国際化学オリンピックとは?概要と参加資格
化学オリンピックは、正式には「国際化学オリンピック」といいます。どのような大会なのか、まずはその概要と参加資格について確認しましょう。
一年に一度開かれる「化学」の国際大会
国際化学オリンピックは「国際科学オリンピック」の一分野で、化学のほか数学・生物学・物理・情報・地学・地理の6分野があります。
大会が開催されるのは、毎年7月の約10日間です。例年、約80カ国から300人近い生徒が参加し、化学の知識を武器にしのぎを削っています。
試合形式は個人戦で、実験・筆記それぞれ5時間を要する課題をクリアしなければいけません。成績優秀者には、金・銀・銅のメダルが贈られます。
なお、2023年(令和5年)の化学オリンピックは、7月16日(日)~25日(火)にスイスのチューリッヒで開催される予定です。
国際化学オリンピック-International Chemistry Olympiad-
参加資格について
国際化学オリンピックに出場できるのは、各国最大4名の生徒代表です。それぞれの国で何段階かの選考会が実施され、そこから優秀な成績をおさめた学生が選ばれます。
日本で行われる選考会は「化学グランプリ」です。代表候補になるには、ここで優秀な成績を取るか、日本化学会の支部からの推薦を受ける必要があります。
化学グランプリには年齢の下限はありませんが、化学オリンピックの参加資格を得られるのは、中学3年生から高校2年生までとされています。
なお、化学グランプリとは、1999年(平成11年)から毎年開催されている国内コンテストです。マークシート式の一次選考と実験を伴う記述式の二次選考を、7〜8月の間に実施します。
国際化学オリンピックに出場するには?
日本で国際化学オリンピックへの参加資格を得るまでには、三つの段階を踏まなければいけません。それぞれの過程と、国際大会の様子や難易度について詳しく解説します。
化学グランプリに応募して一次選考を受験
まずはオリンピック選考会となる、化学グランプリへ参加応募の手続きをします。2022年(令和4年)の一次選考は、新型コロナウイルスの影響もあってオンラインで実施され、自宅での受験が推奨されていました。
問題を作成しているのは、高校と大学の教員たちです。基本的な内容をベースにしつつ、学校で習わない問題も出てくるため、化学式や構造式を応用させていく力も求められます。
これは化学の知識がどのように実生活に生かされているか、学生に発見してもらいたいという思いが込められているためです。問題の難しさに振り回されずに、粘り強く考える姿勢が欠かせません。
この一次選考で勝ち残った約80名が、二次選考へ進むことになります。
二次選考
二次選考は、基本的に2泊3日の合宿形式で行われます。試験時間は240分で、実験を行って得られた結果と考察をレポートにまとめて提出しなければいけません。
約4時間の試験というと、かなり長いように感じられます。しかし、試験を受けている生徒たちからするとあっという間で、むしろ時間が足りないと感じるようです。
試験後は、懇談会やみんなそろっての夕食の時間が設けられます。興味の方向性が似た若者が集まれば、話題に事欠くことはありません。試験を受けるだけでも、十分に有意義な時間を過ごせるでしょう。
代表決定
まずは年明けに、化学グランプリの成績優秀者と日本化学会の支部の推薦を受けた、約20名の代表候補のうちから、選抜試験をクリアした代表最終候補8名が決まります。
8名の生徒は3月頃、強化合宿とさらなる選抜試験を受けた後、4名まで絞られます。この4名が、国際化学オリンピックに出場する日本代表となるのです。
約20名の代表候補には大学レベルの教科書・参考書が配布され、8名の代表最終候補に残ると大学教員や専門家による学習支援を得られます。化学に興味のある中高生にとっては、またとない機会となるでしょう。
国際化学オリンピックに出場
代表が決定した年の7月、生徒たちは開催国でおよそ10日間にわたる試験を受けることになります。実験問題と筆記問題に分かれており、それぞれの所要時間は5時間です。
範囲は原子・化学結合から、物理化学・無機化学など13分野にわたり、国際レベルの高校化学教育に準じた問題が出されます。試験問題には各国の母国語が使用されるので、外国語が苦手だからといって不利になることはありません。
試験以外にも、参加生徒全員でスポーツやゲームをする機会があります。言語・文化の異なる同世代の学生と交流することは、将来に備えて広い視野を持つ貴重な経験になるでしょう。
過去の国際化学オリンピックでの成績は?
国際大会となると、気になるのは日本人学生の成績です。これまで出場した学生たちは、世界各国のライバルと戦い、どのような結果を残したのでしょうか。
2022年は全員金賞の快挙
2022年(令和4年)に中国にて開催された第54回国際化学オリンピックでは、なんと出場した日本代表4名全員が金メダルを獲得しました。2021年(令和3年)も3人が銀メダル、1人が銅メダルと健闘しています。
さらにさかのぼると、2020年(令和2年)には全員が銀メダル、2019年(令和元年)は金メダル・銀メダルがそれぞれ2名ずつです。世界中から選抜された約300人の中でメダルを獲得するのは、決して容易なことではありません。
この成績は、日本の化学教育が国際レベルにおいても引けを取らないことを示しており、素晴らしい成績を残した学生たちは日本の誇りといってよいでしょう。
国際化学オリンピックで優秀な成績をおさめた生徒の表彰:文部科学省
化学を通して世界を見てみよう
「化学」と聞くと、つい及び腰になってしまう人もいます。しかし、私たちが普段使っているものの中にも、化学を応用したものがたくさんあるのです。
まだ化学と生活を切り離して考えていない子どもは、好奇心旺盛に物事の仕組みを解明したがります。導き方次第では、驚くほど貪欲に知識を吸収していくかもしれません。
もし子どもが化学に興味を抱く様子が見られたら、国際化学オリンピック参加を目標にしてみてはいかがでしょうか。
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文・構成/HugKum編集部