普段の生活で親が意識できる子どもの「キャリア教育」のススメ。 Vol.2まずは幼児期・児童期の声かけから

前回のVol.1でキャリア教育とは、「人との関わりから役割を見つけ、子どもが自立し、より良く生きるための教育」とお伝えしました。今回は、そのために親は子どもをどう育めば良いか、他者との関わり方のポイントや、自立心を養う声掛けを普段の生活にどのように取り入れていけるかを考えてみたいと思います。

まずは親が「どんな大人に育ってほしいか?」を考える

お子さんが誕生したとき、皆さんは何を願っていましたか?毎日忙しく過ぎて忘れてしまったかもしれませんが、きっと心に描いた夢や未来があったと思います。

まずはそれを思い出して、「どんな大人になってほしいか?」子どもへの願いや子育てのビジョンを12つ決めてみると良いと思います。「自立した人に」「相手の気持ちを思いやれる」「努力ができる」など、何でも良いでしょう。

もちろん、親の理想を子どもに押し付けたり、子どもを変えようとすることではありません。ですが、ビジョンがあることで、パパママ自身が子育てで困ったり悩んだりしたときに「どうしたらそのビジョンに近づけるか?」「そもそもなぜこのビジョンにしたのか?」など、子どもとの関わりを都度考えることができるように思います。

“キャリア”という言葉を広く捉えるという話をしましたが、広いゆえにどこに舵を切って良いのかわからなくなることもあります。特に、子育ては長いものです。そんなときの「立ち返りポイント」として考えることで、ブレずに自身のあり方や親としてのキャリアを積んでいくことができるのではないでしょうか?

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普段の生活で子どもへの関わりを意識して

ビジョンを軸にし、ブレないことを意識することを前提に、幼児期の普段の生活において、「人との関わりから役割を見つけ、子どもが自立し、より良く生きるための教育」を意識できそうかという話をしたいと思います。

 

小学生でのキャリア教育は、低学年では、下記のねらいを意識して実施されているようです。

・身近で働く人々の様子が分かり,興味・関心を持つ。

・家の手伝いや割り当てられた仕事・役割の必要性が分かる。

・作業の準備や片づけをする。

・決められた時間やきまりを守ろうとする。

・自分の好きなもの,大切なものを持つ。

・学校でしてよいことと悪いことがあることが分かる。

・自分のことは自分で行おうとする。

(※国立教育政策研究所生徒指導研究センター「職業観・勤労観をはぐくむ学習プログラムの枠組み(例)」より抜粋)

 

どうでしょう?規範的なことはまだ幼児期は難しいとしても、徐々に大切にしていってもらいたいねらいが多くありませんか?

以下では、このねらいと幼児期の「子どもあるある」にリンクさせていきたいと思います。

 1~3歳頃

2分に1回「ねぇ、ママ(パパ)~」「見て見て~」「見ててね」攻撃

「ねぇ、ママ(パパ)~?」ってよく話してくれる子、自分を認めてほしくて「見て見て~」とアピールして来る子も多いと思います。親は家事や仕事がはかどらなくて疲れることもありますが、誰かに見せたいと思う「自分の好きなもの、大切なもの」がある気持ちはぜひ褒めてあげたいですね。

そういう子には「うんうん」「へー!」「それでそれで?」などなるべく相づちを多く打って話を引き出したり、「〇〇なんだね!」「さっきもがんばってたね」と受け止めることで、聞いてもらえた満足感や安心感を与えます。「これはなぁに?」「さっき言ってたことはこれ?」など質問をして「あなたに注目しているよ、関心あるよ」と伝えるのも手です。

「もぅいっかい!」の無限ループ

小さい頃は読み聞かせの絵本を読み終えるたびに「もぅいっかい!」とお願いされ、無限読み聞かせになることも多いですよね。わが家も今思い返せば可愛らしく温かい思い出ですが、当時は「早く寝てほしい」ばかりが先立っていました。

そこで考えたのは、読みたい本と読む回数を先に子どもに決めさせ、それをOKとしたら必ず守ること、夜遅いときに読みたい本が長そうだったら、「今日は時間的に難しいから、別の本か、切りが良いところまで読むのでいい?」など交渉をし、親が一方的に約束を決めずに、妥協点を探していました。お互いですり合わせた約束を大人が実行することで、子どもも「決められたことを守ろうとする」気持ちが芽生えるようになると思います。

なぜ最初に本人に決めさせるようにするのかは、些細なことですが理由があります。「自分で決めて、それが実現された」経験を得ることで、希望を言って受け止めてもらえたという充実感が生まれるからです。

 

小さいうちは絵本だとしても、ゆくゆくは大きな決断をするようになっていきます。自分で決めたことであれば、結果がうまく行けば自信や自己肯定感が育まれ、失敗しても人のせいにせず「仕方がない」と納得して、次はどうするか考える心が育つのではないでしょうか?

46歳頃

ママは「牛乳」ではありません!

牛乳に限らず単語で要求する子は意外と多いと思います。「自分のことは自分で行う」ことはもちろん大切ですが、子どもが自分で行うために、誰かにお願いする場面もまだまだありますよね。そんなとき、単語でお願いする子はどうでしょう?

大人になってから単語で人と会話をすることはあり得ないので、わが家ではあえて察しの悪い親になり「ママは牛乳じゃないよー。牛乳がどうしたの?」と聞き返しています。

「牛乳ください」「お菓子取って」など自分のしてほしいことを言葉にして伝えることで、相手に齟齬なくお願いができ、そこで初めて、自分のことを自分で行えるようになっていくのだと思います。

ヒーローになりたい

「家の手伝いや割り当てられた仕事・役割の必要性が分かる」これは、幼児でも少しずつできることをお願いしていけると良いと思います。わが家の場合は、今でもその年齢でできそうなお手伝いをお願いしています。

気分が乗らなくて渋々やる日も多々ありますが…やってくれたら「ありがとう!ママを助けてくれて!」と大げさに感謝すると、男の子は特にまんざらでもなさそうでした。

小さいうちは時間が掛かるし、親がやったほうが早いしキレイ、とつい思ってしまいますが、お手伝いを通じて、自己有用感、達成感、自信など育まれるので、させない手はないと思います。

 

自分で決めることが生きる力を育む

いかがでしたか?皆さんも普段の子育てで意識されていることも多かったのではないかと思います。特に「自分で決める」経験が大切であると私は思っています。

 

私はいくつかの大学で就活相談やメンターをしていますが、よく聞く話が「親は実家の方に帰ってきてほしいと言うが、自分はどうしようか迷っている」という相談です。本人の気持ちを聴き、一緒に話を整理しますが、「最終的には、親御さんではなくあなた自身で決めると後悔ないと思うよ」と伝えています。

その後、自分で考え抜いて、決めて、親としっかり話し合えたり、納得してもらえた後の彼(彼女)たちの就活への取り組みは、ぐっと主体性のあるものに変わっていくのです。(心なしか、顔つきも変わります)

わが子が自立の直前に、自分で道を決めて羽ばたける子どもになってくれたら、きっと嬉しく、素敵な子育てのゴールだろうなと思います。

 

文/かつまたけいこ

大手情報サービス企業を卒業して早5年半。国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得し、現在は大学での就活支援、ライター、情報教育支援など数足のわらじを履いて生きています。中1娘、小2息子の二児の母。

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