「左袒」とは?
「左袒」という言葉を知っていますか? 読み方はなんとなく予想できても、意味は見当がつかない方も多いでしょう。まずは、「左袒」の意味を詳しく解説していきます。
読み方と意味
「左袒」は「さたん」と読みます。左の肩をあらわにするこという意味が転じて、「味方すること」「賛成すること」という意味で使われる言葉です。
なお、「左袒」の「たん」は、「担」ではなく「袒」ですので、間違えないように注意しましょう。
由来・語源
「左袒」の「袒」という漢字は、もともと「着物を脱いで、上半身をあらわにする」という意味を持ちます。これに「左」をあわせることで、「左の肩をあらわにする」という意味になるのです。
しかし、左の肩をあらわにすることが、なぜ「味方をすること」という意味になるのか疑問に思いますよね。これは、「左袒」の言葉の由来を紐解いていくことで、解決しますよ。では「左袒」の語源となったエピソードを紹介しましょう。
昔の中国に、農民の生まれでありながらも、漢の初代皇帝にまで上り詰めた劉邦(りゅうほう)という男がいました。その劉邦も、戦で負った傷が原因で亡くなってしまいます。劉邦が死ぬと、劉邦の妻・呂雉(りょち)が傍若無人なふるまいを始め、呂氏一族で漢の天下を奪おうとしたのです。そこで劉氏側の側近たちが立ち上がり、こう言い放ちます。
「呂氏につく者は右袒せよ、劉氏につく者は左袒せよ」。すると、そこにいた者たちは皆、左肩を見せたのだそうです。このエピソードが由来となって、「左袒」が「味方になること」という意味で使われるようになりました。
使い方を例文でチェック!
「左袒」の意味や、言葉の由来も理解したところで、使い方を見ていきましょう。「左袒」はかしこまった印象を与えるため、日常生活ではなくビジネスシーンなどで使うのに適しています。
1:「私はAさんではなく、Bさんの意見に左袒します」
「左袒」は「左袒する」という動詞表現でも使うことができますよ。この例文は、「Aさんの意見ではなく、Bさんの意見に賛成します」ということをあらわしています。
2:「部下のことを考えない社長には、左袒する気にならない」
社長がワンマン経営を行う会社であれば、社員に不満が募ることはよくあるケースです。「社長にはもうついていけない」という気持ちがうかがえる例文ですね。
3:「A党は国民に左袒を求めた」
「左袒を求めた」という表現で、「賛成を求めた」「同意を求めた」という意味になります。選挙の演説などで、政治家が聴衆に対し、「党が掲げる政策に賛同してください」ということを伝えている場面をあらわした例文です。
類語や言い換え表現とは?
続いて、「左袒」の類語を見ていきましょう。「左袒」は「味方する」「賛成する」という意味ですので、「加勢する」「肩入れする」「ひいきする」などが言い換え表現として使えるでしょう。それぞれ例文をまじえながら言葉の意味を解説していきます。
1:加勢する
「加勢(かせい)する」はよく聞く表現ではないでしょうか。意味は、「力を貸して助けること」。「加勢」という言葉だけでも使えますよ。その場合は、「力を貸して助ける人たちのこと」「戦いにおいて、一方の軍に援軍を出すこと」をさします。
例文:ディベートで言い負かされそうになっていたAさんを見かねて、つい加勢した。
2:肩入れする
「肩入れする」とは、「力を貸す」「ひいきする」という意味です。昔の日本では、長い棒に荷物を吊るし、それを肩に担ぐことで重い荷物を運んでいました。荷物が非常に重い場合に、他者の肩を借りることから、力を貸すという意味の「肩入れ」という言葉ができたのだそうです。
例文:地元のサッカーチームに肩入れする。
3:ひいきする
「ひいきする」の意味は、「気に入った人を引き立てる」「後援する」です。「ひいき」は漢字で書くと「贔屓」で、「贔」が重い荷物を背負うという意味、「屓」は鼻で息をする意味を持ちます。重い荷物を持つために、息を荒くして挑むようすが転じ、誰かを助けるために力をこめることという意味になったそうです。
例文:お気に入りのアイドルをひいきする。
対義語とは?
「味方をする」という意味の「左袒」。「敵対する」「反論する」などの意味を持つ言葉が対義語として使えそうですね。ここでは、「左袒」の対義語をいくつかピックアップして紹介しましょう。
1:敵対
「敵対」は「てきたい」と読みます。「相手を敵とみなして対抗すること」「敵としてはむかうこと」という意味を持つ言葉です。「左袒」は「味方をすること」という意味ですので、対義語としてぴったりでしょう。
2:楯突く
「楯突く」の読み方は「たてつく」。意味は、「目上の人に逆らう」「文句を言ったりして反抗する」。主に目上の人に対して使う言葉です。「反抗する」という点においては、「左袒」の対義語といえますね。
3:異を唱える
「異(い)を唱(とな)える」の意味は、「反対の意見を言う」です。「左袒」には、「賛成する」という意味もありますので、「異を唱える」も対義語として使えるでしょう。
英語表現とは?
「左袒」そのものをさす英語表現はありませんが、「味方する」「賛成する」という意味を持つ英語を使って、「左袒」をうまく表現しましょう。それぞれ例文も紹介します。
1:take somebody’s sides
「take somebody’s side」は「〜の味方をする」「〜の肩を持つ」という意味です。「side with〜」という表現でも同様の意味合いで使えますよ。
例文:He always takes his daughter’s side.(彼はいつも娘の肩を持つ)
2:agree
「agree」は「賛成する」という意味の英語です。ちなみに、「agree」は、「agree with〜」と「agree to〜」という表現があります。「agree with〜」は、相手と同じ意見を持っているときに使い、「agree to〜」の場合は、相手と同じ意見ではなかったけれども、渋々受け入れるというニュアンスになるようです。
文脈にもよりますが、「左袒」を表現したい場合は、「agree with〜」のほうが適しているでしょう。
例文:I agree with his plan.(私は彼の計画に賛成です)
最後に
「味方すること」「賛成すること」という意味の「左袒」。聞き慣れない表現ですが、意味自体は簡単でしたね。かしこまった印象を与える言葉ですので、使えるシーンは限られていますが、意味を知っておくといざというときにも安心ですよ。
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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)