「眠り姫」の続きが怖い? あらすじや原作の結末、類話「眠れる森の美女」との違いまで【教養としての童話】

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「眠り姫」は17世紀に書かれた童話の一つです。日本語訳では「眠れる森の美女」です。類話のグリム版「いばら姫」や、ディズニー映画「眠れる森の美女」などと比較しつつご紹介します。

童話「眠り姫」とは

「眠り姫」または「眠れる森の美女」は、フランスの作家シャルル・ペローが編さんした「お母さんのおとぎ話集(マザーグース物語)」の中の一篇です。

ペロー版「眠り姫」

「眠り姫」(原題 ”La Belle au bois dormant”、英語表記 “The Sleeping Beauty”)は、フランスの作家シャルル・ペロー(Charles Perrault)によって17世紀に書かれた童話の一つ。ディズニーが「眠れる森の美女」として映画化したのは、1959年でした。

国:フランス
原題:La Belle au bois dormant、英語表記 “The Sleeping Beauty”
編纂者:シャルル・ペロー(Charles Perrault)
発表年:1697年
おすすめの年齢:小学生低学年~

シャルル・ペローってどんな人?

フランスの作家、詩人、公務員、学者です。

彼の有名な童話や寓話は、『母ガチョウのお話(マザーグース物語)』『赤ずきん』『長靴をはいた猫』『シンデレラ』『眠れる森の美女』など。

シャルル・ル・ブランによるシャルル・ペローの肖像(Wikimedia commonsより) [[File:Portrait de Charles Perrault par Charles Le Brun.jpg|Portrait_de_Charles_Perrault_par_Charles_Le_Brun]]
シャルル・ル・ブランによるシャルル・ペローの肖像Brun.jpg|Wikimedia Commons

「いばら姫」や「眠れる森の美女」の類話が存在

ペローより後年に出たグリム版「いばら姫」は、「眠り姫」と内容が似ています。また、ディズニー映画の「眠れる森の美女」は子ども向けに、ペローの童話をアレンジしてハッピーエンドとなるストーリーで発表されています。

どの類話も、美しく高貴な王女が呪いによって眠りについてしまう、という基本的な設定は共通していますが、ペロー版には、お姫様と王子様が結婚した後も描かれています。

「眠り姫」のあらすじ

では、さっそく原作「眠り姫」のあらすじを見ていきたいと思います。

ネタバレ含みますのでご注意ください。

あらすじ

むかしむかしあるところに、子宝になかなか恵まれない王様とお妃様がいました。ようやく授かることができ、それはそれは美しい王女が生まれました。

お祝いの洗礼式で呪いが

王様は大喜びで、お祝いの洗礼式を盛大にすることにしました。その国の仙女七人を呼び集めます。しかし、招待されていない仙女が一人入ってきて、バカにされたと怒り始めたので、若い一人の仙女はカーテンの後ろに隠れ、自分はその仙女が何か悪い贈り物をしたら、自分の番の時に何か工夫しようと考えました。

食後に、それぞれの仙女たちがお姫様への贈り物として、美しさ、賢さ、女性らしさ、などを授けていきます。そして、悪い仙女の番がくると、「王女は16歳になる前に、紡車(つむぎぐるま)に指をさされて死ぬだろう」と言います。

死ぬ代わりに100年間眠る、という呪いに変える

皆が悲鳴を上げて、泣き崩れる中、最後の仙女がカーテンから出てきて「呪いは消すことはできませんが、私が何とか変えて見せます」と言い、死ぬ代わりに100年間眠る、という呪いに変えることに成功します。そして「百年すると、ひとりの王子様が、お姫様を眠りから覚まします」と言いました。それに悲観した王様は、国中の紡車を全部燃やすよう、おふれをだします。

100年の呪いが…

王女が15歳になります。

ある日、お城の近くにある塔で老女が紡車で糸を紡いでいました。この老女は塔にこもっていたため、王様のおふれについて知らなかったのです。紡車を見たことがなかった王女は、私も紡いでみたい、近寄りその瞬間に、紡ぎ糸が指に刺さって倒れ、深い眠りに陥ってしまいます。

その騒ぎを聞きつけて、100年の呪いに変えた良い仙女が駆け付けます。仙女は、持っていた杖で王様、お妃様、お城に勤める人々、みんなに触れていき、お姫様が100年後に目覚めても困らないよう、全員100年間眠らせることにします。周囲の森林も眠り、お城には「いばら」がぐるぐる巻き付き、誰も近寄れないように守られます。

いばら。とげのある小木の総称。

100年後

お城の周辺は別の王様が治めており、その息子である王子が狩りの後、お城の近くを通りかかります。

すると、がんじがらめだった「いばら」がみるみると解けて行き、王子を中へ入れるではありませんか。

王子がお城へ入ると、天蓋ベッドで眠る、まぶしいほどの光をはなつ王女を見つけたのです。あまりの美しさに、心身ともに恋に落ちた王子は、お姫様のそばにひさまづきます。その瞬間、呪いが解けお姫様は目を覚まします。すると、お城はみるみる美しくよみがえり、王様もお妃様も目覚め、草木もキラキラし始めます。

二人は結婚を正式に発表し、王子様のお城へ居を移します。二人の盛大な結婚式は国中の人々が喜び歓喜溢れ、全ての人々が幸せに暮らす国となります。

*原作には続きがあります。それについても下記にご紹介します。

あらすじを簡単にまとめると…

要約すると、待望の王女の誕生を喜んだ王様でしたが、邪悪な仙女に呪いをかけられ、王女は15歳で深い眠りに落ちてしまいます。とある国の王子が、偶然近くを通りかかったときが、100年が経過したときで、王子様がお城に入った時にお姫様が目を覚まし、やがて恋に落ちた二人は結婚して幸せに暮らすという物語。

教訓

昔は「自分を迎えに来てくれる男性を根気強く待つ」ことこそが真の女性の美徳だとされていたのです。そんな健気に「待つ」姿こそが幸せにつながり、大事だというメッセージが含まれており、それを100年も待つというのは驚異的、というメッセージなのです。

主な登場人物

登場人物を紹介します。

お姫さま(ねむり姫):

美しい王女で、呪いによって眠りについてしまいます。

  • 王子:

  • 王女を救うために現れる、勇敢な王子です。
  • 王:

  • 王女の父親で、呪いから王女を守るための対策をとります。
  • 仙女たち:

  • 誕生祝いの洗礼の儀で、国中から集められた仙女たち。お祝いにお姫様に美や徳、聡明さ、美声など様々なものを授けます。
  • 邪悪な仙女:

  • 洗礼の儀に呼ばれなかったことに腹を立て、お姫さまに呪いをかけます。ディズニー版では名前は「マレフィセント」とされていますが、原作には名前はありません。

本当は怖いと言われる続きの話

「眠り姫」の童話は怖いと言われています。その通りで、怖いのはペロー版のその続きです。

「グリム版」と「ペロー版」の違い

グリム版のハッピーエンドが知れ渡っていますが、ペロー版には続きがあります。

また、ペローの「眠り姫」は、先年のイタリア人作家、ジャンバッティスタ・バジーレの「太陽と月とターリア」という童話を元にしており、それにも似たような恐ろしい続きがあります。

「眠り姫」の恐ろしい結末とは

では、ペロー版とバジーレ版、それぞれの恐ろしい結末も少し紹介します。

ペロー版の恐ろしいエンディング

ねむり姫と王子は結婚後、オロール(長女)とジュール(長男)という二人の子どもに恵まれ幸せに暮らします。しかし、王子の母親が「人食い魔」の人種の出身で、小さな子どもを見ると衝動的に食べようとするお話が展開していくのです。

ペロー版のもとになったバジーレ版「太陽と月とターリア」のエンディング

生まれた時に、妖精に「麻糸に絡まって眠りから覚めなくなるだろう」と予言されたターリア王女は、その通りに15歳で深い眠りに落ちます。

そこへ、偶然、狩りで通りかかった妻子のある既婚王子が、ターリアのあまりの美しさに我慢できなくなり、眠ったままの彼女と愛を営みます。そのまま、その場を去り、国へ帰ります。その後、王女は麻糸が解けて目を覚まし、双子の男女を産みます。

そこへ、ターリアを思い出した王子が戻ってきて双子を見て喜びます。それを見た王妃は嫉妬で逆上し、ターリアの子どもたちをスープにして王子に食べさせようとしますが、それを聞いた王子が激怒して現れ、王妃を火の中に突き落とします。

ペローの続編とバジーレとではこのようにストーリーが少し異なりますが、いずれも恐ろしい内容で、童話として一般的に語られる「眠り姫」からは想像もできない展開なのは、あまり知られていません。

「眠り姫」を読むなら

ディズニー版の絵本から、中学生以上向けの厚めの児童書、大人も読みたい原作までのおすすめを年齢順に並べました。

眠れる森の美女 ディズニーゴールド絵本ベスト

講談社  (編集) 18ページ 2021/5/31 ムック本・Kindle版

 

ほぼ、ひらがなのみ。漢字やカタカナにはルビあり。小学生低学年~。

チャイコフスキーの眠れる森の美女 (大日本絵画出版)大型絵本

ジェシカ コートニー・ティックル (イラスト), メディアエッグ Katy Flint (原名)22ページ 2018/11/16  大型本

 

音が鳴る仕掛け絵本。チャイコフスキーのバレエ曲「眠れる森の美女」の一部が奏でられ、絵本を読みながら曲を覚えられます。また、お話は、見開きの全体の美しいイラストで進んでいくので、紙芝居のようにページをめくるのが楽しい絵本です。漢字あり、ルビあり。小学生低・中学年~。

ねむりひめ(小学館)

著/奥本大三郎  森津和嘉子 32ページ 大型本 2007/6/1

 

ディズニーではなく、原作を元にした児童書。眠りから覚めたあとのお話もおさめられた本格版です。

眠れる森の美女 シャルル・ペロー童話集 (新潮文庫)

シャルル・ペロー (著), 村松 潔 (翻訳) 176ページ 2016/1/28

 

シャルル・ペローの原作童話集。原作のイラストをそのまま使っています(モノクロ)。漢字あり、ルビは一部。原作通りグロテスクな展開のお話もあるため、中学生~大人向け。

あとがき

ペロー版「眠り姫」は前半の眠りの呪いから、急展開で後半は「人食い」姑の話になります。日本でも、昔話に人食い鬼とか、人食い婆とか出てきます。「そんな悪い子だと、鬼が来て食われちまうよ」などど、おじいちゃんやおばあちゃんなどが言ったりすることもありますよね。童話としてはグロテスクな展開ですが、当時、子どもをしつける目的も兼ねていたかもしれません。

いずれにしても、お子さん向けの児童書や絵本にはペロー版の「その先」は出てきませんので、安心して読ませてあげてください。「 眠れる森の美女」は、バレエやミュージカルでも楽しめますので、本やアニメとはちがうかたちで楽しんでもいいですね。

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文/加藤敬子 構成/HugKum 編集部

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