その焦りは「後悔したくない症候群」では?|1歳,2歳,3歳の発達を左右するのは、遺伝か環境か

日々目まぐるしく変化するわが子を見ていると、うれしくもあり不安を感じることもあり……。子どもの発達にどのように向き合えばいいのか、小児科教授の高橋孝雄先生に伺いました。

発達に関する情報を知ることで、不安になっていませんか

生まれたときはふにゃふにゃの赤ちゃんだったわが子が、あやすと笑うようになったり、自分で立って歩いたり。子どもの発達とは感動的で喜ばしいものですよね。

「いつ、どんなことができるようになるのか」という発達の目安に関する情報を、今はアプリなどでいつでも知る
ことができるようになりました。便利になった一方で、「うちの子、〇歳なのにまだこれができていないかも」と不
安になることもあるのではないでしょうか。

情報は、諸刃の剣のようなもの。わが子を大切に思うあまり、情報に切りつけられてしまうことがあるのです。

「まだできない」よりも、今「できること」を楽しもう

「いつ、何ができるか」には大きな個人差があります。人によって数か月の差があるものなので、いずれできるよ
うになるのであれば、それがいつできるかは重要な問題ではありません。

ですので、ご家庭でも、「〇歳なのにまだできない」と悩んだり心配するよりも、今できることに注目して、その成長を楽しんでもらいたいと願います。

1か月前、1年前と比べると、格段にできるようになったことが増えていますよね。そんな「できること」に目を向けて、かわいい幼児期をわくわくと楽しく過ごすことを大切にしましょう。

子どもの個性を決めるのは遺伝? それとも環境?

「パパやママにそっくり!」というところもあれば、「誰に似たの!?」と思うところもあったり。子どもの個性はどのように決まるのでしょうか。

個性や性格なども遺伝子の影響が大きい

「身長」「頭囲」「骨格」「顔立ち」「運動の好き嫌い」などは、両親から受け継いだ遺伝子によって下支えされています。

しかし遺伝子ですべてが決まるわけではありません。例えば身長が大きくなる遺伝子を持っていたとしても、栄養状態が悪い環境にいると伸びないこともあります。これが、「環境要因」です。

遺伝子には、進化するための「余白」がある

言い換えると、両親が苦手なことも、もしかすると環境要因によって才能が開花していないだけという可能性もあります。また、遺伝子には、親の遺伝子を正確にコピーするだけでなく、進化するための「余白」もあります。

「遺伝子で決められているから」と諦めるのではなく、「遺伝子が決めた個性」であることを認めた上で、克服するためのアプローチをさまざまな角度から試してみるといいでしょう。

こんなことで悩んでいませんか? 高橋先生から3 つのメッセージ

高橋先生のプロフィールは記事末参照

 

かわいいわが子だからこそ、悩みは多いもの。おうちの人が健やかに過ごせるよう、この時期の子育てでよくあるお悩みについて、高橋先生からアドバイスをいただきました。

お悩み① 他の子に比べて発達が遅いのではないかと心配です。

早くできることに意味はありません。心配なら相談を。

「歩く」「話す」「ものを握る」「噛んで食べる」など、人が人として生きていくために必要な発達は、遺伝子によって保たれています。時が来れば必ず起きる揺るがない変化なので、それが早くできることに意味はありません。いつかできるようになればいいのです。

ですので、心配する必要はありませんが、育児に不安を抱えるようであれば、乳幼児健診や予防接種のときに医師に相談するといいでしょう。保護者の話を聞いて、「その不安は杞憂であって、実は大丈夫ですよ」としっかり説明して安心していただくのも、僕たち小児科医の大事な仕事です。

お悩み② 子どもの発達のために今のうちにいろいろ経験させたほうがいいですか?

発達とは練習不要なもの。「後悔したくない症候群」にならないこと!

遺伝子によって保たれている発達に、練習は必要ありません。練習しなくても勝手にできるように遺伝子に組み込まれているのです。ですので、子どもの発達のためにおうちの人が先回りして何かをする必要はまったくないのです。

「この子の将来のために今何かやらないと」と心配して、「後悔したくない症候群」になっていませんか? よほどのことがない限り、子どもは健やかに育っていくものです。将来を憂えて焦るよりも、今日のお子さんのかわいい姿を大切に、今この時間を楽しく過ごしていただけたらと願います。

お悩み③ 子どもの自己主張が強すぎてつい感情的に怒ってしまいます。

自己主張は大事な発達。状況が許す限りは自主性に任せましょう。

2歳ごろになると何でも「イヤ!」と自己主張が激しくなるのは、自分でやりたい、自分で決めたいという自我が芽生えてくるからです。これは人が生きていく上でとても大切な発達です。

激しすぎる自己主張に疲れてしまうかもしれませんが、ケガをしたり他の人に迷惑をかけるような状況でなければ、基本は自主性に任せて。

自己主張を真正面から受け止めると疲れてしまうので、「寝ているだけの赤ちゃんだった子が、自己主張できるようになったんだなぁ」と、発達のひとつとして客観的に捉えて楽しむといいでしょう。

成長の思い出に♪  発達記録のすすめ

「いつできるか」には個人差がありますが、どんな順番でできるかは遺伝子によってほとんど定められています。その順番を下の表にまとめました。

育児手帳や日記をつけている方は下記項目を参考に、できるようになった日付を書き込みながら、お子さんの成長を楽しんでくださいね。

教えてくれたのは

高橋 孝雄 先生
慶應義塾大学医学部教授。医学博士。専門は小児科一般と小児神経。日本小児科学会前会長、日本小児神経学会元理事長。著書に『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』(マガジンハウス)など。

『ベビーブック』2022年9月号 イラスト/くわざわゆうこ 文/洪 愛舜 構成/童夢

小学館の知育雑誌『ベビーブック』は、毎月1日発売。遊び・しつけ・知育が一冊にぎっしりとつまっています!  アンパンマン、きかんしゃトーマス、いないいないばあっ!など人気キャラクターがお子さんの笑顔を引き出します。はってはがせるシール遊びや、しかけ遊びでお子さんも夢中になることまちがいなしです。

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再構成/HugKum編集部

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