあったら「できない」「なれない」と言わせず、「どうすればなれ(でき)そうか?」を問いかけています。

「わかんない」と言われてしまうときもありますが、「問う」ことで、本人の心の動きを促し、思考停止にならず、子どもなりに考えられるように声掛けをしています。

高学年頃

子どもが「はたらく」を垣間見られるのは、家庭ではパパママの仕事の話を聞くときだと思います。仕事によっては、説明が難しかったり、守秘義務があったり、「子どもに話してもね」と思うときもあるかもしれませんが、「ママ、今日仕事でこんなことがあってね」など、可能な範囲で嬉しかった話や笑った話、頑張ったこと、悔しかったことなど話してみると、家庭とはまた違う、外の世界のパパママの姿を知ることができ、子どもも今までとは違った目で親を見てくれるようになり、新たな親子関係を築くことができます。

子どもに学校の話を聞いたら、親も仕事の話をしてみる

子どもに学校の話を聞いたら、親も日常的に仕事の話を子どもに聞かせてみてはどうでしょうか。せっかく話してもなかなか話に乗ってくれないことがあったとしても、昨今はコロナ禍で在宅勤務の方も増え「パソコンの前で打ち合わせ(仕事)をしているパパママは、いつもと違うな」など、案外良く見て聞いている子も多いものです。親のはたらく姿を少しでも知れることで、「仕事って大変そうだけど楽しそうだな」「仕事の話をするお父さんお母さんは、イキイキしているな」など、「はたらくことは楽しいこと」がこの年代から伝われば、将来社会に出る喜びや大変さ、意味などを前向きに受け止めて立ち向かっていけるのではないでしょうか。

 

適切な「問い」を立て、「共感力」を育もう

いかがでしたか?児童期の子どもは、だんだんと理想(夢)と現実がわかってくる頃だと思います。今どんな理想や夢があって、なぜそうなりたくて、どうすればそれに近づけそうかをまずは大人が問いかけ、本人の思考を促すことが大切です。そうすることで子ども自身が自分を知り、進みたい方向を都度選びながら切り拓いていけるようになるのではないでしょうか。

また、自己有用感や共感といった「他者の存在があって生まれる感情」が育まれることで、はたらく人への敬意や、はたらくことは誰かの役に立っていることに気がつくことができるようになるでしょう。

自分を知り、他者を知ることで、子ども自身もポジティブに社会に羽ばたける大人になっていってもらえたら嬉しいですよね。

文/かつまたけいこ

大手情報サービス企業を卒業して早5年半。国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得し、現在は大学での就活支援、ライター、情報教育支援など数足のわらじを履いて生きています。中1娘、小2息子の二児の母。

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