子どものアタッチメント(愛着)には4つのタイプが。安定型なら大人になっても自立した人に。我が子はどのタイプ?

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幼い子どものメルトダウン(感情の爆発)に、多くの親は強いストレスを感じ、「平常心で子どもと向き合えない」「自分には子育てはむいていないのではないか」と思い悩む人も多いようです。そこで注目したいのが、PCIT(親子相互交流療法)。幼児がメルトダウンから回復するのを助け、親も自分の子育てに自信をつけるためのスキルとはどんなものなのでしょうか。
この記事では、そのスキルのベースとなる「アタッチメント」について考えます。

※ここからは『1日5分!PCITから学ぶ0~3歳の心の育て方』(加茂登志子・著/小学館 )の一部から引用・再構成しています。

PCITトドラーとは?

PCITという名前は、正式には「Parent-Child  Interaction  Therapy」(親子相互交流療法)といいます。「言うことを聞かない」「乱暴」「落ち着かない」「ぐずぐずする」など、問題行動の目立つ子どもと育児に悩む親の治療法として、1970年代のアメリカで開発されました。親子で一緒に遊んでコーチングを受けるところがユニークで、とても大きな治療効果があることでも知られています。

それをもとに開発された「PCITトドラー」は、2歳までの子どもの発達段階に合わせたものです。問題行動をなくすというよりは、予防に重点を置いているのが特徴で、PCITトドラーの主なねらいは以下になります。

①子どもの安定したアタッチメント(愛着)の育成と発達の足場づくり
②かんしゃくへの対応(感情発達が未熟な子どもの感情コントロールを助ける)
③親自身の感情コントロール
④親の言うことを聞く練習をする

子どものアタッチメント行動とは

この記事では①の「アタッチメント」にフォーカスを当てていきます。

児童心理学や児童精神医学では、子どもが世話をしてくれる人に抱きついたり、あとを追いかけたりして、身体的な接触を図ろうとしたり、泣いたり笑ったりしてその人の関心を引こうとする行動をアタッチメント行動と呼びます。

アタッチメント理論が生まれたきっかけは、精神科医ジョン・ボウルビィが第二次世界大戦後、戦争で早くに親を失った子どもたちの特徴的な行動に着目したことでした。その行動とは、知らない人に人見知りしないでべたべた接する、逆に他人に心を開かないで閉じこもるなどです。子どもの欲求に対する親の応答が不在であったり不適切であったりしたとき、子どものアタッチメントは不安定なまま固まっていくことがわかりました。

その後、アメリカの発達心理学者メアリー・エインズワースは、部屋にいる親子を引き離したり、子どもと知らない人をふたりだけにしてみたときの反応を分析し、アタッチメントにいくつかのタイプがあることに気づきました。そのタイプの数を、エインズワースは3タイプとしていましたが、近年は主に4タイプとされています。

アタッチメントの4タイプ

子どもと親のアタッチメントの4つのタイプを見ていきましょう。なお、このアタッチメント研究の対象となったのは、12〜18か月の子どもとその母親です。

安定型

親が見えなくなると子どもは不安そうにし、親が戻ると喜んで近づきます。不安なときは親にすがりつき、親を安全基地としています。

親は子どもが泣いたり困っていたりすると、安心させようと抱っこし、困っている原因を取り除こうとします。

不安定-回避型

子どもは親が消えても淡々としていて、知らない人と遊んだりできます。親が戻ったときにも反応は薄く、喜んだりしません。

親には子どものアタッチメント行動を拒否するふるまいが見られ、ボディタッチや笑顔は少なめです。

不安定-アンビヴァレント型

親がいなくなると不安で混乱に陥り、親が戻ってくると抱きつきながら叩いたりします。親にべったりしているのを好み、離れて探索行動ができません。

親の行動には一貫性がなく、気分次第で子どもの要求に反応したりしなかったりします。

不安定-無秩序型

子どもの行動に一貫性がなく、不自然な行動が目立ちます。親に対しておびえているような態度をとり、むしろ見知らぬ人に近づこうとする場合があります。

親は子どもに理解不能な態度を突然とることがあり、子どもをこわがらせたり、混乱させたりします。

アタッチメントの安定が人生を安定させる

赤ちゃんのアタッチメントのタイプは生まれたときから少しずつつくられ始め、1歳から1歳半くらいまでの間に型ができあがるといわれています。安定型のアタッチメントパターンをもつ子どもは、成人してからも安定した自律的な生活を送る可能性が高いとされています。

一方、虐待を受けている子どもには4つめの「不安定-無秩序型」のタイプが多いことがわかっています。このタイプの子どもは落ち着きがなく、感情の起伏が激しかったり、逆に薄かったり、かんしゃく(強い感情)を起こしやすいなどの特徴が見られることが多く、幼稚園や小学校ではしばしばトラブルメーカーになります。将来的にはパーソナリティ障害や、トラウマ関連疾患その他の精神疾患に発展する可能性があることも指摘されています。

もう手遅れ? 親も変われる?

でも(ここが大事です)、就学前、とくに2歳以下の子どもはまだ何もかもが発展途上です。自分というものを意識することも、感情のラベリングもまだ始まったばかりです。

もしも今現在のアタッチメントのタイプが不安定であっても、立て直しをすることは十分可能です。PCITトドラーを活用して子どもとの相互交流を豊かに楽しみ、親の安全基地としての機能を高めていけば、親子とも変化していくことができます。

え? 親も変われるの?  と思う人もいるかもしれませんね。確かにPCITが親のアタッチメントパターン(成人アタッチメント)まで変えるというエビデンスを出すまでにはまだ研究は進んでいません。しかし臨床の現場では、親(養育者)も確かに安定してきたと思える場面に多々出合います。子どものパワーがすごいのか、相互交流のパワーなのか、いずれにしても、大人にも変わるチャンスはあるんだということを実感します。

また、安定型の親でも自分の育児に自信がもてない場面があると思います。そんなときにはPCITトドラーを活用して子どもに向き合い、子どもが何を求めているのかを見て、自分の気持ちを言葉で伝えてみてください。

※ここまでは『1日5分!PCITから学ぶ0~3歳の心の育て方』(加茂登志子・著/小学館 )の一部を引用・再構成しています。

PCITトドラーを親子の日常に活かす

0歳~3歳の心と行動を健やかに育てるためのメソッド「PCITトドラー」は、科学的にエビデンスのある子育て法です。日本でも小児科、メンタルクリニック、児童相談所などで採用され、NHK「あさイチ」「ウワサの保護者会」などでも紹介されました。

『1日5分!PCITから学ぶ0~3歳の心の育て方』では、子どもの心がどのように発達するのか、保護者はどのように話しかければよいのか、子どもの自己肯定感を育む接し方など、今すぐ役に立つスキルが満載です。授乳・食事・おむつ替え・トイレトレーニング・お出かけ・遊び・夜泣きなど、具体的なシーン別に、親子の日常をハッピーにする声かけやコミュニケーションについて解説しています。

PCITのスキルを家庭に取り入れて、安定したアタッチメントを築く一助にしてみてはいかがでしょうか。

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◆著者紹介

加茂登志子(かも・としこ)

東京女子医科大学卒業。元東京女子医科大学精神神経科教授。
東京都女性相談センター嘱託医、東京女子医科大学附属女性生涯健康センター所長を経て、2017 年若松町こころとひふのクリニックPCIT 研修センター長および一般社団法人日本PCIT研修センター所長。PCIT International グローバルトレーナー。
著書に『1日5分で親子関係が変わる!育児が楽になる!PCIT から学ぶ子育て』(小学館)がある。
日本PCIT 研修センター公認サイト https://pcittc-japan.com/

構成/HugKum編集部
イラスト/オグロエリ

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