反射とは何か?
そもそも「反射」とは、どういうことを言うのでしょうか?
基本的な反射の定義
火傷するような熱いものに触ったら、さっと手を引っ込める……。私たちが頭で考える前に、からだが動くこのような動作。「反射」とは、このように周囲の刺激に対してからだで起きる筋収縮や、特定のからだの応答のことを言います。
例えば、「走ろう」と思って脚を早く動かしたり、「ものを食べよう」と思って箸で食べ物を口に運んだり、そのようなからだの動きは私たちが頭で考えて、脳から命令が出されています。それに対して、「反射」は脳から命令が出るのではなく、脊髄から命令が出ます。そのため、反射は無意識でからだを動かすことになるのです。
反射が起こる理由
もし熱いものに触れても、そのまま「熱い」とすぐに気づけず、手を触れ続けていては火傷してしまいます。モノが突然自分に向かって飛んできたときに、すぐに体をよけなければ、それにぶつかってケガをしてしまいます。
つまり、反射があることで、私たちは自分のからだを守っているのです。反射は私たちを危険から守るための大切なアクションというわけです。
反射の仕組み:反射神経の役割
転倒時にとっさに手が前に出たり、ものが飛んで来たらさっとそれをかわしたり、そんな素早い動きができることを「反射神経がいい」と言ったりします。
しかし、医学用語で「反射神経」と呼ばれるものは存在しません。ただ、からだが反射するとき、どんな仕組みになっているのか、見てみましょう。
反射の経路:刺激から反応まで
一般的に「神経」と呼ばれているものは、脳までつながる「中枢神経」と、中枢神経からからだの末端部分までをつなぐ「末端神経」に分けられます。
例えば、私たちが外に出て「寒い」と感じる場合について考えてみましょう。手や脚の皮膚が外の低い気温を感じて、「寒い」という外からの刺激を受けます。するとそれが電気信号で抹消神経から中枢神経に伝わり、脳まで伝えられて、「寒い」と感じます。
でも、火傷するような熱いものに触れたときは、この刺激が伝わる経路が変わります。手や脚などの抹消神経から「熱い」という電気信号が脊髄まで伝わると、脳までその信号が伝えられることなく、「手をひっこめる」という信号を脊髄が出すのです。
反射弓の説明
反射弓(はんしゃきゅう)とは、脳を通らない反射の経路のことを言います。通常なら外から得た刺激が脳まで伝えられるのですが、一刻も早くからだを動かして危険から身を守らなければならないような場合は、その情報が脳まで伝えられることなく、脊髄が命令を出します。
こうすることで、反射行動を素早く起こして、からだを守っているのです。反射にかかる時間は、0.1秒以下とも言われており、瞬時にからだが反応できる仕組みになっているのです。
中枢神経と末梢神経の関連
中枢神経は、外から得た刺激を脳や脊髄に伝える、いわば本部のような役目。この本部で処理された指令が、今度は末梢神経に伝わって、筋肉を動かす仕組みになっています。
生活の中での反射の例
「反射」と聞くとイメージがわきにくいかもしれませんが、私たちの日常生活では反射運動を行う場面が数多くあります。いくつかの具体的な例を挙げてみましょう。
手を火から引き寄せる反射
例えば、キッチンでガスコンロに突然火がついたとします。近くに手を置いていたら、無意識のうちに手を引っ込めるはずです。そのまま火の熱さに気づかず手を置き続けていたら、大火傷することになってしまいますよね。
手が火に触れて、「熱い」と感じる瞬間に、反射で手を引っ込めるように脊髄から指令が出されている証拠です。
膝蓋反射とは?
膝蓋反射(しつがいはんしゃ)とは、座った状態でひざ下を軽くたたくと、本人は動かそうとしていなくても、ポンと勝手に足が上がります。
これは、筋肉は伸ばすと縮むという性質があるため、ひざの腱が叩かれて延ばされることで、それにつながる筋肉が収縮して足が自然と上がってしまうという反射です。この膝蓋反射も、脳を経由しない反射経路で伝わります。
光を浴びた時の瞳孔の反応
瞳孔(どうこう)とは、目の「黒目」と呼ばれる部分の中央にある黒い部分のこと。瞳孔は、周囲の環境にあわせて大きくなったり小さくなったりできて、目に入る光の量を調整する働きがあります。
そしてこの瞳孔が開いたり閉じたりする動きは、瞳孔反射と呼ばれるもの。私たちが意識して行うことではなく、周囲の明るさに応じて反射活動として行われます。
よく眼科で、ペンライトの光を瞳にあてて検査しますが、これは強い光をあてて瞳孔が収縮しているのか検査しているのです。
赤ちゃんに特有の原始反射
大人にはないけれど、赤ちゃんだけに起きる特有の反射があります。例えば、赤ちゃんの手に指を持って行くと、自然とぎゅっと握り返します。また赤ちゃんの唇になにかが触れると、赤ちゃんはそれを吸い続けようとします。
これらは原始反射と呼ばれるもの。外からの刺激に対して無意識に起こる反射行動で、生まれてから3~4か月頃までにこのような反射が現れ、成長とともに少しずつ消えていきます。
自動歩行
赤ちゃんの足の裏に床が触れると、右足の次に左足、という具合に足を出して歩き出そうとする動きを示します。
これを自動歩行といい、赤ちゃんだけに現れる原始反射のひとつにあたります。生まれてすぐから現れて、生後2~3か月くらい経つと自然と消えていきます。
反射の重要性と体への影響
私たちが意識することなく、自然とからだが反応する反射。そんな反射にはどんな意味があるのでしょうか?
反射の保護的な役割
反射の大切な役割の一つは、私たちのからだを守ること。危険が迫ったときに、一秒でも早くからだを反応させることで、その危険から守ってくれる役割があるのです。
学習や環境変化による反射の変化
反射には、私たちがこれまでに経験したことや体験した環境などの情報をもとに生まれることもあります。
例えば、梅干しを見ると自然と口の中に唾液が出るのは、「梅干しを食べる=酸っぱい」という経験があるから。梅干しの存在を知らない海外の人や、食べたことのない人なら、梅干しを見ても、私たちのように唾液が出ることはありません。そんな風に、これまでの経験によって反射が行われていることもあるのです。
反射障害とは?
私たちが姿勢を保つためにはたらく反射を姿勢反射と言います。そんな姿勢反射に障害が生じると、自動反射が妨げられ、まっすぐ立つことが難しくなったり、頻繁に転倒したり、歩けなくなったりする可能性があるのです。
姿勢反射障害の原因には、からだの動きに障害が出るパーキンソン病などが考えられます。
私たちのからだを守る「反射」
頭で考えるより先に、さっと手が出たり、脚を引っ込めたり。そんな反射がなぜできるのか、これまで不思議に思ったことはありませんでしたか?
この反射は、私たちのからだを守るための大切な仕組みです。このように「無意識に体を守る」メカニズムについて、ほかにもどんなことがあるのか興味をもって私たちの体を見つめてみてはいかがでしょうか。
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文・構成/HugKum編集部