『ブレーメンの音楽隊』ってどんなお話?
『ブレーメンの音楽隊』は、幼稚園で劇の発表会の題材に選ばれることもあり、子どもにも人気がある物語。有名なグリム童話の一つです。
グリム童話とは?
グリム童話とは、ドイツのグリム兄弟が民話を集めて作った童話集。特に有名な物語は『赤ずきん』『白雪姫』『ヘンゼルとグレーテル』など、誰もが知る名作ばかりです。
国:ドイツ
発表年:1812年
おすすめの年齢:5歳くらいから小学生くらいまで
作者のグリム兄弟ってどんな人?
兄ヤーコプ・グリム、弟ウィルヘルム・グリムというドイツ人の兄弟。二人とも文献学者であり言語学者です。数々の文献の出版やドイツ語辞典の編纂に携わり、大学教授も務めました。
物語のあらすじ
グリム童話の原題は『子どもと家庭のための昔話集』。どれも古くからドイツで語り継がれてきた物語です。今回は、その一つである『ブレーメンの音楽隊』のあらすじについて、みていきましょう。
あらすじ
物語は、一匹のろばの登場から始まります。ろばは、飼い主の元で長い間荷運びをして働いていましたが、体が弱り、仕事ができなくなりました。それを見た飼い主は、「仕事をしないろばには、餌を与えない」と言います。ろばは、ブレーメンの町で音楽隊として雇ってもらうために、旅に出ることにしました。
旅の途中、ろばはいぬに出会います。いぬは「歳をとって走れなくなり、猟犬としての仕事ができなくなった。飼い主に殺されそうになったので、逃げてきた」と話しました。これからどうやって暮らしていけばいいのか分からず、途方に暮れるいぬを見て、ろばは「一緒にブレーメンを目指そう」と誘います。
二匹が旅を続けると、次に出会ったのはねこ。ねこは「歳をとって歯が弱くなり、ねずみを捕まえられなくなった。飼い主に川へ捨てられそうになったので、逃げてきた」と話しました。どこへ行けばいいか分からず、悲しんでいるねこを見て、二匹はねこも旅に誘います。
三匹がしばらく行くと、にわとりに出会いました。にわとりは、飼い主の家族が集まる明日、殺されてスープにされることが決まったため、鳴けるうちにと、力いっぱい鳴いていました。そこで三匹は「死ぬより、ましなことがあるはずだ」と、にわとりも旅に誘います。
四匹は旅を続けましたが、夜が来て、一休みすることにしました。ちょうどその時、一軒の家を見つけます。それはどろぼうたちの家でした。テーブルの上には、ごちそうがたくさん。お腹が減った四匹は、どうすればそれらを手に入れられるか考えます。そしてある作戦を思いつきました。
ろばの上にいぬが、いぬの上にねこが、ねこの上ににわとりが乗って、それぞれが大きな声で鳴きながら、窓からなだれ込んだのです。どろぼうたちは、化け物が来たと思い、驚いて逃げて行きました。四匹は、お腹いっぱいごちそうを食べて、眠りにつきました。
四匹が寝静まったころ、どろぼうたちの一人が、様子を見に戻って来ました。部屋を明るくしようと、燃える石炭に木をくべようとしましたが、それは石炭ではなく、光ったねこの目。びっくりしたねこは、どろぼうを爪で引っ掻き、いぬは噛みつき、ろばはうしろ足で蹴り、にわとりは大きな声で鳴きました!
どろぼうは急いで逃げ帰り、仲間たちにこう伝えました。「悪魔の老婆に引っ搔かれ、ナイフを持った男に刺され、真っ黒なお化けに棍棒で殴られ、屋根の上の裁判官に「どろぼうを連れてこい」と怒鳴られた」と。どろぼうたちは恐ろしくなり、二度とその家に近づきませんでした。そして、その家がとても気に入った四匹は、ずっとそこで暮らすことにしました。
あらすじを簡単にまとめると…
歳をとって体が弱くなり、飼い主に捨てられそうになった四匹の動物が、ブレーメンの音楽隊という新しい目的を見つけて旅に出ます。途中、どろぼうの家を見つけたときは、四匹で力を合わせて追い出しました。結局、四匹はその家がとても気に入ったので、ブレーメンには行かずに、その家でずっと暮らしました。
主な登場人物
登場人物について、それぞれがブレーメンを目指すことになった背景や、音楽隊に入る場合に担当するつもりだった楽器など、改めて確認しておきましょう。なお、担当楽器については、本によって若干異なるようです。
ろば
体が弱って荷運びができなくなり、飼い主から餌を与えられなくなったことをきっかけに、ブレーメンの音楽隊を目指します。担当する楽器は太鼓。
いぬ
二番目に登場するいぬ。歳をとって走れなくなり、猟犬としての仕事ができなくなったことで、飼い主に殺されそうになりました。ろばに誘われてブレーメンの音楽隊を目指します。担当する楽器はラッパ。
ねこ
三番目に登場するねこ。歳をとってねずみを追いかけられなくなり、飼い主から川に捨てられそうになりました。二匹に誘われ、歌の担当として一緒にブレーメンを目指します。
にわとり
四匹の中で最後に旅に加わるにわとり。殺されてスープにされそうなところを、三匹に誘われてブレーメンを目指します。ねこと同じく、担当は歌。
どろぼうたち
四匹が気に入ってすっかり居着いてしまった家の持ち主。四匹の動物が恐ろしい化け物だと勘違いして、二度と家に戻りませんでした。
名作『ブレーメンの音楽隊』を読むなら
『ブレーメンの音楽隊』は、複数の出版社から出版されています。内容は基本的に同じですので、イラストの雰囲気やサイズ感など、好みに合うものをぜひ見つけてください。
ブレーメンの音楽たい(小学館)
寺村輝夫の文と、和歌山静子の絵によるかわいらしい絵本です。
ブレーメンのおんがくたい(福音館書店)
絵本作家ハンス・フィッシャーによる美しい絵本です。
ブレーメンのおんがくたい(金の星社)
絵本作家いもとようこによるあたたかみ溢れる絵本です。
『ブレーメンの音楽隊』から得られる教訓は…?
『ブレーメンの音楽隊』から得られる教訓とはなんでしょう? そこには、大きく3つの教訓があると感じます。一つ目は、ブレーメンの音楽隊を目指したように、どれだけ歳をとって体が弱っても、人生は新しい目標を見つけて楽しむことができるのだということ。
二つ目は、飼い主から見放されるほど一人一人は弱い存在でも、どろぼうたちを追い払ったように、力を合わせれば強い存在になれるということ。
そして三つ目は、結局ブレーメンには行かないという結末から、過程によっては目的が変わってもいいのだということ。当初の目的にとらわれず、物事は柔軟に捉え、大切にするのはその時の自分の素直な気持ちであると、教えてくれているのではないでしょうか。
すでに長い年月、ドイツで語り継がれてきた民話は、グリム兄弟によって世界中に広まりました。これから先も物語を通して、私たちに人生の教訓を教え続けてくれるのでしょう。
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構成・文/伊藤舞(京都メディアライン)