「男の子なのにおままごとが好き」、「女の子なのにお兄ちゃんと戦いごっこばかりしている…」など、小さいときには子供のちょっとした行動が心配になることも。そもそも、男の子らしい、女の子らしいって、何なのでしょうか?長らく乳児保育の現場に関わる井桁容子先生に伺いました。
男の子・女の子らしさよりも、その子の個性を大切にしよう
大人の思う「男の子らしさ・女の子らしさ」には、たとえば「男の子は青、女の子はピンクが好き」「男の子は元気、女の子はおとなしい」などがあります。たしかに子供の好みや行動には、性別によってある程度の違いが見られます。でも、こうした傾向は、成長とともに自然に現れ、育っていくもの。「女の子だから女らしく」などと、大人が学ばせることではありません。
子供の選択をできる限り尊重して
お花が大好きな男の子もいれば、おままごとより外遊びが好きな女の子もいます。子供の好みや興味の対象は、人それぞれです。何を選ぶかは、「その子らしさ」の現れです。身近な大人が注目するべきなのは、いわゆる「男の子らしさ・女の子らしさ」のイメージに合うかどうかではなく、子供が何を好み、何をしたがるのか、ということです。 可能な限り、子供には「好きなものを選ばせる」機会を与えましょう。大人の側に悪気はなくても、「男の子だから青がいいよね」などと決めつけるのは避けたいもの。子供の好みと一致していれば問題はありませんが、「本当はピンクが好き」という子にとっては、自分を否定されたように感じられるからです。
子供が「好き」を見つけたら、寄り添ってあげる
「自分が好きなものは“ダメ”なんだ」と思うことが続くと、思いを表現するのをためらうようになってしまいます。 大切なのは、「これが好き」「これをしたい」という子供の思いを尊重すること。自分の感じたことを自由に表現し、それを受け止めてもらう経験は、自己肯定感(自分は大切にされる価値のある人間だ、という思い)を高めることにつながります。こうした経験の積み重ねによって、子供は自分に対する自信や他人への信頼を深め、周りの人とお互いのよさを生かしながらかかわっていけるようになるのです。
「男の子のくせに」など、性別でくくらない
大人が注意しなければならないのは、「男の子(女の子)のくせに」という感覚。ベースにあるのは、「男の子(女の子)はこうあるべき」という固定観念です。こうした気持ちは、親として立派に子供を育ててあげたいという責任感からくるのかもしれません。でも、子供と親は別の人間です。「理想的な息子(娘)であってほしい」という親の思いを押し付けることは、子供本来のよさを否定し、消してしまいかねません。 子供の好みや行動に違和感を覚えるときは、少し視点をかえてみましょう。
「男の子のくせにすぐ泣いてしまう」「女の子のくせに言葉づかいが乱暴だ」ではなく、「なぜ泣いたのだろう」「なぜあんな言い方をしたのだろう」と、理由に注目してみてください。涙もろいのは、やさしさの現れかもしれません。乱暴な言葉づかいは、大好きなお兄さんのマネをしたのかもしれません。「なぜ?」を考えていくと、子供の思いや、「その子らしさ」が見えてくるはずです。これからの社会で重視されるのは、性差ではなく、それぞれの能力や個性です。いわゆる「男らしさ・女らしさ」にしばられるのではなく、「その子らしさ」を育てることを大切にしましょう。
教えてくれたのは
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
イラスト/小泉直子 出典/めばえ