子どもの好奇心を伸ばす科学遊び!100均スマホレンズで植物や雪の結晶をのぞくと、大きな感動が

スマホに取り付けて、手軽に身のまわりのものを観察できるマクロレンズ。前回の記事では身近な砂糖や塩が宝石のように見える事例をお伝えしましたが、今回は野外。散歩をしながら見つかる素材を何倍も楽しく観察するアイデアを、地学教師の上村剛史先生に伺いました。美しい自然現象などをみて、親子で観察するヒントにしてみてください。

用意するのは100均で買える「スマートフォンレンズセット」

今回はダイソーの「スマートフォンレンズセット」を使用。これで110円はお得!
クリップにレンズを装着して使います。「魚眼レンズ」「広角レンズ」「マクロレンズ」の3種類のレンズがセットされています。

用意するのは前回の記事同様、100円ショップで買えるスマホ用マクロレンズ。今回は、このレンズをつけたスマートフォンをもって「外で観察」してみましょう。

地学教諭の上村剛史先生に、野外観察におすすめの対象物や子どもの興味を広げるコツを伺いました。

「子どもの好きにさせる」が観察のポイント

いきなり問題です。これは何でしょう?

宝石の集まりのように見える美しい粒の数々……一体何だと思いますか?これは、砂です。砂浜の砂ってこんなにいろんな色の小さな砂粒からできているんです。濃い赤茶色っぽく見えるのは、宝石にもなっている「ガーネット(ザクロ石)」。単なる砂ですが、この写真はどこか気品と高級感にあふれています笑)。これは奈良県宇陀市にある宇陀川の川原で観察しました。

野外でおすすめの観察その①「砂」

ということで、スマホレンズの観察では、まずは「砂」をおすすめします。

「砂って灰色じゃん」と思うかもしれませんが、砂の色は構成する粒(鉱物)の違いで変わります。白い砂浜や灰色の砂浜など場所によって違いがあり、白い砂浜は「石英」や「長石」といった白っぽい粒(無色鉱物)が多く、灰色の海岸には色のついた粒(有色鉱物)が多いのです。そして多くの砂浜は、一種類の粒ではなく、いろんな粒(鉱物)が混じっているので、目には白っぽいと映ったり、グレーや黒っぽいと映ったりするのです。

マクロレンズでこうして大きくして見ると、「砂の色の正体」がわかった気がしませんか?

ちなみに、この砂は「サハラ砂漠」の砂です。

サハラ砂漠の砂。一面白い砂に見えているサハラ砂漠ですが、拡大すると透明や少し茶色い粒が混じっているのが分かります。

1枚目の写真と見比べると、石の色も形も違うでしょう? 透明のまんまるの粒のほとんどはは風化に強い「石英」です。

これも砂浜の砂です。

形からなんとなく思いつくのでは? 「幸せが舞い降りる」という言い伝えも。

「え、これが砂?」という声が聞こえてきそうですが、これは「星砂」と呼ばれる砂。構成しているのは有孔虫と呼ばれる小さな生物の死骸(殻の部分)。沖縄など南の海に多く見られます。写真は昔もらった竹富島の星砂を観察したものです(現在、ビーチや浜によっては砂の採取を禁止している場合があるので注意しましょう。砂浜での観察やお土産の星砂などで観察がおすすめです)。

同じ砂でも場所によって、こんなに違いがあるんですね。海や川に行ったら、ぜひ砂を観察してみてください。もちろん公園の砂場の砂でもいいのです。公園なら、子どもは「土も見てみよう」と言うかもしれません。それなら土も見てしまいましょう。

「土って砂となにが違うのかな?」「そもそも土って何なの?」そんな疑問が出てくるかもしれませんね。土を見たら、次は花や葉っぱ、木、遊具のペンキのはがれた部分なんかも見たくなるかもしれません。そうやって好奇心の赴くまま観察し、撮影して見比べてみるとおもしろいですよ。

まずは子どもが気になったものは、どんどんマクロレンズで観察してみてください。どんなものが発見できるか、親子で「宝物探し」を楽しみましょう。

子どもが考えたり想像したりする過程を楽しんで

 とにかく子どもが好きなように観察を!

マクロレンズを使って親子で観察するときに大事なのは、子どもに「好きにさせる」ことです。外での観察は「いつも見ている風景なのに、レンズを通すとまったく知らない世界があった!」という驚きやおもしろさがあります。レンズをのぞいたときの「へえ、こんな風になっていたんだ!」という驚きや「見えなかったけど、本当はこんなものがあったんだ!」という発見を大事にしてほしいですね。

そして子どもの内側から出てきた疑問については、「そうだね。不思議だよね」「おもしろいよね」といっしょに驚いてください。親は「正解を教えてあげよう」ではなく「子どもが考えたり、想像したりしているその過程を一緒に楽しもう」という気持ちで接するといいのではないでしょうか。

一緒に考える過程が学びではいちばん大事

子どもに「これは〇〇なのかな?」と聞かれたら、正解を知っていても一緒に楽しんでから教えてあげるといいですね。知らなくても「どうだろう」とか「そうかもねー」でもいいと思います。親は専門家ではないので、「完璧な答えを出そう。それを教えよう」と身構える必要はありません。もちろん「一緒に調べてみよう」と言って、家に帰って事典やインターネットで調べるのはいいことです。ただそこで得た「知識」を子どもに教え込もうとして、逆に子どもが「お勉強みたい」と興ざめに感じないように注意してほしいと思います。

親と一緒に「驚きや発見を楽しんだ」という経験が、子どもにとっては「もっといろいろ見てみよう、調べてみよう」という学びの原動力になっていくのです。

美しくて幻想的な「自然のなか」の小さな世界

では、これは何でしょう?

真ん中に黄色い粉が見えています。子どもはなんて答えるでしょう。親が先に分かっても、なるべく子どもが自分で答えを発見できるよう上手にヒントを投げてみて。

答えは「ツバキのおしべ」です。おしべの先にたくさんの花粉がついているのがよくわかりますね。

こうして見ると、拡大するのと自分の目で見ているおしべとは全然違いますね。

下の写真は、道端に生えていた「ヒメオドリコソウ」。よく見ると薄いピンク色の花が咲いているのですが、とても小さくてわかりにくい……。

道端に生えている何気ない草も、拡大したら全然違う形が見えるかも。

でもマクロレンズを使えば、この通り。

ヒメオドリコソウの花の部分。まるで鳥が羽を閉じて休んでいるかのよう。「おしべとめしべはどこにあるのかな?」そんな会話からさらに角度を変えて覗いてみては。

花は実物大でもきれいですが、マクロの世界はもっと幻想的。ヒメオドリコソウのように、普段は道端に咲いているけど見過ごしがちな小さな花の造形の美しさを発見したら、大人だって感動モノですね。

自然現象の美しさは格別

植物は花だけでなく葉も美しいです。

植物についた霜。拡大してなければただ白っぽく見えている部分も、マクロレンズを使うと、一粒一粒の氷の粒も確認できます。
植物の葉についた水滴。丸くてコロンとした形がきれい。

これは葉についた霜(上)、露(下)で、冷え込んだ早朝に見られます。このような自然界のコラボレーションもマクロレンズを使えば、感動的な風景になります。

 

野外でおすすめの観察その③「雪」

これは長野のスキー場で撮影しました。

振ってくる雪をキャッチして撮影した雪の結晶。さまざまな形の結晶が見られる。撮影の難易度は高いので、写真にとれたら喜びもひとしお。

そう、雪の結晶です。上空の気象条件によって,さまざまな形の結晶になります。自然界にこんな複雑で美しい形があるのは不思議ですね(ひたすら感動して撮りまくった記憶があります)。

このように野外での観察では驚きと発見の連続です。

観察に夢中になりすぎないよう、安全にも注意して

注意点がひとつ。子どもが「これも見よう」「あれも見てみよう」と好奇心旺盛になるのはいいのですが、熱中しすぎて危ない場所、物、車などに気付かないでいると事故につながります。そこは親が周囲をよく見て注意してください。

また、親も一緒に楽しむのは多いに結構ですが、夢中になりすぎて子どもより先行しすぎないように。さりげなく「お母さんはこんなの見つけたよ」と言うくらいにして、子ども目線の好奇心を意識して、親子で観察を楽しんでください。

定規をいっしょに写せば、被写体の実際の大きさがわかる

 サイズ感が分かるように撮影するのがコツ

野外での観察では、いきなりマクロレンズで接近して撮ると、後になってそれが「何」で、「どのくらいの大きさなのか」を忘れてしまうこともあります。なので、上の「ツバキの花とおしべ」のように、マクロレンズを外して元の大きさがわかる一枚と、マクロレンズで接近したものとを撮影しておくといいでしょう。マクロレンズを外したスマートフォンのカメラ機能は、被写体に寄り過ぎるとピントが合いません。被写体から少し離してピントを合わせてください。

またマクロレンズでの撮影では、「一緒に定規や大きさのわかるものを映しておく」というのも方法です。定規の目盛りを読めば、具体的にその被写体の大きさがわかります。こうなってくると「観察遊び」がより学びに近いものになってきます。

子どもの好奇心をふくらませるためにできること

マクロレンズを使って観察するとおもしろいものの例をいくつかあげてみましたが、ほかにも身の回りや自然のなかには、感動的な「小さな世界」がたくさんあります。いろいろ探してみましょう。

親子で「考えたり」「想像したり」「調べたり」「比較したり」ということを通して、子どもの好奇心を大きく膨らましてほしいですね。

マクロレンズ「おうち編」はこちら

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記事監修

上村剛史|地学教師

理科(地学)教諭として海城中学高等学校を中心に、13年間公立・私立中学・高校で教えてきたが、3年ほど前から教職を離れ、社会福祉法人すこやかの法人事務局で保育園の運営をしながら、文化センターでの地球学講座、オンライン家庭教師など幅広く活動。地学をベースとして、地球や宇宙について情報発信をしている。2023年4月からは同志社国際高校で非常勤講師として地学も教える。先生のブログ「ちがくブログ

構成・文/船木麻里 撮影/上村剛史

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