上の子・下の子・ひとりっ子「生まれ順」で子どもの特性は決まる? ケース別の悩みと、NG行為ガイド【専門家監修】

子どもとの接し方は、いつだってママ&パパの気がかりのひとつ。不公平になっていないかな? 甘やかしすぎていないかな? きょうだいがいる場合、ひとりっ子の場合には、またそれぞれに悩みも異なります。今回は、きょうだい、ひとりっ子、それぞれのお悩みに答えます。

「生まれ順」で子どもの特性は決まらない

「上の子はしっかり者」「下の子は甘えん坊」「ひとりっ子はマイペース」。大人はつい、こんな先入観をもってしまいがちです。でも実際には、子どもの特性が生まれ順と関係していることが証明されているわけではありません。

人間の性格はもって生まれた「気質」に加え、育つ環境や人との関わりなどにも影響を受けて形づくられていきます。生まれ順による傾向があるとしたら、おそらく「親の関わり方」に違いがあるからでしょう。

上の子だからしっかりしてほしい、下の子はいつまでも赤ちゃんのような気がする……。保護者のこうした気持ちや期待は、子どもへの接し方にも表れるものです。その結果、多くの大人がもつ「上の子・下の子・ひとりっ子」のイメージに近い性格がつくられていくことが多いのではないでしょうか。

生まれ順に関する思い込みは、大人の価値観で子どもを「評価する」ことにつながりかねません。たとえば、子どもが親に甘えるのは当然のこと。本来、遠慮なく甘えられる親子関係は素晴らしいものなのに、「生まれ順フィルター」がかかっていると、「上の子なのに甘えん坊で困る」などとネガティブに受け止められてしまうことがあるのです。

保護者の役割は、子どものよさを伸ばすことです。「こうであってほしい」などと大人に都合のよい基準を設けたり、他の子とくらべたりするのではなく、「その子らしさ」に注目を。生まれ順はあえて意識せず、個性に合わせた関わり方を心がけてみてください。

きょうだいの悩み

【悩み】きょうだいげんかをすると、いつも上の子を叱ってしまいます。

きょうだいげんかは止めるのではなく「なぜ?」と聞く

親はけんかをやめさせようとして、つい上の子を叱ってしまうものですよね。でも、きょうだいげんかは、自己主張の方法や相手との折り合いのつけ方を学ぶよいチャンス。「けんか=悪いこと」ではないのです。言い争いなら、親はできるだけ口出しせずに見守りましょう。

親が介入するのは、どちらかが手を出したとき。ただし「悪い方を叱る」のではなく、それぞれの言い分を聞いてけんかの理由を考えましょう。

上の子に譲らせる場合も、「おにいちゃんなんだから、がまんしなさい」はNGワード。まず「そのおもちゃは、おにいちゃんの大事なものだもんね」などと本人の気持ちを代弁し、共感を示します。そのうえで、「弟に少し貸してあげようか?」などと言ってみましょう。

【悩み】つい、きょうだいとくらべてしまいます。

くらべるのではなく、それぞれのよいところにフォーカスする

「何かがうまくできるか」などの基準できょうだいをくらべることは、子どもに優劣をつけることにつながります。たとえ外見がそっくりでも、きょうだいは別の人間。当然、生まれもった気質も違います。ひとつの基準でくらべるのではなく、それぞれの子どものよさや可能性に注目していきましょう。

親は、子どもの「できない」「よくない」ところを直そうとしがちです。でも、「よくない」などの判断は、親の価値観や周りとの比較に基づくもの。親が思い描く理想に合わせて子どもをかえようとするのが正解とは限りません。

気になる部分も「その子らしさ」としてできる限り尊重し、その子ならではの持ち味を生かすことに力を入れてみてはどうでしょうか。

【悩み】下(上)の子のほうに、時間や手間を多くかけてしまいます。

「同じ=公平」ではない!それぞれが求めるものを与えることが大切

幼い子どもほど、親の手助けを必要としています。きょうだいをくらべた場合、下の子の世話などにかける時間が長くなるのは、ごく自然なことです。きょうだい全員に同じようにしなければいけないわけではないのです。きょうだいへの関わり方は、「平等」より「公平」であるかどうかを意識してみましょう。

たとえば、兄と弟にドーナツを3個ずつあげることは「平等」です。でも弟が1つでお腹いっぱいになるのなら、弟には1つで十分。兄が3個欲しがるなら、兄には3個あげてよいのです。それぞれの子どものニーズ(欲求)に応じることで、「公平」になるからです。

自分の求めにしっかり応えてもらうことができれば、子どもが不満を感じることはないのです。

ひとりっ子の悩み

【悩み】ひっこみ思案なのはひとりっ子のせい?と気になります。

ひとりっ子にはいろいろな場所でいろいろな経験を

ひっこみ思案なのは、ひとりっ子だからというより、気質や環境、これまでの経験などの影響が大きいのではないでしょうか。気になる場合は家庭や園以外の場にも足を運び、いろいろな人と触れ合う機会を増やしてみましょう。

子どもにとって親との関係は「縦」、同世代の友だちとの関係は「横」。そして家族だけれど年齢が近いきょうだいは、「斜め」の関係にあたります。ひとりっ子は、「斜め」の存在と関わる機会が家庭ではありません。親や同世代の友だち以外の人とのつながりを増やし、「斜め」の関係を経験してみることも大切です。

【悩み】わがままにならないように、と厳しくしてしまいます。

「わがまま」や「甘え」を受け入れられた経験が自立心をはぐくむ

2~4歳のめばえっ子世代は、自己表現のしかたを身につけていく時期です。発達の面から考えると、のびのびと自己主張ができるのはとてもよいこと。「わがまま」「甘え」などとネガティブにとらえる必要はありません。

めばえっ子は、自分をコントロールする力が未熟。だからこそ、「その子らしさ」が素直に現れます。

自分を大らかに表現し、身近な大人にそれを受け止めてもらう経験は、子どもの成長に欠かせないもの。人に甘えてこそ、他人の甘えも受け入れられるようになり、思いやりや自立心が育っていくのです。

【悩み】発達がゆっくりなのは、ひとりっ子のせい?

周りの子とくらべず、その子なりのペースを尊重して

親には、子どもが早く自立することを望む気持ちがありますよね。その思いから、同世代の友だちとくらべて自分の子が遅れているように見えることもあるでしょう。

でも子どもの発達のペースはさまざまで、早く発達していく子もいれば、ゆっくりと進んでいく子もいます。また、めばえっ子世代では体格の差なども「できる・できない」に影響し、上にきょうだいがいると言葉の発達などが早くなる傾向もあります。

ひとりっ子のメリットは、親が子どもとていねいに関われること。周りの子を意識して急かしたりせず、その子なりのペースを尊重してじっくり見守っていきましょう。

教えてくれたのは

岩立 京子 先生
東京家政大学子ども学部子ども支援学科教授。
専門は発達心理学、幼児教育。主な監修書に『遊びの中で試行錯誤する子どもと保育者 子どもの「考える力」を育む保育実践』(明石書店)など。1男1女の母。

『めばえ』2022年10月号
イラスト/すみもとななみ 構成/野口久美子

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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再構成/HugKum編集部

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