イスラエルとハマスとの戦闘が激化!いま大きく変化する中東情勢、日本にとっても対岸の火事ではない【親子で語る国際問題】

世界で起こっている問題を、家庭内で子どもたちと一緒に学んでいきましょう。この連載では国際政治学者の国際政治先生が、いま知っておくべき国際問題を分かりやすく解説していきます。今回は、激化する中東情勢について取り上げます。

激化する中東情勢 日本への影響は?

イスラエルとハマスとの戦闘が激化し、中東情勢が悪化する中、中東には多くの日本企業が進出し、現地では多くの駐在員とその帯同家族が生活を送っています。また、日本はサウジアラビアやUAE、カタールなどから多くの石油を輸入しており、実に日本は輸入する石油の9割を中東に依存しており、今後の日本へ様々な影響が懸念されています。では、今後どのような影響が考えられるのでしょうか。

イスラエル発着のフライトは次々と停止に

まず、海外在留邦人の安全という視点があります。これまでの事態を受け、欧米の主要航空会社は次々にイスラエル発着のフライトを停止しました。7日のハマスによる攻撃を受け、10月10日時点で、ドイツのルフトハンザ、エールフランス、ハンガリーのウィズエアー・ホールディングス、米国のデルタ航空やアメリカン航空、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスなどが相次いでイスラエル便の運航を停止しました。
現在でもブリティッシュ・エアウェイズ(BA)やエミレーツ航空などは運航を継続しているようですが、通常に比べるとイスラエルと外国を結ぶフライトは半分以上減少しています。

イスラエルに在留している日本人の国外退避を進めている

それに伴い、イスラエルに在住する日本人の国外退避が進んでいます。イスラエル国内には民間シェルターがあちらこちらに設置され、ミサイルなどを撃ち落とす防空システムも発達しており、最大都市テルアビブに残る日本人もまだいるようですが、日本政府は民間チャーター機を手配したり、自衛隊輸送機を現地へ送ったりと、邦人の退避を進めています。
今後情勢がさらに悪化すれば、民間航空機のフライト数は減少し、チケットを購入することが難しくなることから、日本企業の間では今のうちから日本へ帰国させたり、安全な第三国に避難させたりする動きが広がっています。

イスラエル以外の中東諸国への影響は現時点では少ない

一方、サウジアラビアやUAE、カタールなど他の中東諸国に滞在する日本人への影響は限定的です。今起こっていることはイスラエルの領域を超えて戦況が拡大する可能性は極めて低く、戦況が拡大するような軍事行動をイスラエルがとれば、アラブ諸国だけでなく欧米など諸外国からイスラエルへ厳しい目が向けられるようになります。

日本のエネルギー事情は中東に大きく依存している

しかし、情勢の行方によっては、中東に滞在する日本人だけではなく、日本のエネルギー事情にとって死活的な石油事情にも大きな影響が出る可能性があります。

イランとハマス VS イスラエル という構図

そのカギを握るのがイランの存在です。イランは長年ハマスを支援し続け、イスラエルとは犬猿の仲で、今回の攻防でもイスラエルが過剰な軍事行動を継続すれば介入せざるを得ないと警告しています。

イランを支持する武装勢力も活動

また、イスラエルと国境を接するレバノンやシリア、中東のイラクやバーレーン、イエメンなどにはイランを支持する武装勢力が活動しており、特にレバノンのヒズボラと呼ばれる組織は、今回の件を受けイスラエル領内への攻撃を仕掛け、イスラエルは南方のガザ地区だけなく、イスラエル北部からも敵を抱える状況になっています。

今後イランがハマスを救済するため、ガザ地区での攻防に直接介入する可能性は低いですが、中東各地のイランを支持する武装勢力が反イスラエルを目的とした攻撃をエスカレートさせる恐れがあります。そうなれば、イスラエルがレバノンやシリア、イラクなどへ限定的な空爆を行う可能性があり、今日の紛争は中東地域全体に影響が拡大するかもしれません。

日本の生活にも影響が出る可能性も

中東全体を覆う緊張という事態になれば、日本へ運ばれる石油の値段が不安定化し、一気に跳ね上がり、我々の生活を直結することになります。日本は米国など他の先進国と比較しても、中東への石油依存が極めて高い国で、これは同時に日本の脆弱なところを示しています。こういったところを考慮すれば、日本としても石油などエネルギー資源の輸出先の多角化などを今後いっそう強化する必要があるでしょう。今日の中東情勢は、我々の日常的な生活と決して対岸の火事ではないのです。

ポイント解説

ハマスを支持している国:イラン

イランを支持する武装勢力:レバノンやシリア、中東のイラクやバーレーン、イエメンで活動している勢力がいる

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記事執筆:国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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