中枢神経の基本情報
まずは、中枢神経とはなにか、どのような役割をしているのかについて解説していきます。
中枢神経とは?
中枢神経は大脳、小脳、間脳、中脳、橋、延髄といった「脳」と「脊髄」から構成されています。
脳は思考、行動、記憶、感情などを司る器官で、ヒトの体を動かすときに司令を出しています。一方の脊髄は多くの髄節に分かれていて、脳と体のすみずみをつないでいる神経の束です。
脳にある脳幹の下に脊髄が続き、2つの器官はつながっています。
中枢神経の位置はどこにあるの?
中枢神経である脳は頭に、脊髄は首から腰のあたりの背中側にあります。
脳は重さが約1500gあるといわれていて、体重の約2%を占めています。
脊髄は太さ約1.0〜1.2cm、長さ約40〜45cm、重さ約25〜27gといわれています。なお、脊髄に出入りしている脊髄神経の数は31対です。
中枢神経の重要な役割
脳と脊髄からなる中枢神経には、全身から集まってくる情報を処理し、司令を出す役割があります。いわば体全体をコントロールする「司令塔」のような器官なのです。
中枢神経は体全体をコントロールする重要な器官であるため、脳は頭蓋骨、脊髄は脊柱という丈夫な骨で守られているのも特徴です。
末梢神経の基本情報
次に、末梢神経についての基本情報を解説していきます。
末梢神経とは?
末梢神経は、脳と脊髄の中枢神経以外の神経のことです。末梢神経は、中枢神経と体の内外の各器官に分布する神経とを結んでいます。
末梢神経の形は、細い神経細胞が束になった状態です。この束が血管とともに構成されています。
末梢神経には、いくつか種類があります。「体性神経系(脳脊髄神経系)」と「自律神経系」の大きく2つに分けられます。
末梢神経の位置はどこにあるの?
脳と頭部、顔面、眼、鼻、筋肉、耳をつなぐ神経や、脊髄神経をふくむ脊髄と体の他の部位をつなぐ神経、体内にある1000億個以上の神経細胞、それらすべてが末梢神経で、体の中に広く分布しています。
末梢神経の役割1:感覚を伝える・感覚神経
末梢神経には感覚神経があります。この感覚神経は、体性神経系のひとつです。触覚、痛覚、温度覚といった皮膚の感覚や、自分の体の位置や姿勢を感じる「位置覚」、振動を感じる「振動覚」などを中枢神経に伝える役割があります。
末梢神経の役割2:筋肉を動かす・運動神経
体性神経系のひとつに、運動神経があります。この運動神経は、中枢神経からの司令を伝えて全身の筋肉を動かす役割があります。
末梢神経の役割3:各器官の調整役・自律神経
自律神経系では体温や血圧の調節、消化や排泄、呼吸といった内臓の機能のコントロールをします。
なお自律神経には、交感神経と副交感神経があります。交感神経には活動や緊張させるはたらきが、副交感神経には休息やリラックスさせるはたらきがあります。
痛みや温度を感じる仕組み
痛みや温度を感じる仕組みはどのようになっているのでしょうか。
痛みや温度から感じた情報は感覚神経を通り、脳に伝達されます。脳で情報が整理されると、脳は司令を出し、運動神経を通って痛みや温度を感じた部分に伝達されるのです。
中枢神経と末梢神経のつながり
中枢神経と末梢神経の関連性を見ていきましょう。
二つの神経系の協力
中枢神経と末梢神経間で、どのように情報が伝達されるのでしょうか。
感覚器が刺激を受けると、その情報を末梢神経が中枢神経に伝えます。中枢神経に伝えられた情報はそこで整理・処理され、今度は司令を出します。その司令が末梢神経を通り、筋肉に向かって体を動かすのです。
伝達速度はどのくらい?
上記のように、体が刺激を受けて反応するまでの伝達速度は約40から100ミリ秒(ミリ秒は1000分の1秒)といわれています。
なお、とっさに反応が出る「反射反応」の時間は約250ミリ秒(4分の1秒)といわれています。
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日常生活での神経の働き
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スポーツ時の神経の動き
ここではスポーツ時の神経の動きの例として、ボールを投げるときの神経の動きを紹介していきます。
【1】目から入ってきた情報が末梢神経を通って、中枢神経(脳)に伝わる。
【2】脳は伝わってきた情報をもとに「ボールを相手に投げる」という司令を出す。
【3】末梢神経を通じて司令が筋肉に伝わり、相手にボールを投げる。
怪我や病気と神経
神経の怪我や病気には、さまざまなものがあります。ここでは、代表的なものを2つご紹介します。
神経の怪我で代表的なものが「脊髄損傷」です。脊髄損傷とは、交通事故やスポーツなどによる怪我などで脊髄が傷ついた状態のことをいいます。脊髄が傷つくと、感覚機能や運動機能に障害が起こる可能性があります。また首から下の体が動かせなくなったり、体温調節がうまくできなくなるという症状もあります。
神経の病気で代表的なものは「自律神経失調症」です。自律神経失調症は、自律神経のバランスが崩れてしまい、体の器官がうまく働かなくなりさまざまな症状が出ます。たとえば体が疲れやすい、不眠、頭痛・めまい、不安、集中力がない、のどがつまる、汗が出ない、腹痛などです。おもな原因はストレスや食生活の乱れ、睡眠不足などといわれています。
神経はデリケートなものですから、正しい生活習慣を身に着け、日頃から行動には十分注意し、怪我をしないようにすることが大切です。
未来の神経医学の可能性
前述した脊髄損傷は、根本的な治療法がいまだにありません。しかし昨今の研究では、iPS細胞を用いた脊髄再生医療が実現する可能性があるといわれています。
iPS細胞は、細胞を培養して人工的に作られた多能性幹細胞のことです。2006年に京都大学の山中伸弥教授らが世界で初めて作製に成功。その功績をたたえ、2012年にはノーベル医学・生理学賞を受賞しました。このiPS細胞は、再生医療や薬の研究に役立つ可能性が高いといわれており、経医学にも役立つ未来が期待できます。
自立神経を整える方法
自律神経は、自分で整えることができます。次の生活習慣を心がけてみてください。
●生活リズムを整える
●ストレスを溜めないように、発散方法を用意しておく
●3食バランスのよい食事を心がけ、暴飲暴食しない
●ストレッチやヨガ、ウォーキングなどのゆったりとした運動を習慣づける
●6〜7時間の睡眠時間を確保する
●日差しを浴びて体内時計を整える
中枢神経・末梢神経の連携で体が動く
体に命令を出す司令塔の「中枢神経」と、外部からの情報を中枢神経に届け司令を体に伝える伝達係の「末梢神経」。これらが体の中でどのように情報が伝達されるのか、そして体がどのようにして動くのか理解できたでしょうか。この2つの神経がなければ、正しく体を反応させ、動かすことができません。中枢神経・末梢神経は、それくらい重要な役割をもつ神経なのです。
重要な役割をもつ脊髄や神経を傷つけると、体をうまく動かせなくなったり、機能しなくなってしまいます。そのようなことにならないよう、自律神経を整えて怪我のないように生活していきましょう。
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文・構成/HugKum編集部