年々深刻になる温暖化により、日本でも雪が少なくなっている
この冬も、毎日のように「冬にしては気温が高い」「スキー場に雪がなく、経営できない」といったニュースを目にしました。地球温暖化は私たち、子どもをもつ親にも深刻な問題として迫ってきています。
気温の上昇の影響は冬の雪不足だけでなく、夏にはゲリラ豪雨や台風などの気候変動も引き起こしています。
- 元アルペンスキー日本代表の皆川賢太郎さんが代表理事を務める一般財団法人冬季産業再生機構は『SAVE THE SNOW PROJECTS』として、そんな地球温暖化に待ったをかけ、雪資源を未来に残すための活動を行っています。
『SAVE THE SNOW』の思いを込め、コンサートに
去る2024年2月28日、29日に東京都の山野ホールで行われたSAVE THE SNOWコンサートは、そんな皆川さんと、妻である上村愛子さんの思いが込められたもの。上村さんが手がけた絵本『ゆきゆきだいすき』の主人公である「あいこちゃん」のオリジナルアニメーションに、松任谷由実さんと平原綾香さんが朗読を付けたものが上映され、アニメーションと交互に、おふたりが心を込めて歌唱します。
鳥肌が立つような素晴らしい歌声と、絵本にオリジナル展開を加えたストーリーに観客は魅了され、深い世界へと入っていきます。
アンコールでは松任谷さん、平原さんおふたりで「卒業写真」「春よ、来い」といった名曲を歌唱。雪をテーマにしたフリートークではほっこり笑顔になり、雪がある風景を守ることの大切さを改めて感じるひとときになりました。
皆川賢太郎さんに聞いた、「雪を守る」活動への思い
HugKumでは今回のコンサートに際し、一般財団法人冬季産業再生機構の代表である皆川賢太郎さんにこの活動への思いを伺いました。
なぜ、「SAVE THE SNOW」の活動をされようと思ったのですか？
皆川：僕自身も幼少期からスキーに親しんできて、選手時代は試合で世界中を回りました。世界に出てみて初めて、日本の四季の美しさが独特で、誇れるものだということが分かったんです。地球温暖化により、既に雪が少なくなっている地域もあります。日本も四季の感覚が薄くなり、夏の猛暑がひどく、冬は雪が少なくなってきていますよね。
自分の世代の役割は、この四季の美しさ、雪の美しさを次世代の子どもたちに残すことだと思っています。この財団も、多くの選手の協力を得ながら活動を行っています。
具体的にはどのようなことを行われていますか？
1980年代～90年代前半にスキーブームが起こり、ピーク時は700箇所以上に膨らんだスキー場も、現在は半数が稼働していないといわれます。スキー場のために森林が伐採されたとしても、その後手つかずのままになっている場合も多いのです。そういった環境保全の活動を行っています。
自分の選手時代もそうでしたが、スキーは靴や板など、道具をたくさん使うスポーツなんですよ。そして、それらの道具が毎年、大量廃棄されているという実態もあります。それを食い止めるため、スキー靴のリサイクルを行ったり、リサイクル素材でオリジナルのウェアをつくり、雪山廃材リサイクル&アップサイクル事業に貢献できるような仕組みを作っています。
『ゆきゆきだいすき』の絵本を製作したのも、活動の一環ですね。知ってもらうことも大事ですから、今回のコンサートにご参加いただいたお客様にも、絵本をお持ち帰りいただくことにしています。
僕は苗場スキー場で育ち、ずっとユーミンの曲に親しんできました。それが縁で今回のコンサートにも松任谷由実さんにご出演いただいたのですが、大好きなウィンタースポーツや大好きなスキー場という場所を守るためにもさまざまな活動を続けていきたいですね。
上村愛子さんの絵本執筆の際のインタビューはこちら
素晴らしい雪のある風景をいつまでも残していきたい。みんなに伝えたい想いからこの絵本がうまれました。自然を守るために、雪を守るために、大人と一緒に考えられるページも満載。｢ＳＤＧｓ｣を理解する第一歩として最適な一冊です。
取材・文／HugKum編集部 撮影／五十嵐美弥(皆川さん分)
