諦めきれなかった出産、卵子提供への挑戦
野田議員は14回の体外受精に挑戦するも、子どもを授かることができず、諦めきれず、渡米。法律があるアメリカで卵子提供を受け、日本で50歳のときに出産されたそう。
卵子提供では、顔が自分と似ないよう外国人の方に依頼
HuKum編集部:卵子提供、出産はアメリカで行ったのですか?
野田議員:いいえ、卵子提供だけアメリカで受け、出産は日本です。
だいたい、卵子提供をする方というのは、自分に似ているドナーの卵子をもらうことが多いようなのですが、それには抵抗があって。
「自分の都合で選んでどうするのよ」と感じたんです。
だから、私は、最初から顔が似ないように、海外のドナーから卵子をいただきました。そうすれば、生まれてきてくれた子どもに「あなたにはお母さんが2人いるのよ」と説明しやすいから……。
私は、出自を知る権利で苦しむ子どもが減り、多様な妊娠出産、子どもに隠し事を増やさず育児ができる、そんな世の中になることを目指しています。
生まれながらの心臓疾患と0歳時の脳梗塞、食道閉鎖症という病の中の子育て
妊娠17週で、野田議員のお子さんは、重度の障がいがあるとわかり、無事出産するや否や、そのまま集中治療室へ入られます。
HuKum編集部:その時の様子をお聞きできますか。
野田議員:入院中、心臓が止まってしまったんです。手術をすることになるのですが、当時の法律では、小児用エクモが使えず(現在は法律改定により使用できるようになった)大人用のものを使用。しかし、血流が合わず、左の脳の血栓が飛んで左半分の脳の機能を失ってしまいました。
HugKum編集部:お子さんは食事は口から食べることができない「食道閉鎖症」の病もあるのですよね。
野田議員:そうなんです。産後、食道が一本の管としてつながっていない「食道閉鎖症」の所見もみられ、食道に対する緊急手術も行われました。そこから、ずっと食事を口から食べることはできず、胃ろうです。
そんな息子も、現在は中学1年生になりましたよ!
学校では看護師さんが、私たちが用意した胃ろうのセットを注入してくれています。
でも、昔は、保護者の私たちが一緒に学校へ行き、注入せねばなりませんでした。高額医療なので、病院の手当ての負担はないかもしれないけれど、その分仕事に行けないなどの問題があり、この制度は変えなければならないと感じ、法律をつくることができました。今はこども家庭庁にその制度を移し、後押ししてもらっています。
法律でサポートすれば、親以外の誰かが巡回で面倒を見てもらえますので、保護者は収入を得ることもできるようになりました。
IQ40の息子は、2,3歳の知能のはずなのに
野田議員のブログでは、家族のコミュニケーションが取られている内容が書かれ、率直にお子さんの性格や普段どのように過ごしているのか、知りたくてお聞きしました。
HugKum編集部:息子さんはどんな性格ですか?
野田議員:もう、とにかく空気を読む子ですよ。字も書けないのに、言葉が達者で、難しいことも言いますし、コミュニケーション力が高いです。
会話のツボというか、こうつっこんだらウケるだろうなというのが本能的にわかるのかしら?
実際には、IQ40程度しかないんですよ、2、3歳ぐらいの知識と言われているのですが。何かを特別に教えたわけでもなく、本能ですかね。そして、成長するともっとかわいらしく育っていくんだろうなと思っていたら、まったく違い、どんどん悪い少年らしさが増してきています(笑)。
HugKum編集部:ご主人も育児に参加していますか?
野田議員:私の場合は、血が繋がってない子だけど九ヶ月間自分のお腹にいたから、親であるという自覚はあります。でも世の中の多くの男性はリアリティがないと思うんです。
なので、大変な家事育児には男性も積極的に参加をして欲しいですね。
実際に我が家はそうしていて、息子にもとてもいい影響を与えているんです。
お母さんは、仕事も親業もやってどうしてもオーバーワークになりがちです。仕事オンリーのお父さんがもっと育児をしてくれれば、家族のバランスが取れる気がします。
家のことをやってくれている夫に本当に感謝しています。一人では、絶対にできなかったことですから……。
今の若い女性に告ぐ、「卵子凍結」を!
最後の質問として、野田議員に、「卵子提供を日本でも可能にしたいと思いますか?」と伺ってみたところ、「いいえ!」ときっぱり。
「卵子提供より先に、若い女性には卵子凍結をしてもらいたい。私が最初に取りかかりたいことは、卵子凍結の保険適用なんです。卵子が若ければいつでも産めるんだということを自分で立証しましたから!
ほとんどの女性が、卵子がいかに貴重で希少かということを知らなさすぎるんですよね。そもそも、生理のない男性と競争することが間違っているのですが、高齢になってから妊活で後悔しないためにも、若いうちに、そして余裕がある時に卵子を預けておいて欲しい。そして、ライフステージに応じて、好きなタイミングで妊娠、出産をすればいいと思うのです。もちろん、100%の妊娠の確率ではないですが、有効な妊活だと思っています」と熱く語ってくれました。
また、ご自身の子育て経験で一番辛かったことは「育児書や子育ての情報を見ても、正解がわからなかったこと」と語る野田議員。そこで、野田議員は、今後、こども家庭庁にそこに関わる制度を変える法律づくりの後押しをしてもらおうと思っているそうです。
「今後はますます多様性の時代。どんな出産や子育てにも優しく寄り添える法律があるといいなと思っています」とほほ笑んでいるその眼には、確かな進歩を感じました。
野田聖子議員の「こども家庭庁」への熱い想いはこちら!
取材・文/森岡陽子 HugKum編集部