公立学校で革命を起こした「夢見る校長先生」
映画に登場するのは、すべて公立学校。私立じゃなくても、こんなに自由にできるなんて知らなかった!と驚きの革命を起こした6人の校長先生を紹介します。
通知表も教科書もない校長 福田弘彦先生 長野県伊那市立伊那小学校
「伊那小学校は、子どもたちがやりたいことができる場」
伊那小学校は、60年間通知表や時間割がない「総合学習」が続けられています。学校は職場ではなく、子どもと教師の「人生の邂逅の場」であってほしいと願っています。
通知表をなくした校長 國分一哉先生 神奈川県茅ケ崎市立香川小学校
「子ども同士が比べないというのが一番」
以前から通知表の数字だけで子ども同士が比べ合うことを無くしたいという気持ちがありました。「通知表」という手段ではなく、保護者とともに子どもの成長を見守りたいと考えました。
校則をゼロにした校長 西郷孝彦先生 東京都世田谷区立桜丘中学校
「公立学校も校長の裁量で大きく変えられます」
私は校則をゼロにして、定期テストを廃止しました。私が考えるたった1つの校長ルール、それは子どもたちが、学校で幸せな3年間を送ること。学校を何の心配もない夢の中にいるような場所にできないか、と考えたんです。
校長室を無くした校長 住田昌治先生 神奈川県横浜市立日枝小学校
「校長が機嫌が悪いのは犯罪です」
校長が上機嫌なら、先生たちも楽しく過ごせます。先生が楽しいと、子どもたちが安心する。安心した子どもの姿に、保護者の信頼が得られます。学校経営で最も重要なスキルは、校長がいつも上機嫌でいることなのです。
コロナ禍から子どもたちを守った校長 原口真一先生 栃木県日光市立足尾中学校
「マスクをしているというのは後々たくさんのリスクを負わせることになる」
私は感染症の文献を調べあげ、医者、学識者に直接問い合わせました、「教育の質」を落とさず、子どもたちを不安から守りたかったのです。コロナ禍で運動会、修学旅行などすべての行事を実施しました。感染者は、ずっとゼロでした。
宿題を無くした校長 宮崎倉太郎先生 東京都武蔵野市立境南小学校
「宿題なし、チャイムなし、校長の権威なし」
宿題が難しすぎて苦痛です、宿題が簡単すぎて勘弁してください、というお子さんがいます。毎日、同じ宿題を課すことが「平等」ではありません。宿題の点数は、通知表のあゆみには反映されませんという学校案内を出した上で、校長裁量で「宿題を禁止」しました。
上映スケジュール https://schedule.dreaming-
文科省公認!?公立学校はもっと自由でいい
宿題ゼロ、通知表なし、教科書なし…こんなに自由な公立学校があることに驚いた人も多いのではないでしょうか。元文科省事務次官の前川喜平さんは、「現場の自由が教育の命だ」と言います。「公立学校の通知表廃止、なんの問題もありません!」ということは、校長先生次第で学校が変わるということなんですね。
「保護者の方が3人くらいで校長先生にご相談してみるのもポイントですよ」と言うのは、尾木ママこと教育評論家の尾木直樹さん。大人数で行くと、先生が委縮してしまうから3人くらいがちょうどいい。クレームではなく、保護者も先生と一緒に学校について考えることも大切ですね。
オオタヴィン監督インタビュー
ー映画「夢見る校長先生」を観て、校長先生にこんなに権限があることに驚きました
文科省は校長先生たちに、どんどんやっちゃっていいと言っているんですよ。じゃあどうして今の学校はほとんど変わらないの?って思いますよね。映画を観てぜひ、校長先生の常識をこわしてほしいですね。保護者の方で校長先生と話したことがない、顔も知らないという人は多いと思います。学校の全権は校長先生しかもっていないから、どんどん話したいですよね。
-今の時代に必要な公教育とはどのようなものなのでしょうか?
親って自分がした苦労をさせたくないという気持ちがありますよね。学歴経験で子どもに安全対策をするんだけど、いまの時代は激変期で今までの親の価値観で子どもを育てたり高学歴にしても、子どもの為になるかどうかわからない。だったらその子の得意なことを伸ばしながら楽しく育てたほうがいい。その子が一番好きなことをやらせるのがいいですよ。一生懸命、夢中になってやることがあるほうがポテンシャルがあると思います。
もっと子供に好きなことやっていいんだよと。不得意なことを伸ばすよりも、すきなことを楽しんで伸ばすことを先生も親も言えば子どもは絶対変わりますから。
映画館の大きなスクリーンで先生たちのエネルギーを感じ、いまの学校や教育に疑問を持ったらぜひアクションを起こしてほしいですね。
先生は職業ではなく人生の邂逅なのだ
2023年8月5日(土)にシネスイッチ銀座で開催されたトークショーでは、5人の夢見る校長先生がゲストで参加。映画にも登場した東京都世田谷区立桜丘中学校卒業生も飛び入り参加しました!不登校だった彼女は桜丘中学校に転校し、楽しい学校生活を経て現在は教員を目指して勉強中です。監督から、卒業生に西郷先生に一言お願いしますと言われて答えた言葉が「I love you」。その一言に、すべての想いが込められていました。
映画に登場する校長先生は、ほとんど校長室にはいません。学校をまわって生徒や先生と話していることが多く、校長室は子どもたちに開放されています。自然に、当たり前のように校長先生と触れ合う時間があります。
映画を観たあとに、こんな校長先生がいる学校いいなぁ…と思って終わるのではなく、私たちには何ができるのか考えてアクションを起こしていきたいですね。
映画「夢見る校長先生」
ナレーター:小泉今日子
テーマ曲:RCサクセション
プロデューサー・撮影・監督:オオタヴィン
公式HPは>こちら
取材・文/やまさきけいこ