【藤原道長の意外すぎるエピソード】「摂関政治」の代表格なのに、自分は関白にならなかったのはなぜ?

藤原道長といえば、平安時代の貴族でもっとも権力を有した人物として、日本史の教科書に必ず登場する人物。その彼が実は一度も「関白」にはなっていないことをご存じですか?

誤解の多い藤原道長。その知られざる戦略

藤原道長といえば「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の かけたることも なしと思へば」の歌で知られ、藤原一族による「摂関政治(朝廷において摂政や関白が強い権力を握った政治形態)」の頂点に君臨した貴族として知られています。また、彼が残した『御堂関白記』という日記の題名からも「関白」として名を馳せた人物と思われがちです。

ところが実際の道長は一度も「関白」に就任したことはなく、「摂政」もわずか一年ほどで辞任しているのです。そこで、ここでクイズです。

道長が一度も「関白」に就任しなかった史実について、正しい記述は以下のどれでしょうか。

①「関白」に近い役割と「関白」にできない仕事ができる役割を兼務して、「関白」よりもいろいろなことができる身だった。

②  周囲の妨害に遭って「関白」になれなかったため、その恨みから子孫が関白職を独占できるよう根回しに一生を費やした。

③「関白」という役職名ができたのは道長の没後で、それまでは違う役職名だった。

*  *  *

それでは正解を探っていきましょう。以下は『小学館版 学習まんが人物館  藤原道長』から。

道長の姉であり一条天皇の母・詮子が、一条天皇に、弟・道長の関白昇進を願い出る場面です。

*太政官…律令制で、すべての役所を統括する中央の最高機関
*身の丈に合う…身分や能力、立場などにふさわしいこと

ここでわかるのは、このとき道長が就いたのが「内覧」という地位だったこと。このとき道長はまだ大納言の下の権大納言という立場だったため「関白」にはなれませんでした。

けれどもこの「内覧」は、天皇と太政官との間を行き来する文書に目を通し、天皇にアドバイスする仕事でした。「関白」はすべての公文書を見る権限がありましたが、公文書のほとんどは太政官から上がってきます。そのため実際の仕事は「関白」とほぼ同じでした。

「内覧」のままのほうがおいしい?

やがて右大臣に任じられて、太政官の首班である「一上(いちのかみ)」という仕事を兼務することになります。「内覧」と「一上」を兼務すると、文書を読んで天皇にアドバイスする仕事と、公卿の会議をリードする仕事の両方が可能となります。

翌年は左大臣に任じられますが、道長はやはり「関白」にはならず、「内覧」のままでいつづけました。

晩年ようやく短期間の「摂政」に

一度も「関白」にならなかった道長ですが、晩年にほんの一年ほど「摂政」の座につきます。

道長の長女・彰子が産んだ親王が後一条天皇として即位した際に、幼い天皇にかわって政務を行う「摂政」になったのです。成人した天皇の補佐である「関白」よりはるかに権限が強い立場です。それでも道長はこの「摂政」をわずか一年で辞め、嫡男の頼通にその座を譲りました。

自身の肩書きよりも、「摂関家」として摂政・関白を輩出しつづける藤原一族の繁栄を優先したかったのかもしれません。

*貫禄…身にそなわっている威厳や風格、重みのこと
*摂政…幼い天皇にかわって政治を行う役職

まんが/田中顕 シナリオ/大野智史 監修/倉本一宏
『小学館版  学習まんが人物館  藤原道長』より

問題の答え:正解は①
「関白」に近い役割と「関白」にできない仕事ができる役割を兼務して、「関白」よりもいろいろなことができる身だった。

藤原道長をもっと知りたい人のために

『小学館版 学習まんが人物館 藤原道長』

伝記まんがの決定版「学習まんが人物館」では、藤原道長とその時代のドラマを追うことができます。

藤原一族の繁栄の頂点に君臨し、後にも先にもないような栄華を極めた人物というイメージがある道長ですが、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。五男の末っ子で、嫡男でなかった生い立ちから運と才覚とでのぼりつめ、時代の文化のパトロンになるまでの人生には、多くの波乱と苦悩がありました。

そんな道長の人生を通して、1000年前の貴族たちが活躍する時代の空気を読み取ってみませんか。大河ドラマ『光る君へ』の時代考証を担当した倉本一宏先生監修の歴史まんがは、ドラマの世界をより楽しむうえでもおすすめです。

小学館版 学習まんが人物館  藤原道長

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構成・文/HugKum編集部

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