ビジネスの世界でも注目される「アート思考」は子どもにも大切?美術館や絵画教室に行くべき? 「感受性」と「感性」をともに育むには

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「アート思考」「感性を伸ばす」といった教育が着目され、親は子どもの教科学習以外にも目配りをしないといけない時代…? タブレット教材 RISU Japan 代表で、30億件の学習データから小学生の学びを分析する今木智隆さんに、新時代に求められる子どもの「感性」とその育み方について伺います。

子どもの感性を伸ばすために大切なことは?

週末は美術館に出かけるというママ友・パパ友親子! うちの子は元気に走り回って遊んでるけど、美術館には全く興味はなさそう…。

芸術の秋、各地域で子ども向けのワークショップや美術展などが数多く開催されていますね。

「詰め込み教育」への反省から「考える力」が重視されるようになり、最近では「感性」が教育のキーワードとして注目されています。皆さんの周りにもそうした絵画や音楽などの習い事をされているご家庭も多いのではないでしょうか。

ただ、感性を伸ばすというのは、なかなか捉えどころがないもの。子どもと一緒に美術館やクラシックコンサートに行ったり絵画教室などに通おうと思っても、「うちの子は大人しくアート鑑賞なんてできそうもない…」と心配されるおうちの方も多いかもしれません。

そこで今回は子どもの感性を伸ばすために大切なこと、おうちでできる工夫についてご紹介したいと思います。

ビジネスの世界でも注目される「アート思考」

変化が大きく速い現代社会、「単純作業をこなす」「資料をまとめる」などこれまで人が担っていた仕事がどんどん自動化されていく中で、ビジネスの世界でも「新しいモノを生み出す力」つまり「アート思考」が注目されています。美術館に足を運んだり、絵画鑑賞してディスカッションしたりなど、「新しいモノ」を生み出すために「新しい考え方」つまり「感性」を大人たちも必死に学んでいるのです。

では、これから大人へと成長していく子どもたちにとって、「感性」を育てるために今大切なことは何でしょうか?

「感受性」と「感性」の違いとは?

まず「感性」とは何でしょうか?

「感性」について辞書で調べると、似た言葉の「感受性」が出てきます。よく似た言葉ですが、「感性」と「感受性」でその意味は大きく異なります。

「感受性」とは、物事や事象について受動的に「感じる心」や「感じる力」のこと。見る・触れる・聞く・嗅ぐ・味わうといった五感を通じて得た感情を受け入れる力であり、「心の豊かさ」といえます。

一方の「感性」とは、その体験から受けた感情を「自分で表現する力」のこと。表現は絵や言葉のほかにも身体の動きなどが挙げられます。つまり「心をカタチにすること」といえます。

日常で例えるならば、花を見て「キレイだな」と感じる(感受性)、そして気持ちを絵や言葉あるいは身体で表現しカタチにする(感性)、ということ。

つまり大切なのは「感受性」と「感性」を一緒に育てていくことなのです。

美術館や絵画教室には連れて行ったほうがいい?

美術館に通ったり絵画教室に通うことは、感性を伸ばす1つの方法です。お子さんが興味を持っているのなら、どんどん連れて行ってあげましょう。

しかしそのベースに必要となる感受性が十分に育っていない状態で無理に絵を見せたり描かせたりしても、どう鑑賞していいか、何を描いたらいいか分からず、子どもは困ってしまいます。

美術館や絵画教室に限らず、まだお子さんの興味が十分ではない状態で、周りがやっているからと無理に押し付けると、楽しめなくなるだけでなく、「嫌い」「苦手」といったネガティブな印象を植え付けてしまう可能性さえあります。

私も、子どもがまだ小さい時に一緒に水族館に行ったのですが、わずか2分で「もう帰る」と言い出しました。

せっかく来たのにと思いながらも、ここで「あなたのために来たんだから!」と無理強いすれば、今後興味を持つことはなくなる、この子には今ではないのだなと、水族館を後にしました。

しかし、水族館を出て乗ったバスには大いに興味を示しました。2周してバス停の名前をしっかり覚えて帰ったほどです。

子どもが興味を示すタイミングはどこにあるかわかりません。今はその時ではないなら、無理強いすることだけは避けてください。

子どもの「感性」を豊かにするポイント

子どもにとっては、特別なお出かけでなくとも、毎日の日常にも新しい発見や感動がたくさんあります。感性を豊かにするために大切なのは「日常でのおうちの方との関わり」です。ここでは、ご自宅で簡単にできる方法を3つご紹介します。

①五感を刺激させる

まずは感じる力(感受性)をつけるためにも日頃から五感をたくさん刺激してあげましょう。五感を刺激する、といっても難しく考える必要はありません。日々の暮らしには五感を使うシーンがたくさんあります。

おすすめなのが五感をすべて使う、料理やお菓子づくりです。「どんな香りがするかな?」「どんな味がする?」「ジュウジュウと焼ける音がするね」など、会話をしながら五感に注目するよう導いたり、子どもが感じたことを少し言葉で補ってあげたり、驚きや楽しさを共感しながら、感じたことを表現できるようサポートしてみてください。

②絵本やごっこ遊びも有効

感性が豊かな子の特徴のひとつが「想像力の豊かさ」です。

例えば犬を見て「可愛いな」と思うだけでなく、「笑っているみたいだな」「一緒に遊んで欲しいのかな」など、さらに一歩進んだ考えをしていることなどが挙げられます。これは物事を一方向だけでなく、いろんな視点から感じとる力によるもの。そういった力をつけるのに、絵本を読むことやごっこ遊びは有効です。

絵本は現実では味わえないような世界を体験でき、登場人物の気持ちなど見えない部分を推測する力が養われます。「どこが面白かった?」「登場人物はどんな気持ちだったのかな?」など、感想を話し合うのもいいですね。

ごっこ遊びも、自分で登場人物やストーリーを自由に決められることから想像力が湧きやすい遊びです。身近にあるものを何かに見立てたり、工夫することでぐんぐん想像力が育まれます。

③子どもが今何に興味を持っているか、一歩引いて観察してみる

何に興味を持つかは子どもそれぞれです。

たとえば算数が大好きなあるお子さんは、2歳の頃テレビのリモコンをじっと見つめていたそう。お母さんが「何を見ているの?」と話しかけたところ「これはなに?」と数字の書いてあるボタンを指さして尋ねたので、お母さんは「数字の1、2、3だよ」と教えてあげました。すると、それ以来、身の回りのいろいろな数字を読み上げたり、モノを数えたりして算数の世界に夢中になったそうです。

このお子さんにとって、まさにこのとき「数字」が感受性を刺激したのでしょう。そのタイミングを逃さず数の世界が広がるきっかけを作ってあげたお母さんは、普段から様子をよく観察されていたのだろうと思います。

その時々によってお子さんの感受性が刺激されるものがあるはずです。何気ない日常の中で見せるそうした姿を見逃さないためにも、少し引いて観察してみるのが大切です。

親だからこそ子どもの感性に寄り添うことができる

積み木やブロックで好きな形を作ったり、歌を歌ったり、ダンスをしたり、子どもたちはさまざまな形で感受性を表現します。そうした時間を親子で共有していくことで、ますます表現することが楽しくなり、それが感性を豊かに育てていくことになります。

そうした中で、もしお子さん自身が「もっと深く学んでみたい」と興味を持ったら、習い事の教室を体験したりワークショップに参加したりしてみるのもよいでしょう。

まずは一番近くで見守るおうちの方だからこそ気づける発見や感動に寄り添って、お子さんの感性が豊かに育っていく土台作りをサポートしていただければと思います。

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記事執筆

今木智隆|RISU Japan株式会社代表取締役
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。ユーザー行動調査・デジタルマーケティングのbeBitにて国内コンサルティング統括責任者を経験後、2014年、RISU Japan株式会社を設立。小学生の算数のタブレット学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムを考案。国内はもちろん、シリコンバレーのスクール等からも算数やAI指導のオファーが殺到している。

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構成/HugKum編集部  

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