「名古屋城」はどんな城? 金鯱、清正石などの見どころと、特徴・歴史をチェックしよう【親子で歴史を学ぶ】

名古屋城は江戸時代に入ってから築かれた、尾張徳川家の居城です。存在は知っていても、どのような経緯で築かれ、現在に至るのかを詳しく知らない人もいるでしょう。名古屋城の特徴を、歴史や見どころなどとあわせて解説します。

名古屋城は名古屋市のシンボル

名古屋城は、名古屋市中心部の中区にあります。名古屋を代表する観光スポットの一つでもあり、国内外から多くの人々が訪れます。どのような城なのか、詳しく見ていきましょう。

尾張徳川家の居城として知られる

1600(慶長5)年の「関ヶ原の戦い」で勝利した徳川家康は、1603(慶長8)年に江戸幕府を開きます。ただ、大阪では依然として豊臣家の勢力が強く、油断できない状況でした。大阪方面に睨みをきかせるため、家康は名古屋城を造り、自身の9男で初代尾張藩主の義直に与えます。

徳川家の支配力を高めるために作られた、水戸(茨城県)・紀州(和歌山・三重)・尾張(愛知)の三つの分家を御三家と呼びます。尾張徳川家は、御三家の中でも代表的な存在でした。

名古屋城は尾張徳川家の居城として、栄華を極めます。戦災などで一部焼失した部分もありますが、近代城郭の中でも歴史的な価値が高く、国の特別史跡にも指定されています。

名古屋城 天守閣

当時の最新技術によって建設

安土桃山時代から培われ完成された築城技術によって生み出された名古屋城は、近代城郭の傑作の一つといわれています。

五層五階の天守閣は、当時としては新しい形式だった層塔型が採用されています。本丸御殿は贅を凝らした造りで、武家風書院造の代表的な建築です。

内装には優れた絵師集団・狩野派によって描かれた障壁画や飾りなどが、ふんだんに使われていました。区画の配置にもこだわり、直線的でシンプルな設計でありながら、敵の侵入をはばむという城本来の工夫もなされています。

名古屋城の歴史

名古屋城の模型 Wikimedia Commons(PD)

名古屋城は尾張地方の政治や経済の中心として栄えました。前身となる那古野城の時代から、現代までの歴史を見ていきましょう。

室町時代に那古野城が築かれる

現在名古屋城が建っている地の付近には、室町時代から、「那古野城」と呼ばれる城がありました。駿河国(現在の静岡県中部)の守護・今川氏親が築いた城で、その後今川家を退けた織田信長の父・信秀が居住しています。

那古野城は後に信秀の息子の信長へ譲られましたが、信長が清州城(現在の愛知県清須市)へ移り住んだ後は、信長の叔父の信光が城主となります。

信光の没後は、織田家重臣・林秀貞(はやしひでさだ)の居城となりました。若き信長が暮らした那古野城は、本能寺の変が起こった1582年(天正10)頃に廃城となったとされています。

1609年に徳川家康の命令で築城

1609(慶長14)年、徳川家康の命令で名古屋城の築城が開始されます。当時、家康は各地で公儀普請(天下普請)による築城を進めており、名古屋城もその一つです。

普請とは土木工事を指し、公儀普請は現代の公共事業のようなものと考えてよいでしょう。家康は諸大名の総力を結集する形で、土木工事や建設工事を進めます。

工事にかかる費用や労働力の負担は非常に大きく、公儀普請には諸大名の経済力を弱めながら徳川家の権威を高める目的があったとも考えられています。

名古屋城の築城を命じられたのは、加藤清正や福島正則などの西国や北国の諸大名たちです。さまざまな地域から20もの大名家が動員され、石材や人員の調達を行いました。

西南隅櫓 本丸 Photo by Bariston , CC 表示-継承 4.0, Wikimedia Commons

1959年に戦災で失われた天守閣が再建

明治時代に入ると、名古屋城は陸軍の所管となります。その後は宮内省に移管されて「名古屋離宮」と呼ばれ、皇族が宿泊などで利用しました。

名古屋城が一般公開されるようになったのは、1931(昭和6)年のことです。しかし1945年5月の空襲で、天守閣や本丸などが被害を受けてしまいます。

しばらくの間、焼けた石垣だけが放置された状態になっていましたが、1957年から天守閣再建工事が開始され、1959年に完成します。ただし天守閣は、老朽化により現在は閉館中です。

2009年からは本丸御殿の再建が開始され、2018年に復元されました。戦前に撮影された写真や実測図などをもとに、当時の様子が忠実に再現されています。

名古屋城の見どころ

御三家の代表格である尾張徳川家の居城にふさわしく、名古屋城には多くの見どころがあります。名古屋城を知る上で欠かせない、金鯱・本丸御殿・石垣などの見どころをチェックしましょう。

尾張徳川家を象徴する「金鯱」

天守閣の屋根にある金鯱(きんしゃち)は、名古屋城のシンボルです。日本の城にはよく鯱の飾りが使われていますが、金色をしたものは貴重です。徳川家の権威を世間に知らしめるため、派手で目立つ金色の鯱が採用されました。

名古屋城の金鯱(雄)

鯱はイルカの仲間のシャチとは別物で、獣のような頭に魚の体を持つ想像上の生物です。古代インドの怪物「マカラ」をルーツとする説があります。

オスとメスの対になっていて、北側にあるのがオス、南側にあるのがメスです。オスの方が大きく作られていますが、メスには金の鱗が多く使われており、よりきらびやかに見えます。

絢爛豪華な「本丸御殿」

名古屋城の本丸御殿は、藩主の住居兼政務を扱う場所であり、江戸時代の武家文化の粋を凝らした作りとなっています。玄関には威圧的なトラやヒョウなどの絵が描かれていますが、対面所には落ち着きを感じさせる山水花鳥図が描かれています。

名古屋城の本丸御殿

部屋によって障壁画・欄間・天井などのデザインが異なるのは、格式や目的が異なるためです。空襲による焼失後に再建され、現代の職人の手で当時の豪華な内装が再現されています。

ただし天井やふすまなどに描かれた一部の作品は、取り外して保管されていたので焼失を免れました。難を逃れた文化財の多くが「西の丸御蔵城宝館」に保管されています。

記号に注目「石垣と清正石」

名古屋城の築城の際、公儀普請により20もの大名が石垣の工事を担当しています。このため現場では「丁場割り」により持ち場を決め、円滑に作業が進むようにしていました。

名古屋城の石垣の石には、どこの家が運んだものかを区別する記号が、直接刻まれています。記号を実際に見て、ここはこの大名が担当した場所なのだと確認するのも楽しいでしょう。

名古屋城石垣の清正石

また本丸東二之門を入った正面には、清正石と呼ばれる巨石があります。清正石は名古屋城の石垣の中でも最も大きく、表面の実面積は約8畳です。

清正とは築城の名手として名高い大名・加藤清正のことですが、この場所を担当したのは、黒田長政という大名です。石があまりにも大きく、作業が難航したため、築城の名手といわれていた加藤清正が積み上げ、清正石と呼ばれるようになったのではないかといわれています。

清正公石曳きの像

親子で行きたい名古屋城のイベント

名古屋城では、親子で参加できる多彩なイベントが開催されています。四季折々のお祭りや、貴重な美術品の展示イベントなどをチェックしましょう。

8月のメインイベント「名古屋城夏まつり」

例年8月上旬から中旬にかけて、名古屋城夏まつりが開催されます。盆踊り大会やステージイベント、火縄銃実演、伝統芸能などが見どころです。

かき氷やビールなど、夏に食べたい屋台グルメや特産品なども味わえます。名古屋城オリジナルの「シャチ釣り」や金魚すくいなどの遊びのコーナーも充実しており、家族みんなで楽しめるでしょう。

名古屋城では春・夏・秋・冬と季節ごとにお祭りが開催されており、桜が見ごろの時期には桜まつりも開催されます。

名古屋城天守の遠景 Photo by Oka21000, CC 表示-継承 4.0, Wikimedia Commons

貴重な品を展示「西の丸御蔵城宝館企画展」

西の丸御蔵城宝館では、期間ごとにテーマを設けて、美術品や文化財などの企画展を行っています。時期によって異なる展示を行っているので、訪れるたびに違った楽しみ方ができるでしょう。

2024年7月20日〜9月9日の期間に行われていたのは、名古屋城振興協会によって収集された武具や甲冑、刀剣、武将たちの肖像、合戦図などの展示でした。

2024年10月19日 ~ 12月15日に行われるのは、名古屋城下で江戸時代から続く祭礼の様子を、名古屋東照宮の御神宝をはじめ、当時の祭の賑わいを描く絵巻などとともに展示する企画展です。

出典:西の丸御蔵城宝館企画展 | 催し | 名古屋城公式ウェブサイト

名古屋城の歴史を知り観光を楽しもう

名古屋城は家康の命令で築城され、尾張徳川家の居城として約260年もの間栄えました。多くの大名が関わる公儀普請で築城されたことでも有名です。近代城郭の傑作ともいわれ、絢爛豪華な本丸御殿や天守閣の屋根を飾る金鯱など、多くの見どころがあります。

季節ごとに行われるお祭りや貴重な美術品が展示される企画展など、訪れるたびに違った楽しみ方があるところも魅力です。連休や冬休みなどを利用して、親子で訪れてみてもよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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