1月8日は「初薬師」。行事の内容や薬師如来の御利益を紹介

「初薬師」は、薬師如来とのありがたいご縁がいただける日です。薬師如来を本尊とする全国の寺院では、御開帳や特別な法要などが行われ、多くの参拝客でにぎわいます。初薬師とはどのような日なのかを、詳しく解説します。
<上画像:奈良の薬師寺・金堂>

初薬師の概要や特徴

日本では1年を通してさまざまな行事が行われています。初薬師(はつやくし)は、仏教でいうところの「縁日」であり、薬師如来(やくしにょらい)と深い関わりがあります。いつもより御利益が多く得られるありがたい1日のため、ぜひ寺院に足を運んでみましょう。初薬師の概要と特徴を解説します。

新年で最初の薬師如来の縁日

初薬師とは、新年で最初の薬師如来の縁日です。

縁日というと、多くの出店が並ぶお祭りのような雰囲気を思い浮かべる人も多いでしょう。本来、縁日は神仏と深く縁を結ぶ日であり、「有縁(うえん)の日」や「結縁(けちえん)の日」と呼ばれています。

薬師如来や、不動明王・毘沙門天など、神仏ごとに縁日が割り当てられており、その日に特定の神仏をお参りすると、格別の御利益が得られるといわれています。薬師如来の縁日は毎月8日と12日で、初薬師は1月8日です。

東京都文京区本郷にも「本郷薬師」のお堂がある

初薬師が行われる場所

初薬師は、薬師如来を本尊とする寺院で行われるのが一般的です。「本尊(ほんぞん)」とは、寺院の本堂に安置される最も重要な仏で、信仰の対象となるものです。

日本全国には薬師如来を本尊とする寺院が数多く存在しますが、奈良県の「薬師寺(やくしじ)」や愛知県の「鳳来寺(ほうらいじ)」、神奈川県の「宝城坊(ほうじょうぼう)」などが有名でしょう。

特に仏教文化が花開いた奈良や京都の寺院では、初薬師が盛大に行われます。初薬師ならではの法要やイベントもあり、新年早々多くの人が訪れます。

初薬師でやること

初薬師では、旧年の無事を感謝するとともに、1年の無病息災・身体健全・家内安全などを祈願しましょう。本尊の御開帳や特別祈祷を行う寺院もあり、通常の縁日よりも多くの人でにぎわいます。

例えば奈良県の薬師寺では、600巻の大般若波羅蜜多経(だいはんにゃはらみたきょう)を、複数の僧侶が転読する「薬師縁日・大般若転読法要」が厳粛に執り行われます。寺院によっては、お粥やぜんざいを振る舞うところもあるようです。

薬師如来とはどのような存在?

薬師如来は、「お薬師さま」の愛称で親しまれています。神仏にはそれぞれ異なる役目がありますが、人々にとって薬師如来はどのような存在なのでしょうか?

 

史跡慧日寺跡の薬師如来坐像(福島県耶麻郡磐梯町)Photo by Sugikats, Wikimedia Commons

仏教界の医師

薬師如来は、東方浄瑠璃浄土と呼ばれる世界の教主です。正式名称は「薬師瑠璃光如来 (やくしるりこうにょらい)」ですが、病気を平癒して身心の健康を守ってくれることから、「医王如来(いおうにょらい)」や「医王善逝(いおうぜんぜい・いおうぜんせい)」とも呼ばれています。

死後の極楽浄土を約束してくれる阿弥陀如来(あみだにょらい)と対照的に、生きている間の願い「現世利益」を聞き入れてくれるのが特徴で、古くから病や困難に苦しむ人々の信仰の対象とされてきました。

薬師如来は菩薩として修行している間に十二の大願を発し、「自分が悟りを得たときは、人々の病気を治して衣食住を満たす」という誓いを立てたといわれています。

左手の薬壺(やっこ)が特徴

薬師如来は、左手に薬の入ったつぼ「薬壺(やっこ)」を乗せ、右手に「施無畏印(せむいいん)」を結んでいるのが一般的です。印とは、仏の悟りの内容や功徳などを示す手指の形で、施無畏印は、人々の煩悩や恐れを取り除くことを示します。

薬師如来だけが単体で安置されるケースはまれで、日光菩薩(にっこうぼさつ)・月光菩薩(げっこうぼさつ)・十二神将(じゅうにしんしょう)で構成されるのが通常です。

脇侍(きょうじ・わきじ)となる日光菩薩(左脇)と月光菩薩(右脇)は、鏡のように対称的に造形されることが多いでしょう。十二神将とは、薬師如来の世界と信仰する人々を護衛する武装した大将を指します。

薬師寺旧金堂の薬師三尊像[小川晴暘による撮影] 薬師如来を中尊とし、向かって左は月光菩薩、右は日光菩薩 Wikimedia Commons(PD)

如来と菩薩の違い

神仏の中で如来と混同されやすいのが「菩薩(ぼさつ)」です。如来や菩薩を固有名詞のように捉えている人も多いようですが、仏の世界における階級を示します。

●如来:仏界の最高位で、一説では「悟りを開いたもの」という意味がある
●菩薩:如来になる修行をしている身で、一説では「悟りを求めるもの」という意味がある。

如来には薬師如来のほかに、釈迦如来(しゃかにょらい)・大日如来(だいにちにょらい)・阿弥陀如来などがあります。

初薬師と俳句の関係とは?

初薬師をネットで検索すると、「俳句」というキーワードが出てくる場合があります。初薬師と俳句には、どのような関係があるのでしょうか?

初薬師は新年の季語として使用される

俳句の世界において、初薬師は新年の「季語」として使用されます。季語とは、特定の季節(春・夏・秋・冬・新年)を表す言葉で、季題(きだい)とも呼ばれます。

約束事にとらわれない自由律俳句もありますが、一般的な俳句では、5・7・5の17音の中に季語を一つ入れなければなりません。「鰯雲(いわしぐも)」や「五月雨(さみだれ)」といった自然や気候に関するものだけでなく、年中行事や風習なども季語として認められています。

年中行事や風習に関する新年の季語としては、初薬師のほかに以下のようなものがあります。

●産土神参(うぶすなまいり)
●初観音(はつかんのん)
●五日戎(いつかえびす)

1月8日は初薬師で1年の無病息災を祈ろう

初薬師とは、新年最初の薬師如来の縁日です。薬師如来は、現世利益を聞き入れるとともに、人々を病気の苦しみから救ってくれる存在といわれています。縁日では格別の御利益が得られるといわれていますが、新年の最初の縁日はさらに特別です。

御開帳や特別祈祷、初薬師の法要などを行う寺院も多く、薬師如来の存在をより身近に感じられるでしょう。1月8日は家族で初薬師に赴き、1年の無病息災や身体健全を祈願してはいかがでしょうか。

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構成・文/HugKum編集部

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