海の「満ち潮」「引き潮」は、なぜ起こるのかご存知ですか? 海の近くに住んでいても、潮の満ち引きが起こる理由について知らない人は意外と多いのではないでしょうか。
この記事では、満潮とはなにか、なぜ海面が上下する「潮汐(ちょうせき)」が起こるのかなどを解説します。さらに潮汐を利用してできることや、潮汐の情報を知ることができるサイトや資料もご紹介します。
「満潮って何?」と子どもに聞かれたら答えられる?
「満潮(まんちょう)」についてお子さんに質問されたら、正しく説明できますか? まず、満潮とは何かを見ていきましょう。
満潮とは
「満潮(まんちょう)」とはどういう現象なのか。また満潮を引き起こす「潮汐(ちょうせき)」とは何かを説明します。
海面は半日周期でゆっくりと上下
海面の高さ(潮位)は、約半日の周期でゆっくりと上下しています。これを「潮汐(ちょうせき)」と呼びます。約半日の周期なので、海面の高さが1日のなかで、一番高くなるとき、一番低くなるときが2回ずつあります。海面の高さは一定ではなく、毎日、ゆっくりとしたリズムで変化しているのです。
満潮:海面が一番高くなった状態
海面の高さが毎日、ゆっくりと上下するなかで、海面が一番高くなった状態を「満潮」と呼びます。海岸で考えると、1日の中で、波が最も陸まで上がってきているときです。
干潮:海面が一番低くなった状態
満潮とは反対に、海面の高さが一番低くなっている状態が「干潮」です。1日の中で、波が最も上がってこないときです。
潮汐とは
潮汐(ちょうせき)について、詳しく見ていきましょう。読み方も特長的です。「潮汐力」「潮汐ロック」などの用語についても説明します。
「潮汐」の読み方
「潮汐」は「ちょうせき」と読みます。「しおせき」ではありません。先ほど説明したように、海面の高さ(潮位)が、約半日の周期でゆっくりと上下することをいいます。
潮汐が起きる理由
潮汐が起きる理由には、月が関係しています。月と地球の間には「引力」が働いていて、互いに引っ張り合っています(引力は、質量をもつすべての物体の間に働いています)。
そして地球は1日に1回自転しているので、月の方向を向いた海面は月の引力の影響を受けて引っ張られ、潮位が上がります。これが「満潮」です。
また満潮になるのは、月の方向を向いた海面だけではなく、その反対側の海も満潮になります。この理由を簡単に説明することは難しいのですが、(1)月の方向を向いた海面、(2)地球の中心、(3)反対側の海、に働く月の引力を考えてみるとわかりやすくなります。
月の引力は、月に近い(1)が一番強く、(2)が中くらい、(3)が一番弱くなります。つまり、月の反対側の海では、月の引力の影響が一番弱くなるので、海を月の方向に引きつける力が弱くなり、海面が盛り上がるのです。
そして、月の方向を向いた海面と、その反対側の海面が満潮となる一方で、その間にある海面では潮位が下がります。これが「干潮」です。満潮は基本的に1日2回起こるので、干潮も基本的に1日2回起こります。
潮汐力とは
このようにして潮の満ち引きを生み出す力を「潮汐力(ちょうせきりょく)」と呼びます。月の方向を向いた月に一番近い海面、地球、月の反対側の月から一番遠い海面に働く、月の引力の違いが生み出す力が潮汐力です。
潮汐ロックとは
ここまで、月の引力が地球の海と地球に影響を与えていると説明してきましたが、同様に地球の引力は月に影響を与えています。月と地球を比べると、地球の方が大きく、重量も重いため、地球の引力が月に与える影響は、月の引力が地球に与えるものよりも大きくなります。
この結果、月は常に地球に同じ面を向けて地球のまわりを回っています。これを「潮汐ロック」といいます。地球から見る月の模様が変わらないのはそのためです。
潮汐を利用してできること
潮汐(潮の満ち引き)は私たちの暮らしのさまざまな場面にかかわっています。どんなことが潮汐と関係しているのか、見ていきましょう。
潮力発電
潮汐を利用して電力を作り出すのが「潮力発電」です。満潮と干潮の差が大きい湾の入口に水門を作り、満潮のときに海水をため、干潮のときに水門から海水を流し、タービンを回して発電します。ダムに水をためて発電する水力発電と同じ原理です。より正確には「潮汐力発電」と呼びます。
潮の満ち引きではなく、潮の「流れ」を利用して発電する方法もあり、こちらは「潮流発電」と呼びます。
サーフィンなどのスポーツ
サーフィンやシュノーケリングなどのスポーツにも潮汐は大きく関係しています。
サーフィンは、サーフボードを使って波に乗るスポーツ。サーファーはよい波に乗るために、潮汐表(満潮時刻と干潮時刻が記された表)などを見て、潮の状態や潮位をチェックしています。
シュノーケリングは、満潮から干潮に入れ替わる「潮止まり」と呼ばれる状態で楽しむのがおすすめです。「潮止まり」のときには、潮の動きが止まり、海が穏やかになるためです。
潮干狩りなどのレジャー
潮干狩りは、潮が引いたときにできるレジャーです。干潮で潮位が下がると、砂浜が広がり、潮干狩りを楽しむことができます。特に遠浅の海では広い砂浜が現れます。潮干狩りに行く際には、潮汐表を確認するとよいでしょう。
漁業などの海の仕事
魚がよく獲れるのは、潮位差がもっとも大きく、潮がよく動くときと言われています。潮位差がもっとも大きく、潮がよく動くときを「大潮」といいます。
一方で、満潮から干潮に入れ替わる「潮止まり」のときには、魚はあまり獲れないといわれています。酸素やプランクトンなどを運んでくれる潮の流れを好む魚が活動しなくなるためだそうです。
潮汐の情報を知ることができるサイトや資料
潮の満ち引きの情報は、海上保安庁のサイトや、釣り、サーフィンを楽しむ人向けのウェブサイトでチェックできます。
海上保安庁「潮汐表」
海上保安庁では、毎年、潮汐・潮流の予測値を掲載した「潮汐表」を発行しています。また、海上保安庁のウェブサイトにある「潮汐実況」では、日本全国のリアルタイムの潮位データを見ることができます。
海上保安庁:潮汐表
海上保安庁:潮汐実況
釣りに役立つ潮汐情報「潮汐ドットコム」
「潮汐ドットコム」は、世界の釣り場所の潮汐、太陽・月齢表が確認できるサイトです。そのほか、潮汐の種類や潮汐率、川の潮汐、宇宙の潮汐などの情報も掲載されています。
今日の満潮・干潮時刻がわかる「surf life」
「surf life」は、サーフィンやサーフポイントに関する情報満載のポータルサイトがです。全国680カ所のサーフポイントの検索機能のほか、日本644カ所の潮見表、週間天気、日の出・日の入り時間などが掲載されています。
神秘的な潮の満ち引きに思いを馳せて
日本は、海に囲まれた島国。海は私たちの暮らしにさまざまな影響を与えています。
潮の満ち引きは、月の引力、さらには太陽の引力もかかわっている自然現象です。天体現象ともいえます。お子さんと一緒に、海、月、そして宇宙に思いをはせてみてください。
文・構成/HugKum編集部