脊髄の位置と構造
整体やカイロプラクティックなどで出てくる「脊髄(せきずい)」。からだの大切な部位ということはわかっていても、具体的にどこにあるのか、何でできているのか、知っている方は少ないかもしれません。まずは脊髄の基本から見てみましょう。
脊髄とは
脊髄とは、わかりやすく言えば、脳から続く神経の束。太さ1㎝ほどの円柱形が長さ40㎝ほどあるとイメージするとわかりやすいでしょう。
この脊髄は、脳が出した指令をからだの各部位に伝える連絡通路です。また、からだが外部から何かの刺激を受けたとき、その刺激に関する情報が脊髄を通って脳まで伝えられる仕組みです。
例えば、手や足が痛みやしびれを感じたとき、それを脳に伝えるのも脊髄。手や足を動かそうと脳から指令を出して動かすのも、脊髄を通って伝わるのです。
また、神経は「中枢神経(ちゅうすうしんけい)」と「抹消神経(まっしょうしんけい)」に分けられます。中枢神経は脳と脊髄から成る、からだの中心的な働きを担っており、抹消神経はからだの各部位に分布している神経です。つまり、脊髄はからだの大切な中枢神経を構成しているのです。
脊髄の場所:脊柱の中の秘密
脊髄があるのは、脊椎(せきつい)です。脊椎とは、背骨のこと。脊椎は首の方から順に、頸椎(けいつい)7個、胸椎(きょうつい)12個、腰椎(ようつい)5個、仙骨1個、尾骨1個でできています。
- 頸椎(けいつい)7個
- 胸椎(きょうつい)12個
- 腰椎(ようつい)5個
- 仙骨1個
- 尾骨1個
この脊椎は、トンネルのようにリング状になっている部分があり、そこを脊髄が通っているのです。脊椎は脊髄を守るように取り囲んでいるわけです。
脊髄の断面:白質と灰質
脊髄は円柱形とご紹介しました。この構造を断面にすると、「X」や「H」の文字のように見えます。この「X(またはH)」の文字の部分が「灰白質(かいはくしつ)」で、それ以外は「白質(はくしつ)」と呼ばれます。灰白質は、灰白色に見えることからこう呼ばれ、白質は白色に見えると言われています。
脊髄の主な機能
次に、脊髄にはどんな機能があるのか見てみましょう。
モーター機能:動きの指令センター
脊髄のまずひとつめの機能は、からだの動きに関する指令を出すこと。
歩いたり、手を上げたり、からだをひねったり。そんな動作ひとつひとつについて、脳が指令を出すと、脊髄を通ってそれがからだの各部位に伝わるようになっているのです。つまり、脊髄はからだを動かすときの指令センターの役割があるのです。
感覚機能:外界の情報を脳へ
モノを触って冷たさを感じたり、からだが何かにぶつかったり。そんな周囲から刺激があったときは、それを伝えるのも脊髄の機能としてあります。
その場合は、外界から得た刺激に関する情報が、脊髄を通って脳に伝わります。それによって、私たちは「冷たい」「痛い」といった感覚になるのです。
反射のメカニズム:瞬時の反応
そして、もうひとつ脊髄の機能としてあるのが、反射。例えば、火傷するほど高温のモノに触れたら、瞬時に手を引っ込めることがあるでしょう。そんな反射は「脊髄反射」と呼ばれるものです。
通常なら、皮膚で得た感覚が脊髄を通って脳に「熱い」という情報が伝わり、それによって今度は、脳が「手を引っ込める」という動作の指令を出します。でも、これでは指令と伝達に時間がかかってしまいます。そこで、脳まで情報が伝達することなく、脊髄が指令を出すことがあるのです。これが「脊髄反射」です。
脊髄反射は脳に情報が伝わっていないため、私たちは無意識のうちに、手を引っ込めるという行動をとっているのです。これは、からだの安全を守るために備わった脊髄の大切な機能です。
脊髄の損傷とその影響
脊髄がとても大切な部位であるとわかったことでしょう。でも脊髄は、傷ついたり死んだりしてしまうと、修復や再生することが難しいと言われています。
損傷の原因とタイプ
脊髄の損傷は、損傷を受けた部位によってさまざまな障害が生じる可能性があります。一般的に、損傷を受けた部位が上のほう(首に近い)だと、影響も大きくなる傾向にあります。損傷の原因として考えられるのは、次のようなことです。
・強い衝撃
転倒、高い場所からの転落、交通事故など
・高齢・老化
また老化によって骨がもろくなり、ちょっとした転倒でも脊髄を損傷するということも考えられます。
脊髄損傷後の体の変化
脊髄は、からだの動きを伝達する大切な回路です。その部分が損傷すると、さまざまな影響をもたらします。
もっとも多く考えられるのは、運動機能の消失、感覚の麻痺。これまでは自由に自分の意思でからだを動かせていたのに、からだを動かそうと思っても、その通りに動かないことになり、肉体的にもそして精神的にも大きなダメージとなります。
現代医療の進歩:治療とリハビリテーション
脊髄が損傷した場合、からだを動かす機能や、感覚の機能が少しでも残っているのなら、手術して回復する可能性があります。脊髄と血管や神経が通っている脊柱管という部分が狭くなっているなら、手術して回復させることが期待できます。
脊髄を守るための生活習慣
毎日、何気なく使っているからだが自由に動かせなくなったら大変。そこで、脊髄を守るためにできることはないでしょうか?
正しい姿勢の維持
脊髄があるのは背骨です。だから姿勢が悪く、それが長年続いてしまうと、首、腰などの骨や脊髄が圧迫されてしまい、損傷を受けてしまう可能性があるのです。
現代はスマホやパソコンが欠かせない生活ですが、スマホを長時間見続けたり、座ったままパソコンを使い続けたりしていると、背骨の一部が圧迫されかねません。ふだんから正しい姿勢で歩くようにして、長時間同じ姿勢でスマホやパソコンを使わないように気を付けましょう。
スポーツや遊びでの安全対策
スポーツや遊びで脊髄を損傷する可能性があるのが、ラグビーやアメリカンフットボールなどの激しい競技。そのほか、器械体操、プールでの飛び込みなどがあります。
そのようなスポーツには、さまざまなケガのリスクがありますので、それとあわせて脊髄損傷の可能性もあることを理解して、危険な行動はしないことが大切でしょう。脊髄を守るには、バックプロテクターというものもあります。
脊髄を強化する食事と運動
骨がもろくなってしまうと、それによって骨髄がダメージを受ける可能性も出てきます。牛乳、ヨーグルトなどの乳製品、小魚、大豆製品などでカルシウムを積極的にとりましょう。
からだの通信の重要ライン・脊髄
脊髄は、からだを動かしたり、感じたりするときに大切な存在です。私たちは、当たりまえのようにからだを自由に動かして、周囲のものを触って感じたりしています。そんな脳からの指令を伝えたり、外界からの情報を脳に伝えたりしているのが脊髄です。
脊髄がダメージを受けたら、自由にからだも動かせなくなり、不自由なことになりかねません。そんな脊髄の働きを知り、脊髄の大切さについて認識を深めましょう。
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文・構成/HugKum編集部