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パパメインの育児にチャレンジした たくやさん
独立行政法人で働くたくやさん(仮名)は、育児休暇を1年取得し、職場復帰後も育児の中心を担っています。
パートナーは、フリーランスで「キャリアを積みたい」と考えていました。話し合った結果、たくやさんが「妻と一緒に妊娠から出産までを歩みたい。子どもが好きなので、子育てもやりたい」と考えていたこともあり、メインで育児をやることに。
パートナーが出産して、仕事へ復帰するまでの3ヶ月間は交代で息子を見て、4ヶ月目から12ヶ月目まではたくやさんがメインで見ていました。育児休暇後は、休暇に入る前と同じ職場に復帰し、息子の朝の準備と、夕方の保育園の迎えから食事、寝かしつけを行っています。
家庭で育児の中心を担うたくやさんですが、どのように育児休暇を取って、どのように対応してきたのでしょうか。話を聞きました。
「10ヶ月後には休みを取ります」パートナーの妊娠と同時に職場へ報告
男性の育児休暇取得は、前例がないと取りにくいこともあります。ただ、たくやさんの職場では前例もあり、育児休暇取得への理解も進んでいたため、取りにくい雰囲気はなかったといいます。
周囲の方の受け止め方は?
たくやさん:「1年の育児休暇を取る際に、「え?なんで?」とは聞かれませんでした。「僕らのときはなかったけど、そんなに取るなんてすごいね」とは言われましたが、悪気はなくて感心している雰囲気でした」
男性の育児休暇取得の前例はありましたが、職場で1年の育休を取ったのはたくやさんが初めて。安心して保育園に預けられるまでの期間を考えて、育児休暇の期間を決めました。
たくやさん:「うちはいつ保育園に預けられるかを基準に決めました。育休の期間について「1週間は論外で、1ヶ月でも短すぎる。何ヶ月がいいのか」とよく議論されていますが、おじいちゃんやおばあちゃんが助けてくれるのであれば、1年なくてもいいですし、短期間で保育園に入れるならその期間まででいいと思います。私の家は、たまたま近くに妻の両親は住んでいますが、まだ働いているので頼りにくいですし、1年の期間が必要でした。もし育休期間が終わるまでに保育園が見つからなかったら延長していましたね」
1年以上の休みを取るとなると、仕事に穴を開けるため、気まずかったり、尻込みしたりしそうなものです。しかし、たくやさんはそうではありませんでした。
家族にとって自分は唯一無二の存在だと思う
たくやさん:「家族にとって、自分は唯一無二の存在だと思っているんですよね。変な言い方になってしまいますが、会社はどうにかなると思っていて。家族にとっては自分ひとりだけなので。ただ、会社に伝えるタイミングは気をつけました。なるべく早い方がいいと思っていたので、妻が妊娠と分かった時点で、10ヶ月後には育休を取りますと上司に伝えました」
パートナーが妊娠した時点で、育休取得を報告したたくやさん。妊娠から出産するまでには9ヶ月から10ヶ月の期間があります。では、育児休暇に入る前までの期間にどのような準備をしていたのでしょうか。
「不安なときに相談されるのが自分でありたい」
妻の妊娠から出産までの道を一緒に歩むたくやさんは、パートナーが妊娠してからインターネットや本で情報を集め始めました。
たくやさん:「妊娠と出産を女性のものと思ってることがよくないと思っていて。とはいっても、知識を得ることしかできないんですよね。なので、まずは妊娠出産の本を読みました。最近の本は、「お母さん」ではなく「お父さんお母さん」って書かれていてますし、情報がたくさん入っていて、勉強になりました。育児についても、何を目指したらいいのか、どう考えたらいいのか、本で学べました」。
妊娠やつわりによる身体の変化は人によって異なるため、パートナーとのコミュニケーションが重要になりますが、男性の知識によって話しやすさは変わってきます。もし、男性に知識がないと、ゼロから説明する手間もかかりまし、不安も増えますよね。
妻の不安を理解するためにとにかく勉強
たくやさん:「異変に気づいて不安に感じるのは妻なんですよね。心細いときに妊娠のことを知らない人が大丈夫だよと言ったところで説得力も安心もありません。なので、何でも知ろうとしてました。妻の体調や、月齢によってお腹の赤ちゃんに何が起こりうるか、どういったことが大事なのか、ひと通り調べて、勉強しました。妻が何か不安に思ったときに、最初に相談されるのは自分でありたかったです。出産は、妻と私の2人に関わることなので、 妻に任せっきりで何もしいわけにはいきませんでした」
妊娠と出産は2人のことと考えていたたくやさんは、ベビーベッドを買って組み立てたり、エアコンの清掃業者を呼んできれいにしたり、子どもを迎える準備も進めました。また、コロナの影響で付き添いはできませんでしたが、健診は必ず一緒に行っていたと言います。
たくやさん:「検診の日はずっと病院の近くのカフェにいました。検診のときって、何を言われるかわからないんですよね。起こって欲しくないんですけど、厳しいことを言われる可能性は常にあると思っていたんです。いつ呼び出されてもいいように、近くで待っていました。何もなくて帰ってくればひと安心です。心配だったらとにかく病院に行くことも意識していました」
妊娠のときから、準備をしていたたくやさんですが、無事に男の子が産まれました。
いよいよ育児が始まりますが、時間がない中、育児で潰れないように夫婦で工夫をしていました。
育児も時には息抜きが必要「月に1回、自由に過ごしていた」
協力して育児から離れる時間を取る。
子どもの育児をしていると自分の時間が取れません。子どもの起きる時間もまちまちです。決まった時間ごとにミルクをあげる必要もあり、昼夜関係なく子どもに合わせて生活する日々が続きます。
たくやさん:「産まれてしばらくの間は、起きる回数は多いので寝る時間が削られる負担はありました。赤ちゃんが小さかったから感じる大変さですね。ただ、大変な時期に仕事を離れて、育児に専念できたのは、自分の体を考えてもよかったと思います」
育児に専念するとは言ってもストレスは溜まります。時間に縛られた状態が続くのは、体だけではなくメンタルにも負担がかかります。育児で潰れないためにも、たくやさんは、パートナーと話し合って、互いに育児から離れる時間を作りました。
たくやさん:「月に1日、育児から離れるようにしていました。買い物に行ったり、スーパー銭湯のラウンジでゆったりしたり。ストレスに押しつぶされそうにもなりました。もちろん離れながらも息子のことは考えますが、「見てなきゃ」とか「ミルクやらなきゃ」とか考えなくていいので切羽詰まっている感じからは解放されて。育児を始める前の自分に戻れた気がしました。こういう時間は絶対に必要な時間でした」
パートナーと協力しながら1年間の育児休業の期間を乗り越えたたくやさんですが、前向きに育児に取り組めている理由はパートナーが妊娠した当初にあったと言います。
たくやさん:「やっぱり最初の勉強ってすごい大事だったなって思っていて。妊娠や育児のことを学んだおかげで、互いに相談し合えました。もし知らなかったら、育児に対して恐怖心や得体の知れない不安を抱いて、遠くから眺めたくなっていたかもしれません」
男性の育児休業取得率は、2021年度は13.97%。過去最高の数値となりましたが、女性の81.6%と比較して、まだまだ差があります。育休を取るときには、夫婦の目線を合わせて話し合っていくことが大切になりそうですね。
男性の育児休業の例はこちらの記事でも
文・構成/中たんぺい