ランドセルは「義務」ではない
そもそも、どうして日本の小学生たちは箱型のランドセルを背負っているのでしょうか。
学校で指定されている私立学校の場合は別ですが、公立小学校の場合、ランドセルが義務化されているわけでもなければ、学校側から推奨されているわけでもないというのは、あまり知られていません。
平たく言えば、周りが使っているし、パパ・ママ本人も子どものころに使っていたから、わが子にも買って(使わせて)いる状態が続いているのですね。
一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会によると、その慣習は、明治時代に始まったとの話。皇族が通う学習院で始まったらしく、他の学校にも広がりました。
年々高くなっているランドセル費用
同工業会の調査によると、箱型・背負式のランドセルは購入費用の平均額がこのところはどんどん高くなっているとかで、最新の調査では56,425円となっています。なかなかの負担ですよね。子どもが2~3人いる世帯となると、その負担額はもっと大きくなります。
かといって、学校の児童ほぼ全員がランドセルを背負っている状況で、自分の子どもだけに違うバッグを持たせるかと言われれば、保護者としては「みんなと一緒」を選ばざるを得ないと思います。
そんな子育て世帯に負担の大きい状況を変えようと、ランドセル選びの場面に新たな選択肢を用意した自治体があります。富山県立山町です。
予算に応じたオリジナル品を自治体が発注
富山県立山町とは、人口2万5千人ほどの小さなまちです。立山連峰のふもとに広がる美しい自治体で、令和5年度の新1年生はまち全体で178人(見込み)です。
この立山町では、箱型・背負式の一般的なランドセルの代替案として、株式会社モンベル(大阪市)製の通学用リュックサックを、町内の新入生全員に配るという政策をスタートしました。
取材に応じてくれた、立山町教育委員会の教育課教育企画係・坂田さんによると、そもそもの発端は、現職の舟橋貴之町長の発案にあるそう。何かと物入りの子育て世帯に生じるランドセルの消費支出に目を付け、家計の負担を軽くしたいと考えたのだとか。
目安となる予算を示し、子どもたちの身体的負担を考慮した軽さ、6年間の使用に耐え得る丈夫さ、パソコンやタブレットを含む学習教材が全て入る収納性を条件に掲げ、オリジナルのかばんづくりの業務の委託先を募集します。
選考の結果、モンベルが受注し、アウトドア用品の製造ノウハウを生かした軽量リュックサックが完成します。
受け取らない家庭は今のところほぼない
従来の箱型・背負式のランドセルと同じく、立山町オリジナルの通学用リュックサックも使用の義務はありません。しかし、就学時健康診断で贈呈式を設けて無償配布すると、子どもたちは喜んで受け取ってくれたようです。
同じく取材に応じてくれた、立山町教育委員会学校教育係の上田さんによれば、受け取らない家庭は今のところほぼないとの話。
大きな方向性をまちが示し、多くの住人が使う意思を示しているので、ランドセル購入をためらう保護者からすると心強い話ですよね。
キラキラした顔で通学用リュックサックを背負う子どもたち
就学時健康診断での贈呈式では肝心の子どもたちはどのように反応しているのでしょうか。聞いてみると、
「すごく軽い」
「青色もかっこいい」
「なんでも入りそう」
「学校が楽しみ」
などと、キラキラした顔で通学用リュックサックを担いでいたとのこと。
取材に応じてくれた坂田さんのお子さんも来年度にちょうど入学を控えているらしく、
と言っていました。
継続するかどうかは、まちの声を訊いてから
立山町の通学用リュックサックの無償配布は、令和5年~7年度の3年間にかけて実施する予定で、その先については状況を見て決定するみたいです。
ランドセルについては、購入時期の早期化・高額化が止まらない昨今の状況を踏まえ、疑問に感じている保護者も少なくないはずです。
富山県立山町で投じられたランドセル選びへの一石。立山町と同様の政策が全国の自治体へも広がっていくかもしれませんね。
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文・写真・取材/坂本正敬
【参考】
ランドセルの歴史 – 日本鞄協会ランドセル工業会
ランドセル購入に関する調査 2022年 – 日本鞄協会ランドセル工業会
高額なランドセル、必要ですか? – 西日本新聞
どんどん重く、高くなるランドセル 実は義務でも推奨でもない? – 朝日新聞
町長プロフィール – 立山町